【小西vs高市?】総務省が公開した文書には何が書いてある?

最近メディアを賑わす小西さんが糾弾する行政文書。
その内容が総務省より公開されました。

https://www.soumu.go.jp/main_content/000866745.pdf


今日はその文章の中身を見ていきましょう。

最初の登場人物は磯崎総理補佐官(当時)です。
磯崎さんは当時自民党参議院議員です。

平成 26 年 11 月 26 日(水)
磯崎さんは総務省にレクを求めます。

「コメンテーター全員が同じ主張の番組(TBS サンデーモーニング)は偏っているのではないかという問題意識を補佐官はお持ちで、「政治的公平」の解釈や運用、違反事例を説明してほしい。」

磯崎補佐官から、「政治的公平」のこれまで積み上げてきた解釈をおかしいというものではないが、①番組を全体で見るときの基準が不明確では ないか、②1つの番組でも明らかにおかしい場合があるのではないか、と いう点について検討するよう指示。

なにかと話題にあがるサンデーモーニングを取り上げ、「②1つの番組でも明らかにおかしい場合があるのではないか」と疑問を呈したわけです。

そもそも「政治的公平」の解釈について政府は以下の見解を述べています。

「政治的問題を取りあt7宇買う放送番組の編集に当たっては不偏不党の立場から特定の政治的見解に偏ることなく、番組全体としてのバランスのとれたものであること」としており、その整合性の判断に当たっては、一つの番組ではなく、放送事業者の番組全体を見て判断する。

つまり、一番組であるサンデーモーニングが政治的な偏りがあっても、他の番組で調整できていればよいとのことです。

時を戻します。

平成 27 年 1 月 9 日(金)
磯崎補佐官レク 総務省からの説明を踏まえた資料を補佐官側で作成するので、本資料に 関する協議を事務的に進めるよう指示。
2 月 13 日(金):高市大臣レク(状況説明)
17 日(火):磯崎補佐官レク(高市大臣レク結果の報告)
3 月 5 日(木):磯崎補佐官から安倍総理に説明(今井・山田総理秘書官同席)

磯崎さんと総務省のやり取りが続きます。

やり取りの中政府見解としての案をいかのような形でまとまっていきます。

解釈について補充的説明
今後は、国会質疑等の場で、次の内容に沿って、従来の政府解釈について、補充的説明を行うものとする。
① 例えば、ある時間帯で総理の記者会見のみを放送したとしても、後のニュースの時間に野党党首のそれに対する意見を取り上げ
ている場合のように、国論を二分するような政治的課題について、ある番組で一方の政治的見解のみを取り上げて放送した場合で
あっても、他の番組で他の政治的見解を取り上げて放送しているような場合は、放送事業者の番組全体として政治的公平を確保し
ているものと認められる。
② 政治的公平の観点から番組編集の考え方について社会的に問われた場合には、放送事業者において、当該事業者の番組全体とし
て政治的公平を確保していることについて、国民に対して説明する必要がある。
③ 一つの番組のみでも、次のような極端な場合においては、一般論として「政治的に公平であること」を確保しているとは認めら
れない。
・選挙期間中又はそれに近接する期間において、殊更に、一の候補者や候補予定者のみを相当の時間にわたり取り上げる単発の特別
番組を意図的に設けて放送した場合のように、選挙の公平性に明らかに支障を及ぼすと認められる場合
・国論を二分するような政治的課題について、放送事業者が、殊更に、一方の政治的見解を取り上げず、他の政治的見解のみを取り
上げて、相当の時間にわたり繰り返す単発の特別番組を意図的に設けて放送し、事実上当該放送事業者において前者の見解を取り
上げる意思がないことが明白である場合(のように、当該放送事業者の番組編集が不偏不党の立場から明らかに逸脱していると認
められる場合)

