幸せと言う名の飴玉 #幸せをテーマに書いてみよう
「シショーが言うにはさー、幸せって飴玉みたいなもんなんだってよ」
「へぇー……でもそれだけじゃよくわかんないよ」
夕日が差し込む高校からの下校途中の道。俺は横を歩くアユミに対して、渋々ながら聞かれた事に答えてやったんだ。幸せってなんだろうねって。
だってのに、アユミときたら追加の説明が必要ときた。いつもの事だから良いんだけどさ。
「飴玉ってのはさ、いつか無くなっちまうじゃんか。舐めるにしてもなくなるし、眺めてるだけにしても、溶けていっちまう。あるいはアリがたかるとか」
「幸せにもアリってたかるの?」
「そりゃあ、それっぽい事はあるんじゃねーの?」
アユミのちょっとずれた質問に嘆息する。
でも俺もシショーに対してもっとずれた質問をしたので、コイツの事は実は笑えない。
「だから、永遠に持っていたいって思っても、結局はどっか行っちまう」
「それでそれで?」
「急かすなよ、こっからが大事なんだから」
せっついてくるアユミはいつの間にか、こっちの手を握っていた。
別に、手をつなぐのを拒む理由とかはないんだけどな。こっちにも。
ただちょっと恥ずかしい気がするってだけだけど、どうせこんな過疎った道に通りすがる奴なんていないんだ。
「シショーが言うには、飴玉も幸せも、手元にあるうちに納得行くよう味わいつくせ、だってさ」
「ふ~ん、それじゃあ、さ」
アユミは手を離すと、いつもの様に何考えてんだっかわっかんねぇ微笑みと共に俺の前に立って問いかけてきた。
「ボクの事は、いつになったら舐めてくれるの?」
「バッ……!」
とんでもない事言い出すアユミに向かって、反射的に拒絶しそうになった俺の脳裏に、シショーの追加の教えがフラッシュバックした。
『だがよアキラ、幸せなんてのは手元に転がって来るだけ幸運なんだぜ?俺なんざこの年まで、幸せっつー幸せなんて味わったこともねぇな。だからお前の人生に幸せって奴が転がり込んできたら……どうするかはさておき、しっかり捕まえておくんだな』
その時のシショーの顔ときたら、言葉の意味以上に心底呆れた、うんざりしたという代物だったんだ。それが俺を思いとどまらせた。
「気っ、気が向いたらな!」
「えへへ~、アリさんよりは先に、ね?」
「……わーったよ、わかった」
ぶっきらぼうに答えた俺の手を、アユミは迷わずつなぎ直すとまた元通りに通学路を二人並んで歩きだす。
「しっかり捕まえとけ……かぁ」
「なぁに?」
「なんでもねぇ」
そっぽ向いて、アユミの手をしっかり握り返す。
家までの道は、まだまだ長いんだ。
【幸せと言う名の飴玉:終わり:1036文字:冊子内容ここまで】
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疲れていると、幸福感と言うのは実感できない物。
そういう時は何はなくとも適度に休みましょう。
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