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BWD:悪魔狩りの夜に 続き

(人間、人間だと?)

首魁のアクマは未知の不快感に身を震わせ、しかるのち憤怒に思考を染めた。目の前の男からは神通力も魔力も感じられない、すなわち本当にただの人間なのだ。それが藪こぎめいた作業感で配下のアクマ共を瞬く間に惨殺した。この様な理不尽を許すほど首魁アクマは寛容ではなかった。

両手をだらりとさげ、構えらしい構えすら取らない男に首魁の右側に座した複眼多翼の烏アクマが無数のミサイルめいた黒羽を撃つ!だが遅い!男は無造作に手にしたククリナイフをブーメランのごとく投げつける!黒羽ミサイルごと烏アクマの頭部を刎ね飛ばす!

「グェー!」

下半分だけ残ったクチバシで阿鼻叫喚の叫びをあげる烏アクマ!そこへ男が投げ放ったマシェーテが烏アクマの核に突き立ちぶち砕く!完全に絶命し痙攣する烏アクマ!

男が素手になったのを好機とし、五つの魔眼からビーム閃光を放つアメーバアクマ!オフィスルームが禍々しい紫に染まる!魔道ビームを受けて湾曲し砕け散るデスク!だがそこに男はいない!

「ミギャ」

閃光が収まった時、男が居たのはアメーバアクマの目の前だった。第二射を撃つ前にアメーバアクマの魔眼は五つともそのスライム状の肉体からえぐり取られ床に投げ捨てられていた。致命的な扱いを受けたアメーバアクマは弛緩し溶けたアメの様に床に広がった。

再び首魁と男の意識が交わる。理不尽なる暴力の化身じみた男は家畜を屠殺するほどの感情さえみせずに首魁たるアクマの前に歩み寄ってきた。なによりあろうことか、

「つまらん」

面前で吐き捨てられた言葉は発生して以後畏怖の感情を向けられてきた首魁にとって理解を越えたものであった。怒りのままに男の命を奪わんと宵闇にそまった呪霊を差し向ける首魁アクマ。

「アッガ……ッ!」

呪霊が男を取り囲まんとするも置き去りにされ、首魁アクマの胴部に男の手刀が突き刺さった。そこから首魁の腕を無造作につかむと男は雑に背負い投げる!首魁の肉体は魂を置き去りにオフィスの床にたたきつけられ、数階ぶち抜くクレーターを生じた!言葉にならぬ苦鳴をあげ、首魁の肉体が即席のミンチ肉と化す!

「バカな、こんなバカげた事があってたまるか……!」
「邪魔な神を始末してきたのはいつだって人間だからな、経験してないか?」

駄々っ子を煽るような小ばかにした口調で肉体を捨てて怨霊めいた姿を取った首魁アクマを煽る男。

「否、断じて否!ワレコソは冥府の王!如何なる者もワレのかいなから逃れる事は出来ぬ!」
「ふぅん。で?」

複数階崩落してただ広い空間となったビルを埋め尽くす様に黒雲のごとき姿を広げブラックホールの様にアギトを開く首魁アクマ!

「貴様を喰らい我が糧としてくれる!」
「ありきたりなヤロウだ」

サメめいてしかし不均一な牙がジャングルの様に生えたあぎとが迫りくる!
しかして男は迷いなく腰に差した刀を抜刀した。それは恐るべき一撃であった。

「……!?!?!?!!!?」

必殺を期して見せた首魁の本性は意味をなさなかった。

ずるり

めいかくなかたちを既に失っていたはずの首魁の霊体はビルごと斜めに両断され、支柱をぶった切られたビルはその身を支えきれず上部が前面の道路へと落下していった。

風に洗われるようにかき消されていくアクマの名残に男はわずかに眉をしかめる。

「……逃げたな」

未だ首魁のアクマが存在を維持していることを知覚すると、男は完全に根絶し滅ぼすべく追跡を開始した。

【BWD:悪魔狩りの夜に 終わり 別エピソードへと続く】

#小説 #逆噴射プラクティス #ボンズウィズディテクティブ

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