おそらく大事なのは③で、一つの番組の場合でも政治的公平ではない基準を定めようとしました。

もちろん総務省の役人さんだけでお話が進むわけではなく、
ここでようやく高市さんの登場です。

役人さんたちはこう述べます。

当方としては、本件は政務にも一切上げずに内々に来ており、今回の整理については高市大臣のご了解が必要。

そりゃそうですよね。一つの番組だけで政治的公平が逸脱するケースができてきたわけですから。

その後、磯崎さんは総理に同意を求め、国会での質疑で答弁する流れを作ろうとします。

高市大臣のご了解が得られれば、自分(補佐官)から今回の整理について総理にご説明し、(国会での質問等について)総理の指示を受ける形にしたい。突然総務省に通告して迷惑を掛けるようなことはしない。総理がどう仰るかにもよるが、いつ誰が質問するかは慎重に決めたい。(補佐官は質問に立てないので)質問は補佐官がきちんとコントロールできる議員にさせる。

磯崎さんと総務省との話し合いがいったん落ち着いた後、
総務省は高市総務大臣に説明します。

高市さんは本件には懐疑的で

そもそもテレビ朝日に公平な番組なんてある?どの番組も「極端」な印象。関西の朝日放送は維新一色。維新一色なのは新聞も一緒だが、大阪都構想のとりあげ方も関東と関西では大きく違う。(それでも政治的に公平でないとは言えていない中)「一つの番組の極端な場合」の部分について、この答弁は苦しいのではないか?

と疑問を投げかけています。

その後の山田総理秘書官-総務省の会話でも

山田)「礒崎補佐官は官邸内で影響力はない(長谷川補佐官は影響力あるとの言)。総務省としてここまで丁寧にお付き合いする必要があるのか疑問(山田秘書官としては総務省から礒崎補佐官を止めて欲しかった?)。今回の話は変なヤクザに絡まれたって話ではないか。」
「(前略)政府がこんなことしてどうするつもりなのか。礒崎補佐官はそれを狙っているんだろうが、どこのメディアも萎縮するだろう。言論弾圧ではないか。」

と否定的。

言論弾圧、様々なメディアへの影響を不安に思う総務省は磯崎さんに提言します。

先日の話は、実際に国会で答弁を行うと、いろいろと(マスコミから)言われることも想定される。こちらから申し上げる話ではないことは十分に承知しているが、総理にお話しされる前に官房長官にお話しいただくことも考えられるかと思いますが。

磯崎さんは激昂します。


「何を言っているのかわかっているのか。これは高度に政治的な話。官房長官に話すかどうかは俺が決める話。局長ごときが俺に言う話ではない。総理が(官房長官に相談しろと)仰るなら勿論話する。この件は俺と総理が二人で決める話」「官房長官に役所から話すことは構わない。しかし俺の顔をつぶようなことになれば、ただじゃ済まないぞ。首が飛ぶぞ。もうここに来ることもないからな。」

確かにやくざですね。
何となくここまで読んでみたらわかるように高市さんはほとんど出番ありません。

総務省もできるだけの準備をします。

【事前にレクの内容を承知することとなった場合】
総理レクの前に、「本件はサンデーモーニングや報道ステーション
といった政権に過度に批判的な番組に対する牽制にはなるが、官邸に
とってはマイナスであり、やらないほうが良い」旨を総理にご進言
いただく、
【上記の事前レクができない場合】
総理レクの現場でのご対応となるが、仮に総理から国会答弁を行う
ことで良いとの指示が出た際は、「現在のメディアとの距離感を踏ま
えれば、国会答弁を行うタイミングについては、慎重に進める必要が
あり、政権全体のメディア担当である官房長官とも十分なご相談が
必要である」旨をご発言いただく、

