現代討魔伝:ボンズ ウィズ ディテクティブ そのご
「カリューさん、私もバニッシャーになりたいです」
「そうか。……はい?」
時は新世紀!
二次元の嫁をこの手にめとるべく狂人なる天才が作り出したフィックションとリアルをつなげるマッスィーンによって幻想世界と現実世界は結合してしまった!
現実を侵食する幻想より人々を虐げるべくそう定められた使命にて数々の魑魅魍魎と悪魔が迫る!
これは現代を駆け異形を断つボンズの物語である!
※このパルプの登場人物はフィックションでありリアルの奴らとは関係がない重点。
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ここはいつものバー「涅槃」。
昼前の客の少ない時間帯に緑茶をすすっていたボンズは給仕服ウェイトレスからのいきなりの告白に軽く流してから真顔になって振り向いた。
「まて、まて、カスミはこの前ここで働き始めたばかりだろう?」
「はい、でもしっかり考えて決めたんです」
ボンズの視線を真正面から受け止める給仕服をまとった黒髪の少女。
彼女は直近の依頼の原因を起こしていた存在であり、紆余曲折の果てこのバーのウェイトレスとして働き始めたのだ。名を、カスミという。
「いーんじゃないか、彼女の能力はバニッシャー向きだと思うぜ?」
「駄探偵の意見は置いておいて、もう決めたんだな」
当然の様に口をはさんでくる自らの相方である探偵は放置して少女に確認するボンズ。
「はい、マスターにはここで働きながら合間に依頼をこなすという事で了解をいただいてます」
少女の言葉にウンウンとうなずく筋骨隆々坊主頭のマスター。
「そこまで話が出来上がってるなら俺一人ごねた所で時間の無駄だろう」
「それじゃあ、カリューさんにバニッシャー認定の監督者を、ですね」
「……なにそれ」
少女のお願いに真顔で聞き返しマスターの方を向くボンズ。
「現バニッシャーが新米に同伴して依頼をこなすのを監督する、今はそういう決まりなんだと」
「マジか」
「マジだ」
「ぜんっぜん知らなかったぞ、俺達のころはボランティア活動的なのでバンバンアクマ狩ってたら政府の方から勝手に認定証送りつけてきたし」
「お前たちの活動し始めのころはそもそも政府の認定制度自体なかっただろ?だから認定制度ができた後に実績のある奴らは勝手に認定されたのさ」
マスターの解説に感慨深げに過去を振り返るボンズ。
「いいじゃないか、認定だけ受けた素人が初依頼から失敗して雑魚アクマの食い物とか慰み者とか、家畜になるとか、そういうのは避けられるんだぜ?」
「そ、そういうのホラー映画では良くありますけど実際にあるんですか?」
「セージ、お前はもうちょっと言葉を選べ」
悪趣味なワードセレクトで始める前から少女を脅かしにかかる探偵に釘を刺しつつ、ボンズは少女に向き直る。
「ボンズとて、二言はない。ちゃんと一人前になるまで面倒みよう」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
深々と頭を下げる少女に照れくさくてそっぽむくボンズ。
「となれば、とにもかくにも依頼をこなさないといけないわけだが……」
~~~~~場面転換!~~~~~
「で、初めての依頼はネコ探し、か」
「いいねいいね、駆け出し探偵だった頃を思い出すぜ。あの頃はこんなしっちゃかめっちゃかな世の中になるなんて考えもしなかったもんだ」
その日の昼下がり、バニッシャーの管理組織がネット上で提供している依頼掲示を頼りに、カスミは自分にできそうな依頼を選び、探偵とボンズは監督役としてついてきていた。
はっきり言って絵面としてはひどい。郊外の住宅地という環境に絶世の美少女の後ろをうろんな白探偵とあやしい黒ボンズがくっついているので人目を惹く事この上ない。幸いなことに平日なので通行人はほとんどいなかったが。
「しかしこれが霊体か、ボンズの俺でも容易には判別できないな」
そう、カスミは自身の能力である「ポルターガイスト」を活用し、生身の自分そっくりの霊体を作り出して探索を行ってるのだ。その精度たるや除霊のプロであるボンズですら本体と見分けを付けるのが簡単ではないレベルである。出会いのきっかけとなった事件では少女と判別がつくレベルだったことを考えると驚くべき進歩であった。
