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7,000万円調達した新規事業を1年で「撤退」した理由と、ゼンフォースの次なる挑戦

ゼンフォース代表の荻野(おぎの)です。

私は伊藤忠商事とfor Startupsを経て、2020年12月に起業しました。

2021年10月にはシードラウンドで総額約7,000万円を調達IT・SaaS営業に特化したキャリアスクール「ZENFORCE Sales Academy」を開校しました。当時PR TIMESのプレスリリース人気ランキングで1位を獲得するなど、好調な滑り出し……かのように見えました。

しかし私の力不足で、この事業は1年も続かず撤退することになったのです。

この失敗を糧にして、ゼンフォースは現在「大手企業の営業企画代行」をおこなっています。お客様に恵まれ、なんとか事業を軌道に乗せることができました。このタイミングで、起業から現在に至るまでの背景を改めて棚卸しできればと思います。

▼ゼンフォース創業までの背景はこちら
伊藤忠商事とfor Startupsを経て、次世代のIT人材養成機関、「ZENFORCE」を創業した理由

華やかな新事事業、裏側ではCPA15万

「ZENFORCE Sales Academy」は、「THE MODEL」などIT・SaaS業界の営業スキルが学べるスクールです。伊藤忠商事とfor Startupsにおける自身の経験から、「レガシーな大手企業からIT業界へ転職したい人たちをサポートしたい」と立ち上げた事業でした。

約10ヶ月の準備期間を経て、2021年10月に満を持してリリース。マネーフォワードベンチャーパートナーズ株式会社様や個人投資家のみなさま、金融機関から総額約7,000万円の資金を調達しました。「いままでにない営業スクール!」「講師陣がめちゃめちゃ豪華」とプレスリリースも大反響を呼び、PR TIMESのプレスリリース人気ランキングで1位を獲得しています。

「これはイケるんじゃないか」と、当時の私は思っていました。

しかしいざ蓋を開けてみれば、あれだけ反響があったにもかかわらず、なぜかお客様が集まらなかったのです。

コンバージョン単価(CPA)は、なんと定価の半額以上。このままではいつまでたっても初期投資を回収できません。苦渋の決断ではありましたが、最終的には資金が底をつく前に、事業を「撤退」することにしました。2021年の12月、起業してちょうど1年が経過したころでした。

あると思っていた「ニーズ」の実態

振り返ってみれば、プレスリリースの反響はあくまで「真新しさ」に対する盛り上がりであり、「お金を出してでもこのスクールに通いたい」というニーズの強さを示すものではありませんでした。

もちろん「大手からIT企業に転職したい」「ソリューション営業になりたい」と考える人がゼロだったわけではありません。「ZENFORCE Sales Academy」も結果として約100名の方に受講いただきました。しかし私が想像していた以上に、ターゲットに当てはまる人が少なかったのです。

事業を伸ばすためにターゲットを広げようとすると、「年収を200万UPさせたい」「リモートワークで自由に働きたい」といった根源的なニーズに応えるしかありませんでした。……「ZENFORCE Sales Academyに通えば年収を200万UPできます!」と訴求しなければならないことに、私は強い抵抗感を覚えました。

それに、もし仮に「年収200万UP」と訴求して集客に成功したとしても、ターゲットを広げれば広げるほど、優秀な人材を求めているIT・SaaS企業への転職は難しくなるとわかっていたのです。

こうして事業はうまくいきませんでした。

あると思っていたニーズが、シンプルに小さかったわけです。

精神が崩れていくなかで

当時正社員のほかに業務委託のメンバーが30名ほど協力してくれていましたが、そのうち約20名は契約を解除せざるを得ませんでした。経営幹部も一人ずつ減っていき、私は自分のことがどんどん嫌いになりました。精神が崩れていったのです。

そんな状態を救ってくれたのは、株主をはじめとする先輩経営者の存在でした。私はてっきり、「事業に失敗してしまい、これからどうしようか悩んでいます」と彼らに相談すれば、「もっとこうすべきだ」という厳しいご指摘が返ってくるものだと思っていました。しかしみな口を揃えて「めちゃくちゃわかるよ」と共感し、励ましてくれたのです。

「Nice to haveではなくMust haveのサービスを作るべき」なんて、私も含め起業家はみなわかっています。それでも結局「サービスを出してみたら思ったよりもニーズがなかった」という罠に多くの人がハマってしまうわけです。この事実に気づけたことで、私は自分の心を強く持ち直すことができました。

「みんなハマる罠だ」と認識できていれば、いざ罠にハマっても冷静に対処できます。メンタルが折れることもありません。

難しく考えることは「逃げ」である

もう一つ、当時の自分にとても深く刺さった言葉がありました。それは「物事を難しく考えることは簡単で、シンプルに考える方が難しい」という堀江貴文さんのメッセージです。

