現代討魔伝:ボンズ ウィズ ディテクティブ そのさん

「『断捨離』の本質をゆがめて広め、金銭目当てにご婦人を煽って家庭の不和を育てたその悪行は見過ごせんな。この場で斬り捨ててやるゆえ地獄で閻魔に媚びるがいい」

時は新世紀!
二次元の嫁をこの手にめとるべく狂人なる天才が作り出したフィックションとリアルをつなげるマッスィーンによって幻想世界と現実世界は結合してしまった!

現実を侵食する幻想より人々を虐げるべくそう定められた使命にて数々の魑魅魍魎と悪魔が迫る!

これは現代を駆け異形を断つボンズの物語である!

※このパルプの登場人物はフィックションでありリアルの奴らとは関係がない重点。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ぜんかいのあらすじ

シブヤのハロウィーンを扇動し、ハロウィーンを滅ぼさんと企んでいたアクマを滅ぼした二人。
二人に届く新たな依頼とは!?

「次のニュースです」

(俺たち近く結婚するんだ)

どちらも眼帯を付けたカップルがインタビューに答えている番組を流し聞きながら黒のケサ・コートをまとったボンズことカリューは新商品だという紅茶とコーヒーの混合飲料をすすっていた。

「マスター、コレいいのか悪いのか俺には判断できんな」
「そうか、香港では親しまれてるそうなんだが……」

カリューよりよっぽどボンズっぽい巨漢のマスターは(改良の余地があるか)とつぶやきながらキッチンに引っ込む。
時間は昼下がり、カリューの相方である探偵は別件で今日は姿を見せていない。依頼があれば受ける手はずになっている。

「たまにはこういう何もない日があってもいい」

残念!これはクソバカパルプだからそういう何もない日というのは基本ないのだ!
平穏を楽しむボンズの所にバーの扉を勢い良くぶちあけ転がり込んだのはミートボールめいた中年のおっさんである!

「御坊!お助けください御坊!」

つかの間の安寧に全力で待ったをかけられこめかみを抑えながら闖入者の相手をするボンズ。

「わかった、話は聞くから落ち着いてくれ」
「はい……」
「マスター、ちっとテーブル席借りるぞ」
「おう」

涙ながらに肩で息をするミートボールをなだめながら席につかせると、ボンズは自身も対面に座る。

「御坊!どうかあの悪魔の番組を調伏してください!」
「まて、まて、すまんが俺はテレビは見ないのだ。事情を話してくれんとわからん」
「わかりました……御坊は『断捨離』を御存じでしょうか」

ミートボールめいた男が息も絶え絶えに吐き出した言葉に険しい表情をするボンズ。

「『断捨離』か、知っているがお前が対処してほしいというのはアレか、最近しょっちゅう炎上してるやつか」
「はい……」

肯定するミートボールについに来たか……という表情で答えるボンズ。

「であればお前も妻辺りに収集品を売り払われたクチか」
「その通りでございます、私が帰宅した時にはコレクション部屋は空っぽで……」

涙ながらにミートボールは諭吉一人分を差し出す。

「これだけが残されておりました。適正な買取価格なら1000万はくだらない、いやお金のことはいいのです。なによりもこの年でコレクションを元通りにする事はもう絶望的なのでございます」

事情を聴き終えると普段は仏頂面を崩さないカリューも流石にミートボールに同情を隠せない。
この男性は人生の大半を費やしてきた生きる支えを踏みにじられたのだ。
これがアクマ的所業でなければなんであろうか。
だが、問題がある。

「話は分かった。しかしその番組の仕掛人がアクマかどうか確証がない。それはわかるな」
「このような外道の行いをアクマ以外がするというのですか!?」
「そうだ、人間とて心無い非道はする。故に調査する」
「……わかりました」