「はい、どうでしょうか?」
「フムン、確かに正しく使えば色んな依頼を解決できるのは間違いない」
「だろ?俺も助手にほしいくらいだって」
「お前は可愛い女の子侍らせたいだけだろうが!」
容赦なく相方を一喝してからカスミの方に振り替えるカリュー。
「こんな体たらくだがコイツは探偵としては間違いなく超がつく一流、好きなだけこき使っていいからな」
「カスミちゃんのためならよろこんで!」
「はい、カリューさんもセージさんもありがとうございます」
おずおずとした少女の微笑みは軽薄な探偵はおろか禅をたしなむボンズの心を傾けるほど暖かい代物であった。
「でも、居なくなったネコちゃんはどう探せばいいのかわからなくて」
「心配いらないさ、ネコ探しにはセオリーがあるからその通りにやろう」
「セオリー?」
聞き返す少女に探偵はうなずく。
「猫は自分の住処を中心とした縄張りからは離れない生き物なんだ、今回の依頼も居なくなってから飼い主がすぐ依頼を出したから一昼夜しかたってない。つまり遠くには行っておらず、飼い主の自宅があるこの町内のどこかにいる可能性は高いぜ」
探偵の説明にふぁーという顔で関心する少女。
「セージさん、ちゃんと探偵だったんですね……私てっきりホラー映画で女性の方とエッチなことをしている時に殺されるポジションのタイプかと……」
「なにそのたとえ!?」
すっかり砕けた会話が出来るまで立ち直ったカスミの様子に安堵していたボンズへと一報が入る。
「はい、カリューです。緊急対応依頼?……は?今いる地域に?……承知しました、お受けします」(プチッ)
「おい、カリュー」
「なんだ、こっちも急の仕事だが……」
「その仕事ってアレの事だろ、アレ」
一行がたどり着いた先は開けた広い空き地、その野原であった。
そこに鎮座しているのは蛇の尾、コウモリの羽根、獅子の身体、そして獅子とは別についている山羊の頭、とりわけその身体は象を越えるサイズだ。
「キマイラ、ですよね。あれ」
「ああ、この辺に住むバカがこっそり飼ってたのが逃げたらしい。俺に来た連絡は本部からの捕縛の依頼だ」
「そりゃ緊急の依頼になるわなぁ……あれ第一種輸入禁忌種だろ。下手なアクマよりやばいぜ」
遠巻きに観察する三人をよそにネコめいてあくびするキマイラ!
そしてそのキマイラを拝みに来たのか平和ボケが過ぎる野次馬が集まりつつある!そして……
「カリューさん!居ました!依頼のネコちゃんです!」
カスミが指差した先は打ち捨てられた金庫の中に隠れて震えるキジ猫の姿があった!
「なるほど、ここでキマイラとニアミスして帰れなくなってたんだな」
「無事でよかったぜ……とはいえこのままじゃアブナイな」
「カスミ、俺達がキマイラを引き離した後捕縛する。その間にターゲットを保護するんだ。出来るな?」
「やります!」
「いい返事だ、征くぞセージ!」
「あいよ引き受けた!」
掛け声と共に探偵は上空に威嚇射撃を行いキマイラの気を引く!しかしキマイラが口腔から放ったのは巨大な火炎弾だ!すでに空き地に侵入していた探偵のいた所を火炎弾が直撃!
「うひょー!あんなの喰らったらバットステーキだぜ!」
軽口を叩きながらもきっちり回避する探偵!なおも動かぬ魔獣の鼻先をボンズが出力を落としたライトセーバー降魔の利剣ではたく!思わずのめり、怒りに目覚める魔獣!
「おーにさんこちらっとな!」
立ち上がってネコパンチ、しかし岩をも砕き切り裂くそれを降魔の利剣で防ぎながら飛びのくボンズ!だが魔獣がさらに早い!追撃を加えようと身をかがめる魔獣を探偵が強制成仏弾の威嚇で押しとどめる!
「わかっちゃいたがデカい分長生きしてて強いな!下手に手加減してるとこっちがお陀仏だぞ!?」
「承知の上よ!カスミから引き離したらとっとと捕縛する!」
「捕縛判定ミスらないといいんだけどな!」
打ち合わせる二人を魔獣のじゃれつきが襲う!じゃれついてる程度とは言え常人ならば即席ハンバーグの未来は避けられない!剣が受け止めコウモリが舞って避ける!
