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所謂「牽制」について

■ ルールと暗黙のマナー

 一般の客がどこまで読んでいるのかはわからないが,よくセンター内に掲示されている「注意事項」として,次のようなものがある.

・ ファールラインを越えない
・ 同時投球の禁止(右側優先)
・ ロフトボール禁止
・ ボウリングシューズでトイレ・外出禁止
・ アプローチ上の飲食禁止
・ ボールは一人1個

 などなど…….

 このうち「ファールライン」については,ルール上にも明記されている.
 また,この「ファールライン」に関しては,既に別記事でも触れた.

 それ以外については,ルール上に明確に禁止規定はないが,スポーツである以上「安全」を確保する観点からは遵守すべきものと考えられ,一般的には「マナー」とされる.

 個人的には「ロフトボール」には,「程度の問題」もあると思っており,手前のオイルが枯れていたり,(筆者などのようにスペアボールを持たないなどのために)リアクティブウレタンで10番(左投げなら7番)などを狙う場合などには,ある程度はやむを得ないと考えている.
 尤も,あくまでも「レーン上の狙った地点に正確に接地させられる」コントロールがある場合,という前提であることは言うまでもないし,バウンドするような「ロフトボール」は論外であろう.

 アプローチ上での飲食とか,ボウリングシューズのままでのトイレや外出などについても,ルールとしての「ファールライン」(ピンまでの距離を一定範囲にする)という部分以外にも通じるが,要はアプローチ上を良好かつ安全な状態に保つためである.
 もっと言えば,競技ボウラー的にはボウラーズベンチ内でも飲食を控えるべきであり,水分補給や熱中症予防のために飲料を飲む場合も,ベンチ外に出ることが推奨されるほどだ.

 ボールは一人1個.
 これは誤解されやすい.

 競技ボウラーの「スペアボール」はどうなのよ,と言われたことがある.
 ここで言う「一人1個」は,あくまでも「ラック上に置いていいボール」の個数だと解釈すべきだろう.
 競技会でも,ボックス3~4人打ちならともかく,5人打ち以上になると,ラックがボールで溢れ返ることがある.筆者は「スペアボール使わない派」なので関係ないが,競技会でも「スペアボールなど2個目(以降)は,ボールベースなどでラックやベンチの下に」とアナウンスされることも少なくない.
 筆者もスペアボールこそ使わないが,左投げ用と右投げ用の2個を使うことは日常茶飯事だから,ラックが溢れるような状況であれば,投球していないほうのものはラック下やベンチに移動する.

 とは言え,レジャーボウラーの中には,一人で何個もボールを持って来ては,1投目のボールが帰って来る前(酷い場合はレーキが上がる前)に2投目を別のボールで投げるケースも,まま見受けられる.
 一見「投げ放題」の弊害と考えがちだが,「一定時間内投げ放題制」ならば確かにそうかも知れないものの,多くの「投げ放題」は「待ち時間が発生したら『保障ゲーム数』を超えた中から開始時刻が早い客」を「終了」とする仕組が基本だ.そのため「投げ急ぐとその分早く『保障ゲーム数』に達するので無意味」だと思う.
 更に言えば,このような「ボール借り放題」派の多くが,持ってくるボールの重さ(ポンド数)がバラバラだ.ハウスボールなので,自ずとスパンや穴の大きさもバラバラになりがちである.
 1ポンドの「差」は,例えばマイボールでの14Lbsと15Lbsではそれほど感じないかも知れないが,時々「ハウスボウラー」にもなる筆者でも12・13・14Lbsは「結構違うぞ」と思う.穴のサイズやスパンが,センターごとに「クセ」が違うため,13Lbsと14Lbsのどちらが投げやすいかは,時と場合によるが,両方を同じようには投げられないのが普通である(投げる腕が左右違えばあり得るが).
 ボウリングで最も要求される「再現性」という観点からも感心しない.筆者が「右投げ用」と「左投げ用」をそれぞれ探してくるのとは意味合いが違うのだ.

 そして「同時投球禁止」が,所謂「牽制」に該当する.
 ここで言う「同時投球禁止」は,通常,隣のレーンのことを指すので,所謂「(1)レーン牽制」のことである.

■ 1レーン牽制

 個人的には,1レーン牽制で充分だと思ってはいるが,2レーン先が気にならないかと言われれば,全くということはない,と感じている.
 ただしそれも,微妙にタイミングをずらして助走スタートすれば済む程度の話だ.アプローチに上がるタイミングまで,ボックス牽制をする必要は低いと思う.

 この辺りは,ある意味「阿吽の呼吸」で,1レーン牽制についても同じことが言える.
 顕著な例として,(賛否両論あるのは承知しているが)ラウンドワンの「ムーンライトストライクゲーム」がある.

「ムーンライトストライクゲーム」に挑む長女(高3)@ラウンドワン池袋店


 ボックス牽制派には「とんでもない行為」に映るかも知れないが,1レーン牽制に慣れている競技ボウラーならば,微妙にタイミングをずらすことは難しくなく,実際にRBCレーンでも「ムーンライトストライクゲーム」で投球するマイボウラーは多い.
 ある程度,隣のレーンで投げていれば,相手が「投げさせてから投げる派」なのか「決め打ちで投げる派」なのか見極められる.概ね,アドレスに時間を掛けるタイプが前者,すぐに助走できるタイプが後者であることが多い.
 お互い,そのあたりを見て「阿吽の呼吸」で上手くタイミングをずらしているのだ.

