見出し画像

ノースシ・ノーライフ(6-10)

「し、死……!?」
「やってねぇ、俺のジツでちょーっといい感じにしただけだって」

「いい感じ、ですか?」
「そう、いい感じ。具体的なのは企業秘密な」

場所を取って仕方がないサイズのミートバーンを、レインボーフードはエーリアスと手分けして、パンキッシュファッションの一環で飾られていた鎖を用いてぐるぐるに簀巻きにしてしまう。拘束の間も、ミートバーンはピクリとも動かない。

「トドメは良いんですか?」
「ああ、ケモビールに帰らせれば襲えないみたいだし、ちょっと釘刺しといたから平気さ。とはいえ、さっさとケモチャンを送ってやろうぜ」

エーリアスの言葉に頷くと、レインボーフードは自分よりも遥かに大柄なミートバーンを肩に担ぐ。いささかアンバランスな見た目だが、ニンジャ身体能力を持ってすれば巨漢を担ぐ程度、レインボーフードでもなんら支障はない。

そしてケモ動物はというと、今までの激闘などまるで素知らぬ顔で相変わらず寝息をたてていた。エーリアスがあご下をなでてやると、仙人の白ひげめいた毛がたなびき、ケモ動物はうっすらと眼を開ける。

「ケモォン?」
「行くぜ、お迎えだってさ」

エーリアスよりも先に外に出るレインボーフード。
嵐のごとく吹き付けていた重金属酸性雨は今はやみ、厚ぼったい雲が夜空を厚く覆っていた。

―――――

「アリガトゴザイマス!アリガトゴザイマス!」

合流場所である、小ぢんまりとした公園にてケモ動物を眼にしたケモキは、己の身が折れんばかりにオジギを繰り返す。そんなケモキに、どこかバツの悪そうな、少々気まずい印象の表情のエーリアス。

「ああ、いいっていいって、たまたまだし」
「とんでもございません!あなたが保護してくださらなければ、この子はヨタモノにヤキニクにされていたかもしれず、本当にアリガトゴザイマス!」
「あはは……」

焼き肉の下りで照れ混じりの苦笑を見せるエーリアスは、ケモキがオジギをやめたタイミングで次の言葉を切り出した。

「ケモキ=サン、良けりゃコイツにまた会わせてくれねぇかい?」
「ええ、ええ、もちろんです!この子もあなたに懐いておりますし、宣伝周遊ルートをご近所を回るように割り当てますので!通った時には可愛がってあげてください!」
「……そっか、サンキューな、ケモキ=サン」
「ハイ!レインボーフード=サンも本当にアリガトゴザイマス!」

エーリアスの少し後ろでやり取りを見守っていたレインボーフード(ミートバーンは適当な裏路地に簀巻きのまま捨ててきた)も、軽くオジギして応えた。

「ケモビール、イイヨネー?」
「バイバイだぜ、ケモチャン。なあに、また近所に顔だしてくれよ」
「ケモビール!イイヨネ!」

はたしてそれは肯定か、了承だったか。
ケモ動物は笑顔のように見える形状に表情筋をゆがめた後、ケモキの隣へと移っていった。そしてレインボーフードとエーリアスに何度もオジギしながら去っていくケモキに合わせて、ケモ動物も何度もエーリアスの方へと振り向きながら、ネオサイタマの雑踏の奥へと消えていった。

いつしかネオサイタマの夜空は珍しく晴れ渡り、望月の明かりが不夜城たるネオサイタマに入り混じり、その明るみをわずかにましていた。

【ノースシ・ノーライフ(6-10):終わり:(6-11)に続く第一話リンク

現在は以下の作品を連載中!

弊アカウントゥーの投稿は毎日夜20時更新!
ロボットが出てきて戦うとか提供しているぞ!

#小説 #毎日投稿 #ニンジャスレイヤー二次創作 #ニンジャスレイヤーTRPG

ドネートは基本おれのせいかつに使われる。 生計以上のドネートはほかのパルプ・スリンガーにドネートされたり恵まれぬ人々に寄付したりする、つもりだ。 amazonのドネートまどぐちはこちらから。 https://bit.ly/2ULpdyL