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診断メーカー「クリスマスイブ」

※診断メーカー「あなたに書いて欲しい物語」
https://shindanmaker.com/801664
※お題「探し物はここにあるのに」から始まり「あーあ、言っちゃった」で終わる。980文字以内。
※『囀る』二次創作(pixivにも掲載中)

探し物はここにあるのに、百目鬼(どうめき)は何気ない風を装い自分の机の引き出しを一つ一つ探している。
さっき、煙草を探して何気なくアイツの机の引き出しを見たら、プレゼントらしき包みを発見して、何だこりゃ、と見ていたら七原が駐車場から戻ってきたので、咄嗟にポケットに隠した。他の社員も次々出社してきて、出すに出せなくなっちまった。
そこで気がついた。今日は12月24日だ、しかも今年は金曜日。
百目鬼が出社してきて、さっき俺が見た引き出しを見た後、探し物を始めた事で俺は内心、可笑しいやら焦るやら。…ポケットの中の包みを触る。コレどうすっかなあ。

「頭(かしら)、これ、毎年恒例の物です。社員一同代表しまして僭越ながら俺が」
昼休みの終わりに七原が箱に入った何かを恭しく俺の机に置いた。
俺はすっ惚けて答える。
「あーそんな時期か。何?ウイスキー、へえ旨そう」
「賞与に色つけて貰えるようここは一つ、お願いしたいな、と」
「俺が今日、家に帰ったら冷蔵庫に氷と炭酸水とツマミが用意してあるとこまでセットだよな?」
「…当然っす」
七原が深く頷いた後ろで、杉本が静かに席を立って事務所を出て行く。

ヤクザにXmasも無いだろうと思うが、事務所からは速やかに人が減ってゆく。七原同様、今日だけは女にサービスする日なんだろう。特定の女がいない筈の杉本さえ、妙にソワソワした様子でさっさと退社していった。事務所は百目鬼と俺の二人になった。俺の部屋を出てがらんとしたフロアに行くと百目鬼は顔を上げた。
「お帰りですか」
「皆、今日は女と宜しくヤル日って訳だ。…お前はどうすんの?今晩泊まってく?」
「…はい」
百目鬼の耳が赤くなる。週に2、3回は俺ん家に泊まるのに、未だにコイツはこういう感じだ。そのまま言いにくそうに言葉を続ける。
「…あの…」
俺はポケットから包みを取り出した。百目鬼の目が丸くなる。
「ごめんなー。朝、見つけてさぁ、他の奴が居たから咄嗟に隠しちゃって」
「…意地悪ですね」
百目鬼は俺を引き寄せて抱きしめた。職場では公私の区別をつけるべきとか何とか、いつもすましてるコイツが…思わず動揺する。
「なあこれ、何?」
照れ隠しに百目鬼を押しのけて包みをかざす。
「指輪です」
百目鬼の答えに顔が熱くなる。う、ヤバい、この流れは。
「結婚して下さい」
あーあ、言っちゃった。

(979文字)

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