と山田秘書官に連絡。できるだけ頓挫にしたかったんですね。


しかしながら話はよからぬ方向へ。

平成27年3月5日(木)夕刻
総理、磯崎さん、今井総理秘書、山田総理秘書の4名で説明が行われました。

磯崎さんからの説明、山田さんからの抑制があったものの、
総理は意外と前向きな反応を示します。

「政治的公平という観点からみて、現在の放送番組にはおかしいものもあり、こうした現状は正すべき、
・ (放送番組全体で見ることについて)「JAPANデビュー」は明らかにおかしい、どこでバランスを取っているのか、
・ FCC(米国)のように(政治的公平を)廃止した国はともかく、日本の放送法には「政治的公平」の規定があって、国民はこれが守られていると思っており、守られていない現状はおかしい。」
「 ・ 「放送番組全体で見る」とするこれまでの解釈は了解(一応OKと)するが、
・ 極端な例をダメだと言うのは良いのではないか、
・ その意味で(補佐官の整理は)あくまで「極端な事例」であり、気を遣った表現になっているのでこれで良いのではないか、」

その後の磯崎さんは勝ち誇った様子が文章から読み取れます。

「放送番組の政治的公平についての総務省のスタンスがこれまではよく分からなかった。」
「(前略)。その意味でもサンデーモーニングは構造的におかしいのではないかということ。皆さんもこうした問題意識は頭に入れておいていただきたい。(笑いながら)あんまり無駄な抵抗はするなよ。 」

その後総務省と高市大臣のデブリ(意見交換)
高市さんは本件あまり記憶がなかったとのこと。説明を受けてなお、消極的で第一声は「本当にやるの?」だったそう。
高市さんはその後総理に電話し、総理の意向を聞いたようです。

答弁のタイミングについて総理の意向でNHK予算など、総務委員会にて「一連のものが終わってから」となりました。

平成27年5月12日参議院総務委員会において、(自)藤川委員から 放送法第4条第1項第2号の政治的公平に関する質疑が行われます。質問内容は以下の通りです。

対総務大臣
問1 最近の放送番組を見て、大臣は、政治的公平性がきちんと守られていると考えるか。
問2 放送番組の政治的公平性について、総務省は、従来どういう基準で指導を行ってきたのか。
問3 「放送事業者の番組全体を見て判断する」ということだが、具体的にどういうことか分かりにくい。例えばどういうことであれば、「放送事業者の番組全体を見て判断」して政治的公平性が保たれていることになるのか。
問4 ある番組について政治的公平性が指摘された場合において、「放送事業者の番組全体を見て判断する」としても、番組全体として政治的公平性を保っていることを放送事業者がきちんと説明しなければ、この基準は全く意味がないと考えるが、どうか。
問5 一番組だけを見ても、極端な場合は、政治的公平性が守られていないという場合があるのではないか。例えば選挙直前などがそうであり、以前例があったが、特定の候補予定者のみを密着取材して選挙公示の直前に長時間特別番組で放送するようなことは、一番組だけでも、政治的公平性に反すると言えるのではないか。
問6 選挙以外でも、国論を二分するような政治的課題について、一方の政治的見解を採り上げずに、他方の政治的見解のみを採り上げ、それを支持する内容を相当時間繰り返して放送するような場合は、やはり一番組であっても、政治的公平性反すると言えるのではないか。

一番組の政治的公平について高市大臣はこう答弁します。

○高市大臣
(前略)前問と同じように政府のこれまでの解釈の補充的な説明として申し上げますが、1つ番組のみでも国論を二分するような政治課題について、放送事業者が一方の政治的見解を取り上げず、殊更に他の政治的見解のみを取り上げて、それを指示する内容を相当な時間に渡り繰り返す番組を放送した場合のように当該放送事業者の番組編集が不偏不党の立場から明らかに逸脱していると認められる場合といった極端な場合においては、一般論として政治的に公平性であることを確保していることは認められないものと考えます。

とこの答弁のところまでが公開された文章です。

行政文書が捏造されたとか、政治的公平がどうのというより、
磯崎さんて嫌な人だよねって文章でしたね。

小西さんが(というより総務省が)今回の質疑で本文章を公開したのは、4月に行われる参議院の大分補選に磯崎さんが出馬する可能性があるからとの憶測が高まっています。

文章見ている限りまたくるのか、と思わなくもありません。

では、きょうはこの辺で。

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