「どうやってここまで連れてきたんだか業者に聞きたいもんだ!」
「麻酔とかじゃねーの!効く奴あるか知らんけど!」
「今度から持ち歩いておきたいもんだ!こんな事になるならな!」
大魔獣のネコパンチをいなすボンズに毒蛇の尾が忍び寄る!
殺気に応じて振り返るが遅い!
「ぬうぅー!」
しかし毒蛇はアギトを開いた瞬間に硬直する!
カスミの霊障金縛りだ!
「カスミ!助かった!」
「ネコちゃんは飼い主さんにお返ししてきました!私も手伝います!」
「二人じゃ決め手にかける所だった、助かるよ」
「はい!」
尾を封じられていら立つ魔獣の鼻先を飛び回り挑発する少女!一薙ぎにせんと魔獣は前足を振るうが霊体の彼女にはかすりさえしない!
少女に魔獣が気を取られている間にボンズと探偵は捕縛を準備する!
「こっちはいいぞ!」
「俺もだ!カスミちゃんそのまま何か一瞬でいい、動きを止められるか!?」
「任せてください!」
引きこもっていたとは思えぬほど自信に満ち溢れた声!それを信じ二人はそれぞれ手にした数珠と捕縄を魔獣を挟んで構える!
怒りに燃える魔獣はなおも宙の少女に火炎を放つが当たらぬ!
火炎が通り抜けた時に現れたのは……おお、見よ!
からからと骨が震え鳴り、底冷えする冷気をまとった巨大なる三つ首の骨龍である!その威容は大魔獣のそれを遥かに上回る!
骨龍の大咆哮に天地は揺れ!さしもの魔獣も身をすくませてひるむ!
「いいぜカスミちゃん!いきなグレイプニル!こんくらいならちょろいもんだろ!」
「御仏よ!これなる住処を奪われた化生にお慈悲を与えたまえ!」
ボンズの放った長大なる数珠と探偵がアクマを操る応用で放った神具が魔獣に幾度も絡みつき、巻き付いてゆく!あとに残されたのは縄と数珠でぐるぐる巻きに無力化された魔獣の姿であった!
南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏……
~~~~~場面転換!~~~~~
「いやーカスミちゃん大手柄よ、初仕事とは思えないね」
「胸の張れる仕事だ、よくやったな」
「えへへ……ありがとうございます」
探偵の賞賛に目を伏せて照れる給仕服の少女。
初仕事を終えていつものバーに戻ってきた二人は協力してくれた少女に心から礼を告げた。
しかし、流石に本体と霊体の並行稼働は疲れがかさむのかうとうととふらついた少女をボンズが抱き留める。
はやし立てるジジババ客をしーっといさめるボンズ。
「すみません、少し疲れちゃいました……」
「ああ、少し休むといい」
ボンズから向けられた目くばせにうなずいて答えるマスター。
既にほとんど寝落ちている少女をソファ席に寝かせ、マスターから受け取った毛布を掛けてやる。
「しかしイジメで引きこもってた子がこうも変わるとはねぇ……ボンズ殿の徳の高さかね?」
「俺は大したことはしていない、頑張ったのは彼女自身さ」
カウンターでお互いにビールを傾けながら少女の寝顔を見守る二人。
そこにボンズのスマッフォンに緊急連絡が入る。
「はい、カリューです。はい、はい……巨大なスカルドラゴンが目撃?討伐を?あ、それ俺の同僚なんで無害って報告しておいてください。もう目撃されてないっしょ?ええ、ええ、幻です。本物が出たら改めて連絡ください」
連絡を打ち切ると寝息を立てている少女を振り返るボンズ。まさか野次馬達もあの恐るべき骨龍の正体がこんな少女とは思うまい。苦笑するボンズであった。
【この続きは作者が思いついたら続く】
ドネートは基本おれのせいかつに使われる。 生計以上のドネートはほかのパルプ・スリンガーにドネートされたり恵まれぬ人々に寄付したりする、つもりだ。 amazonのドネートまどぐちはこちらから。 https://bit.ly/2ULpdyL