ジョン・コルトレーン チェイシングトレーンを鑑賞して

偉大なるジャズサックス巨人の一人にして、モード奏法を作ったジョン・コルトレーンの映画です。 最初は、ほとんど作品は知らず学校の授業でジャムセッションがありそれで僅かばかりの楽曲を知ったぐらいですね。 最初に買ったCDは、バラッドではないかと思います。そして、クレッセントやインプレッション、ブルー・トレインなど様々聴くようになりました。     

一番良く聴くアルバムはジョニー・ハートマンとの作品でDedicated To Youの始まりの一音にコロッと倒れる?くらい打ちのめされるというか、脳に衝撃が走るくらいの刺激がある。美しく優しい My One And Only Loveはとても素晴らしくて何度聴いても良い。 マイ・フェイバリット・シングスはサウンド・オブ・ミュージックからの楽曲をアレンジしたもの。中期のコルトレーンはパワー溢れて長い演奏時間が多く圧倒されますね。

さて、映画に移りまして幼少期に関しては余り知らなかったので祖父が牧師だとか昔馴染みの友達がベニー・ゴルソンだと言うことも初めて知った。アルトからテナーに転向してディジー・ガレスピーの楽団にいたというのも知っていたが、薬物が原因で退団させられたという理由までは知らなかった。ディジー・ガレスピーが薬物嫌いなのは、チャーリー・パーカーによる様々な問題や迷惑があったからだろうと推測する。 多くのジャズミュージシャンはドラッグ(薬物)をやればチャーリ・パーカーみたいな演奏ができると思いこんでいたのでコルトレーンもその影響にあった。己の力だけでドラッグから抜け出し再度マイルス・ディビスのバンドに加わり後にカインド・オブ・ブルーの名演が生まれるようになった訳だ。 

独立して自分名義のアルバムを出すようになり、どこかの宗教に囚われることなく愛と平和について考えるようになり至上の愛が誕生した。神に対する祈りというべき作品なのだろうが、どこか特定の神を指している訳ではないのが私としては好感が持てる。 どこかに属してしまえば、そこが正しいという頭になり他を否定するようになるから。宗教による対立による戦争が起きており、世界から戦争が無くなればいいと思っていた。

ある時教会においてテロが起き黒人の少女が亡くなりキング牧師が声明をあげた。それを音楽に変えてコルトレーンは、追悼を捧げたのであった。そして、また日本ツアーにおいて長崎を訪れ原爆記念碑に献花をした。あの時代に訪れたアメリカの音楽家などほぼいないのではないだろうか?定かではないが、コルトレーンの平和に対する祈りを知ることができる。

後期になると演奏については、正直言ってどういったら良いのか不明だがジャズという枠組みは取り払われていると思ってよいだろうと見ていて聴いて思った。なので、ただ深く考えず何かの叫びのような激しいエネルギーの塊だということは分かる。1967年僅か40歳という歳で肝臓がんにより亡くなっているが、音楽活動を優先させそのガンによる影響も見せずまた誰にも知らせなかったという。たくさんの日夜の演奏やレコード制作など心身共に酷使する影響から早死するジャズプレイヤーが多いのが気になる所である。

映画には多くの著名人がコルトレーンについて語っているが、元大統領やドアーズのドラマーなどジャズと関連が無い人が出てくるのは一時代を築いた人であるからなんだろうな。特にベニー・ゴルソンやソニー・ロリンズが彼を語る時はどこか悲しそうに声が聴こえる。 こんなに早くに別れが待っているとは想像できる人はいないですからね。

内容の語りみたくなりましたが、ジョン・コルトレーンのことがよく分かるものでありマイルスのものとは違い時折胸が痛くなるような思いをしたのは彼の話であったからだろう。この映画を見ると、いろいろと人によっては変わるものがあると思うのでお勧めであります。ジャズを知ってる人でも知らない人でもね。

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