複数形の"s"か"is"の短縮形かわからない問題

今日は英語の一時的曖昧文(temporary ambiguous sentence) についてのお話です。これは、文の途中まで曖昧で、全部文を聴いたら曖昧じゃなくなる文のことです。

 "The pens ..." という英語を聞いて、その "s" が複数の "s" なのか "is" の短縮形の "s" なのか区別することはできません。そのあとのことばを聞かなければなりません。たとえば、"are over there" と聞こえたら複数の "s" で、"over there" だけだったら "is" の短縮形となります。書き言葉であれば、前者は "The pens" で後者は "The pen's" と 区別できますが、音だけでは判別できません。

これだけで大変になるのか?と思うかもしれませんが、めちゃくちゃ処理負荷かかりますよ!わたしは!英語は母語じゃないので、余計に難しく感じるんだと思います。

このメカニズムは、"Incrementality" で説明できます。人間と言うのは、文字を読んだ順、音を聴いた順に、どんどん構造を解析していきます。たとえば、「ハナコちゃんが~」と聞いたら全部の文を聞く前にもう「ハナコちゃん=主語」と分析していくんですね。このことをIncremental Processing(漸増的処理)と呼びます。だから、"The pens~"と聞いたときに本当はもう文法解析していきたいのに、できなくなっちゃうんです。そのあとのことば、たとえば "are" を聞かないと 「the pens = 主語」と言えないのです。だから "are" を聞くまでずっと処理は止まっているし、それまで記憶の中にいれておかないといけない。これが、"The pens~" を聞いたときの難しさのメカニズムです。

ちなみに、人間がIncremental Processing をやっているんだな、ということがわかる文があります。次の文を読んでみてください。

  警察がどろぼうを必死で捕まえようとした太郎さんにお礼を言った。

最初、どろぼうを捕まえようとしたのは警察だと思わなかったですか?でも「太郎さん」を読んだとき、ああなんだ、どろぼうを捕まえようとしたのは太郎さんか、となるわけです。つまり、「どろぼうを捕まえようとした」と呼んだとき、すでにこれが「警察が」の述語にあたる部分だと脳が解析しちゃっているんですね。これが、Incremental Processingです。

以上、"The pens~"の難しさでした。ほかにもこの気持ちがわかってくれる方がいたらうれしいです。もっと英語に慣れてきたらあまり難しいと感じなくなるのかな?その日が来るまで…。

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