 これができなければ,PVなどでたまに見る「次々と投球するシーン」の撮影に参加などできない.
 あれ,例えば右投げストローカーばかりとかならそれほど難しくないものの,ツーハンドのクランカーやレフティが混ざると,ちょっと難しいかも知れないと思うのだが,意外に混ざっている.
 筆者もこういうものに参加するとして,右隣が右投げツーハンドのクランカータイプなら,右投げでいくだろう.そのようなケースでの左投げはちょっと躊躇する.
 でも,左隣もツーハンドのレフティだったら……ハウスボールど真ん中真っ直ぐ,でいくかな……(汗).

 少なくとも,(マイボウラーではない)一般客の中で投げる場合でも,両隣が1レーン牽制を理解してくれていれば,全く投げ辛さは感じない.
 そんなものを知らないかも知れないような人でも,例えば「女の子や幼児とその母親」とかいうパターンの時には「危なそうだから」と,自然に1レーン牽制になっていることがある.
 本能的に危険を回避しているのだ.

 筆者は基本的に,レーンの(ガターまで含めた)「幅」の中で助走するが,ライン取りなどによっては,リリース後に「蹴り脚」がはみ出す可能性もゼロではない.
 また,ボールリターンがある側では難しいが,反対側では実際にディープインサイドから投げざるを得なくなって,レーン幅の外から助走して投じたこともない訳ではない.
 投球後にバランスを崩して身体がふらつくことも考えられるから,1レーン牽制は「必須」だと考える.

 特に,レフティから見ると,どうしても隣のレーンの右投げとは「干渉」しやすくなってしまう.
 実際に,左投げの時のほうが「危ない」と感じたことが多い.

■ ボックス牽制

 これに対して「ボックス牽制」は,両隣のボックスのアプローチに誰もいない時にしかアプローチに上がれない.

「フジ取手ボウル(108-008)」に置いてあった牽制に関するチラシ


 つまり,連続した6レーンの中で,1人しか投げられないことになる.

 例えば,上の図の「BOXけん制」のように右レーン(偶数レーン)で投球する場合,右隣の2レーンが「牽制」の対象になるが,左側は同じボックスを含めて3レーン先まで対象になってしまう.
 ボックス2人打ち程度の競技会ならわからなくもないが,5人打ち,6人打ちでこれをやると,進行が極端に遅くなる.6人打ち4ゲームだと,1レーン牽制ならば2時間半もあれば終わると思うのだが,ボックス牽制だと3時間はかかってしまうだろう.

 筆者自身は「視野」が広いほうであるためか,2レーン先くらいまでの人の動きが視界に入ってしまって投げ辛いことは往々にしてある.
 そのため,1レーン牽制であっても,2レーン先の投球動作とはワンテンポずらして助走を始めることは少なくないが,あくまでも,両隣が空いていれば,アプローチに上がってアドレスまでは行う.その上で視界を煩わされないタイミングで投球する,というだけのことだ.
 それでも,流石に3レーン先は,ほぼ気にならない.上記の例でいえば,左隣のボックスの奇数(左側)レーンは,文字通り「アウトオブ眼中」なのである.

 なお,スイッチボウラーならではの視点だとは思うが,この「視界に入ってしまう」範囲は,左投げなら左側,右投げなら右側にやや広い.
 左投げの場合,左側の2レーン先は若干気になるが,右側の2レーン先は,あまり気にならないのだ.
 その点からも,1レーン牽制で充分で,その上で「気になるなら待てばいいだけ」だと考えている.

 しかしながら,気になるかどうかということではなくて,単に「昔からそうしてるから」としか思えない理由で「ボックス牽制」を押し付けられている,と感じることもある.
 2レーン先の爺さんから「こっちが投げようとしている時にアプローチに上がるんじゃない!」と怒鳴られたことがあり,気になるなら待てばいいだけだ,と怒鳴り返したことがある.なお,その爺さんはアプローチに上がってから30秒以上小刻みに動くだけでちっとも投げず,時によっては1分近くかかることもあったので,これで左右6レーンが止まるのは如何なものか,という状況であったことを付記しておく.
 なお,筆者はアプローチに上がってからは「比較的すぐ投げるタイプ」で,むしろそうしないと(ボールを持ち過ぎると)内ミスしやすくなってしまうタイプだ.前述したように,2レーン先が気になる場合は少し待つこともあるが,その場合はアドレスだけ決めて,ボールに指を入れない状態で待っている.

 こういう(ボックス牽制にこだわるような)面倒な人は,端っこのレーンに割り当ててくれよ,と思うのだが,そういう人に限って「端のレーンは(どこのセンターでも)クセが強いから嫌だ」といって敬遠したりする.
 筆者は逆に,クセが強いからこそ練習には持って来いだし,気にする範囲も狭くて済むので,意外と「端っこ」が好きなのだが(自称「すみっコぐらし」派?).

 勿論,何らかの理由があってボックス牽制を採用することまで否定している訳ではない.
 ただ,そこにこだわるには,それなりの理由が必要だと思う.

 現実には,1レーン牽制とアナウンスされている大会などでも,相手が「ボックス牽制派」かも知れない,と様子を窺いながらアプローチに上がる人をよく見る.
 無駄な気遣いを防ぐ意味でも,きちんと牽制ルールについてアナウンスしておくべきだし,それで投げにくいのであれば,自分が待てばいいだけのことなのだ.待った結果「遅延」で注意・警告されるようならば,そもそも「1レーン牽制」の競技会に出るべき技量を備えていない,ということだろう.

 牽制ルール如何に関わらず,「安全に投げられるタイミングには積極的に投げる」ことで,進行にも寄与することになる.
 その意味では,「ムーンライトストライク」の「阿吽の呼吸」で投げられる,ということも一つの「技能」だとも思っている.

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