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スポーツと飲酒・喫煙

 筆者自身も「慢性酔っぱらい症候群」なので,偉そうに言える立場ではないけれども,ちょっと気になったので.

■ NG行為なのか

 オリンピックの日本代表だった選手が,当時20歳未満であり,かつ選手団の規定に反して喫煙していた(その後,飲酒についても発覚)したことによって,開幕直前にも関わらず出場を辞退するという事案がニュースになった.
 この事案そのものについて,筆者は特にコメントする立場にはないし,詳細については報道などを参照されたい.

 ここで「何が(出場辞退につながるような)NG行為だったのか」という点で,色々なことが考えられる.
 「現場」とされるのが日本国内だったらしいので,国内法に基づいて考えるが,まず満20歳に達していない(年齢満20年に達する誕生日の前々日以前だった)のに飲酒や喫煙をした行為.なお,法律的には「誕生日の前日」に年齢が加算されるので,20歳の誕生日の前日から「解禁」される.
 ただし,法律(二十歳未満ノ者ノ喫煙ノ禁止ニ関スル法律[明治33年法律第33号]・二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律[大正11年法律第20号])では「禁止」されているが,「罰則」が定められているのは「20歳未満の者に煙草や酒類を提供した者」や「未成年者である場合の親権者」などであって,当人については,その煙草や酒類及び器具の「没収」くらいだ.

 次に,代表選手団の規定で,該当期間内の禁煙が定められていたにもかかわらず喫煙した行為.
 これは,その団体の決めることなので,是非については当事者の問題だろうが,趣旨とすれば「喫煙によって身体に生じる悪影響を防止し,健康体で競技すること」を目的としているのだろう.
 個人的にも,煙草には有害物質が多々含まれているから,特にスポーツ選手のように「身体が資本」の人々にとっては,この規定が受け入れられないならば競技を諦めたほうがいいのではないか,とすら思っている.

 そして飲酒についても,年齢的に触法行為となることは勿論だが,それよりもその現場が,選手強化のための施設に設置された宿泊室の中だった,ということが問題とされたように受け止めた.
 これの是非については,色々な見方があるだろう.
 そう言えば少し前に,部活動の大会で遠征していた顧問の教員が,宿泊先で(勿論直接の指導などではない夜間などの時間帯に)飲酒していたため,急病になった生徒を自動車で医療機関に連れて行くことができなかった,という事案が報じられた.
 個人的には,いずれも「望ましい行為」ではないことだとは思うものの,「言語道断,問答無用でけしからん」とまで言っていいかどうか,は疑問がある.
 酒類については煙草ほどではないにしろ,過剰摂取となれば身体に与える影響も看過できない.また,以前は「適量の飲酒はむしろプラス」と捉えられていたこともあったが,現在は「飲まないで済むならそれに越したことはない」とされつつある.

■ 問題なのは

 今回のオリンピック代表に関しては,競技団体が本人を日本に呼び戻し,事情を聴いたうえで出場辞退に至った.
 この判断や対処自体は,本人や競技団体などの当事者の問題なので,我々がとやかく言うことではないと思っている.だが勿論,これについてどう思うか,どう感じるか,は色々な意見があって然るべきだろう.

 そこまでしなくても「厳重注意」で良かったのでは,という意見も散見される.それも否定できない.
 ただし,飲酒や喫煙の状況が本人の申告通りかどうかは定かでなく,所謂「薬物検査」などで面倒なことに繋がっても困るから,そのあたりはきちんと「対処」されるべきではあるだろう.
 でも,そうしたらそうしたで「けしからん」と言う人々も一定数いることは間違いないので,辞退するという判断も「最大公約数」的に致し方なかったのではないか,とも思う(※個人の感想です).

 ただ,開幕直前というタイミングだったことから,時間的猶予もなかったことはわかるのだが,果たしてどのくらい,色々な可能性を考えて対処策を選んだのか,という点では少し心配が残る.
 「後々更に問題が大きくなっては困るから」と,簡単に聴取した結果だけで安直に判断して「幕引き」をしようとしているのだとしたら,それは違うのではないか,と思うだろう.そして,もしそうだとすれば,本人にとっては「悔い」しか残らないのではないか.もう少し何とかならなかったのか,と言う人々は,そう考えている部分もあるのだろうと思う.

■ 改めて

 さて,酒は飲むけど煙草は吸わない(というか嫌い)な筆者にとっては,特に「飲酒」の部分で色々と考えさせられることも多い.
 勿論,法的に飲酒が認められている年齢(しかも余裕でダブルスコア以上)であるので,そこは問題がないことは前提であるが.誰ですか?「あの業界では『永遠の24歳』じゃなかったっけ?」とか言うのは.

 酒にしても煙草にしても,身体に及ぼす影響は「その場で表れる変化」と「内臓や血管に蓄積される変化」の両方があるだろう.
 スポーツに関してみれば,前者は「その時の成績」に影響し,後者は「選手生命」に関わってくる,とも言える.
 あくまでも個人の感じるところであることではあるが,前者の影響は「酒」が,後者については「煙草」が大きいのではないか,と思う.