話を打ち明けてようやく落ち着いたのか鼻水をすすりながらうなずくミートボール。

「お前が受けた仕打ちは御仏のお心に反する故、アクマかどうかの調査はただでやってやる。追って知らせを待て」
「ありがとうございます!ありがとうございます!」

テーブルに土下座せんばかりに感謝するミートボールであった。

  ~~~~~場面転換!~~~~~

「カリューちゃんったらまった安請け合いしちゃって」
「金にならんと無視するのもブディズムに反する。それにお前なら依頼人以外から絞り取る算段はあるだろう」
「そりゃーもちろん、俺は慈悲深いボンズと違って探偵なんでね、もらえるものはもらえるとこからきっちりもらいますとも」

二人が向かっているのは大邸宅が多い高級住宅地である。
セージが番組のロケ予定から得られた次のロケ地に向かっているのだ。

「仕掛人がアクマで正直ほっとしてるってもんだ」
「俺としてもタダ働きにならなそうで安心だぜ。つーかブディズムに興味ないからポイントだけ教えてほしいんだが、『断捨離』の何が問題なんだ?」

素で聞いてくる探偵に仏頂面で答えるボンズ。

「『断捨離』自体には問題はない。しかし『断捨離』は『自分にとって不要な物を捨てて心を楽にする』教えだ。つまり」
「今回の駄番組みたいに他人に強要したら悪行って訳か」
「そういう事だ」
「いいぜいいぜ、金の取りどころが見えてきたじゃないの」

気分は上々とばかりに上機嫌になる探偵。
二人の目の前には地域でもひと際大きい邸宅の門があった。

「時間だ、行こうぜ」
「おうよ、相棒」

  ~~~~~場面転換!~~~~~

「ヒエエエエエエエ!」
「オタスケー!!」

探偵の威嚇射撃になすすべなく腰を抜かす買取業者!

「こいつらは利用されてるだけの業者っぽいな」
「俺の調べじゃデカいヤマだから仕掛人にあたる奴も来てるはずだ」
「いるとすればコレクション部屋だな?」
「その通り」
「ならば行くか!」

悪魔以上に悪鬼めいてライトセーバー降魔の利剣を抜いたボンズの前に腰を抜かして逃げ惑う非戦闘員達!

広大な屋敷を駆け抜け二人はコレクション部屋の扉を蹴破る!

「それだけは!それだけは許してくれ!」

そこにいたのは買取業者に縋る館のあるじである老人!あるじの姿を愉悦の顔で見捨てる老婦人!そしてモノクルを着けた長身の紳士だ!

「そこまでにしときな、おいたが過ぎるぜ。ソロモン72柱序列40番、ラウムさんよ」
「『断捨離』の本質をゆがめて広め、金銭目当てにご婦人を煽って家庭の不和を育てたその悪行は見過ごせんな。この場で斬り捨ててやるゆえ地獄で閻魔に媚びるがいい」

バニッシャーの恫喝を涼しく笑って流すモノクル!一方想定外の暴力の乱入にそろって腰を抜かす老夫婦!

「おや、こんなケチな悪事に態々首を突っ込んでくるとは暇な人達ですねぇ」

モノクルの号令で正体を現し二人に襲い掛かるネズミ型アクマ!いい的の様に強制成仏弾がめり込んでいく!

「セージ!ここの主人達とコレクションに当たったら事だぞ!」
「わかってるってぇ!」

おお、なんたる精密な射撃か!セージは円を描くようにネズミアクマを誘導すると分厚い壁を背にさせ射殺していく!主人達とそのコレクションには一滴の血すらかかっていない!

「ふむう、買取対象が傷ついても困りますね……場所を変えますか」

モノクル紳士が指を鳴らすと辺りは暗転し暗黒の牢獄へと変わる!
アクマとバニッシャーの一騎打ちだ!

「自分で処刑場を用意するとは殊勝だな」
「態度だけは誰も彼もデカいですね、現実側の人間は」

おお見よ!すでにそこにはモノクルの紳士ではなくカラス頭のアクマが立っている!
挑発に乗らず大上段から斬りかかるカリュー!斬撃を横にいなしボンズにひじ打ちを見舞うアクマ!それをさらに引き戻したライトセーバー降魔の利剣で防ぐ!なんたる極小銀河のごとく目まぐるしく入れ替わる攻防か!