たとえば、好きな人にLINEを既読スルーされてしまったとき、「いま忙しいのかな」「私の言動がなにか気に障ったのかな」とあれこれ考えますよね。これはシンプルに、「脈ナシ」の証拠です。でも「脈アリ」だと思いたいから、ごちゃごちゃ難しく考えてしまう。難しく考えるというのは、ある意味「逃げ」なんです。

経営も同じです。「社会貢献」「従業員満足度の向上」と難しく考えがちですが、「株式会社」はシンプルに、「株主に利益を還元すること」をまっとうすべきです。もっと端的にいえば、稼がなきゃいけないんです。お客様が求めているものを提供し、対価をもらう。このベースがあってようやく、社会貢献や従業員満足度を追求できます。

……私はまさに、「世の中のため人のために」と鎌倉で起業したものの、まったく稼げず、自分の精神がボロボロになり、社会貢献どころではなくなりました。だからこそ今後は、まずはしっかりと自社の売上を伸ばしたい。また、同じように我々がご支援しているお客様の売上も伸ばしていくことで、お客様の未来の挑戦を支えたい。こうした想いから、「持続的な売上成長を後押し、未来を創造する」というミッションを新たに掲げました。

大手企業の営業をDXする支援会社へ

「ZENFORCE Sales Academy」撤退後、私はとにかく「お客様が価値を感じて、お金を払ってくれるもの」の提供に振り切ると決めていました。

そこで最初に目をつけたのは、「法人向けの営業研修」です。というのも、個人向けスクール時代から「法人からのお問い合わせ」が数件あったのです。ありがたいことに運よく3社ほど大手企業から発注いただき、その後も順調にご支援の幅を広げることができました。

現在ゼンフォースは営業研修だけではなく、「営業企画をまるごと代行」と銘打ち、大手企業の営業コンサルティングやSFA/CRMの導入支援をおこなっています。

いざ大手企業の営業支援を始めてみて、「ここには強いニーズがある」と実感しています。「いままでのウェットな訪問営業スタイルが通用しなくなってきた」とどの企業も危機感を持っているのです。しかしながら、営業のDXはたいてい「現場」に受け入れてもらえず失敗します。Salesforceを使いこなすどころか、SlackやGoogleドライブの活用すら渋られるありさまです。

だからこそ我々は、まずは研修を通じて「現場のマインド」を変えることからお手伝いしています。たとえば、「営業スタイルを変えることは、みなさんの市場価値を高めることに直結するんです」と現場社員にとってのメリットを丁寧に説明したり。近しい境遇の大手企業がどのように営業スタイルを変革していったのかを共有することで、イメージを湧かせたり。ウェットな営業スタイルを否定するのではなく、あくまで尊重しながら「データ “も” 活用しましょう」と提案しています。

このように、IT・SaaS業界の営業ノウハウを「大手企業向け」に翻訳しながら支援している会社はほかにありません。そのため「大手企業の営業企画代行事業」を伸ばす自信は十分にあります。リクルート様やNTTファイナンス様、ITOKI様、日立ドキュメントソリューションズ様、チャットワーク様など、ご支援実績も順調に増えています。

支援会社の限界を超える「BPaaS」

営業DXを実現できるかどうかは、最終的には「お客様の覚悟」にかかっています。本気で変わろうとしていないお客様にいくら営業研修やコンサルティングをおこなったとしても、改革はできません。ここに支援会社側のもどかしさがあります。

しかし「BPaaS(ビーパース)」であれば、いま一歩踏み込んだ支援ができるのではないかと可能性を感じています。「BPaaS」とは、「BPO」と「SaaS」を掛け合わせた言葉で、業務プロセスをまるごと提供する、つまりツールだけでなく人材もセットで提供するビジネスのことです。「どんなに便利なSaaSを導入したとしても、使いこなせる人がいない」という課題から生まれたものであり、近年国内で注目を浴びています。

ゼンフォースでは今後、営業プロセスをまるごと代行し、SFA/CRMの活用を社内に定着させるBPaaSにチャレンジします。「現場を動かす」のではなく我々が「現場で動く」ことで、いままで営業DXがなかなか進まなかった大手企業においても売上向上に貢献できるよう、本気でコミットしていきたいと考えています。

今のゼンフォースの仲間です!

さいごに

「いままでの営業スタイルが通用しなくなってきた」と危機感を持つ大手企業の営業/マーケティング部門のみなさま、ぜひ弊社へ一度お問い合わせください。同じ境遇にある大手企業様のご支援経験をもとに、貴社に最適なソリューションを提案します。

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また、ゼンフォースでは事業拡大につき業務委託/副業メンバーを大募集しています。当noteを通じて弊社に興味をもってくださった方がいらっしゃれば、ぜひ一度私とカジュアル面談の時間をいただけると幸いです。

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