 筆者が現在,習慣的にかつ一定以上のレベルで実践しているスポーツとしては「ボウリング」くらいしかないのだが,意外に喫煙者が多いと感じている.
 昭和な人間ではあるが,比較的「後期」なので,「スポーツと喫煙」は,お互いが相容れないものだと感じている.最近まで,ボウラーズベンチで喫煙できるセンターがちらほらあったことが,ボウリングがスポーツとして認知されにくい一因だったのではないか,とさえ思っている.
 高齢になっても続けられる「生涯スポーツ」の代表格だと思うのだが,喫煙によって内臓や血管にダメージを蓄積してしまっては,続けることもできなくくなる.
 80代になっても続けている人も多く知っているが,一方でそれ以前に「最近見かけなくなったな」と思った人が,脳卒中で倒れて麻痺が残った,とか,もう続けられないからロッカーのボールを片付けに来た……などというような寂しい話を時々耳にする.喫煙が特に血管に与える影響は,看過できないものがあると思う.
 それでも,ボウリング場の「喫煙室」は結構賑わっている.
 だが,本当に上手いと思う人には,喫煙者がほとんどいないのも確かだ.

 筆者は「ほろ酔い」でボウリングをすることはあっても,流石に泥酔状態ではやらないし,恐らく無理だと思う.
 少なくとも,15Lbsのボールを投げることはできないのではないだろうか.

 そして,ここは絶対に外せないところだが,マイボウラーである以上,どうしてもボールを運ぶ必要が生じるし,その際に自分で自動車を運転することも少なくない.
 その場合には,当然だが飲酒する訳にはいかない.
 この「運転するから」は,飲まずにいるためのキーワードだろう.

 いずれにせよ,喫煙も飲酒も,身体にいいことではないことは確かだろう.
 そうは言っても,習慣化してしまった人にとっては,それが一つのルーチンになっている訳で,このリズムが崩れることが別のストレスに繋がり,そのストレスが身体に対して別の影響を与えることもあるかも知れない.

 最初に挙げた事案にしても,一定年齢に達するまでの人に飲酒や喫煙をさせないようにしているのは,その身体が一定の成長を終えるまでの間に与える影響を考慮して,のことだろう.

 神奈川県警察のウェブサイトにあった記載を引用する.
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【20歳未満の方へ】

喫煙は、成長期における身体に悪影響を与えます。

「かっこいいから」や「仲間も吸っているから」などの安易な気持ちからたばこを吸っていると、非行グループに引き込まれたり、因縁をつけられ恐喝や暴行などの被害を受けたりすることもあります。

また、成長期における飲酒も身体に悪影響を及ぼすだけでなく、短期間でアルコール依存症になったり、急性アルコール中毒から『死』に至ることもあります。

成長期における喫煙や飲酒は依存性が非常に高く、さらには薬物等への抵抗感や罪悪感が低下し、薬物乱用や他の非行へ踏み込んでしまう危険性が高まります。
神奈川県警察本部 ウェブサイトから)
https://www.police.pref.kanagawa.jp/kurashi/hikoboshi/mesd1024.html

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 勿論,オッサンになったから,思う存分吸っていい,飲んでいい,といいことではないのは,述べたとおりである.

 しかし,喫煙が与えるイメージは,ここ暫くで大きく変わった.
 でも,昔からいいイメージではなかったのも確かだ.

 筆者が,中高生の頃には,ボウリング場やゲームセンターのイメージは悪かった(喫茶店とかも).
 あまり子供や子連れが行くような場所ではなかった気がする.
 その意味では,現在のボウリング場を見ていると,随分変わったな,と思う.
 一番大きいのは,ボウラーズベンチを含め,フロア全体が「禁煙」になったことではないか,と思っている.
 これは,喫煙が与えるイメージが悪いことを如実に表してはいないか.

 尤も,現在でもアルコール飲料を販売・提供するボウリング場も少なくないのだが……(汗).

■ まとめ

 本事案について,繰り返しになるが,筆者としては「オリンピック出場辞退」という点に関しては「当事者の問題」として受け止めている.
 しかし「他にやり方がなかったか」は,もう少し時間を掛けても良かった気はする.とは言え,開幕直前というタイミングでの発覚(そういう計算の元の「タレコミ」だったら後味が悪いが)だったことから,やむを得ない緊急措置だったのかも知れない.

 飲酒や喫煙については,当人が20歳になる直前だったということもあるし,筆者のような「昭和な人間」からすれば「些細なこと」という気がするのも事実だ.
 そして,法律によって20歳未満の飲酒・喫煙が禁じられている背景は,あくまでも「本人の身体的成長への影響」を考慮していると思われることもあり,これに関しては「自己責任」であって,所謂「社会的制裁」のようなものには馴染まないとも思う.

 しかし,筆者としては本事案について,どうしても違和感が残る.

 それは,筆者など足元にも及ばないような,第一線で活躍する若いアスリートが喫煙していたことへの違和感だ.
 昭和な人間,かつ「慢性酔っぱらい症候群」としても,少々の酒はともかく,煙草とスポーツというものが相容れないと思うからだ.
 それも,あくまでも自己責任だ,という見方もあるだろう.
 しかし,あることに対して「人並みならぬ結果」を追求する時には,諦めなければならないこと,自制しなければならないことがあることも常だと思う.
 スポーツにとっての喫煙は,まさにそれに当たると思い,本稿を記した.

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