「流石にソロモン王の大悪魔ともなれば斬って割ってはいおしまいとはいかんな」
「あんまりいちゃつかれると流石に誤射するんだが!」
「あいよ!」

10合!20合!30合!一分もたたぬうちに激しく打ち合うボンズとアクマ!
あたかも巨大サイ殺戮トラクター同士が衝突するかの如き打撃音がとどろく!打ち合いの合間に強制成仏弾が撃ち込まれるがあたかもパチンコを受けとめるがごとくいなされる!

「まさかこの程度の実力でこのラウムを狩りに来たなどとはいいませんね?」

暗闇の牢獄が一転して黄金の宝物庫に代わる!天井に張り巡らされたのは金色の武器達だ!それらは際限なく降り注ぎ二人を串刺しにせんと襲い掛かる!

「おい、舐められてるぞ。たまには俺にばっかり大技出させてないで自分でやったらどうだ!」

金色の凶器をはじきながら抗議するボンズ!
抗議を受け避けながらタブレットを涼しく操作する探偵!

「おうとも!来たれソロモン72柱序列8番!バルバトス!」

探偵の呼びかけに応じ召喚されたのは灰色のマントに緑の帽子をまとった異形の狩人である!
カラス頭のアクマに無数の猟銃を向ける狩人!

「バカな!何故貴方がこのような人間に……アバーッ!」

動きの止まったアクマに途切れなく退魔の銃弾が撃ち込まれる!

「すまんな、本当にすまん。オレが使われてるのはシンプルな理由よ、この方がオレ達よりも強い。それだけだ」
「バカな、バカな、バカなー!」

かつての同胞の銃弾を受け慟哭するままに宙より落ちるカラスアクマ!

「南無……散!」

ボロクズの様になったカラスアクマをカリューがボンズシャウトと共に一閃!

斬撃を受けた後には無数の烏の羽根だけが舞い散っていた。

南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏……

  ~~~~~場面転換!~~~~~

「知らせを受けてきたのですが、その後どうなったのでしょうか」

数日後、いつものバー「涅槃」にて。
知らせを受けて現れたミートボールの前には大量の段ボールが積まれていた。

「開けてみな、どれでもいいから」
「はぁ……」

状況が呑み込めず、探偵に促されるままに段ボールを開けるミートボール。
そこには……

「おお、おお……!」

なんと、とうに業者に売り払われたはずのミートボールのコレクション達だ!

「あんた、運が良かったぜ。業者がもたもたしてたから買い手がつく前に不当な買取だったって事で取り戻せた。依頼を即受領したカリューに感謝しな」
「御坊!まことに、まことに感謝いたします!」
「あいよ」

興味がないのか、照れ隠しなのか、カウンターに向かったままぶっきらぼうに答えるボンズ。
ミートボールは何度も頭を下げながら段ボールを回収して去っていった。

「悪事の内容からもっとケチくさいアクマだとふんだんだがなぁ、ユキチ1枚じゃわりに合わん」

ブディズムの実践とは言えあまりに少ない実入りにぼやくボンズ。

「と、思うだろ?今回犠牲になりそうだった館の御主人からは秘蔵のコレクションを守ったって事でたっぷり謝礼受け取ったし、テレビ局からはアクマが番組作ってたってことの口止め料をたんまりもらったぜ」
「Oh…一番のアクマお前なんじゃねーの」
「おいおい、アクマじゃねーぜ?大分人間やめてるけどな」
「あんまり行き過ぎるなよ、と。ま、ただ働きにならず重畳重畳」

カカとして笑う探偵とボンズであった。

【この続きは作者が思いついたら続く】

#小説 #逆噴射プラクティス #パルプ #ボンズ #怪奇小説

ドネートは基本おれのせいかつに使われる。 生計以上のドネートはほかのパルプ・スリンガーにドネートされたり恵まれぬ人々に寄付したりする、つもりだ。 amazonのドネートまどぐちはこちらから。 https://bit.ly/2ULpdyL