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夢みる猫は、しっぽで笑う【転】

※この作品は、拝啓 あんこぼーろ様と闇夜のカラスとの共同四部作(※予定) 
プロジェクト【起承転結】の【転】です。

闇夜のカラス→【起】&【転】担当
拝啓あんこぼーろ→【承】&【結】担当


……ぶくぶくぼこ……ぶくぼここここ……

 駅前のホームセンターの入り口にある大きな水槽を覗き込むと、目の前を金色の小さな魚が泳ぎ過ぎる。ヒラヒラリと閃く魚達と、立ち昇る銀色の泡の向こう、水槽の水を透かして鮮やかに煌めくクリスマスツリーが見える。
 学童からの帰り道、冬場は夕方でも、辺りはすっかり暗い。

 私は視線をツリーから、駅前の商店街に向ける。洋菓子のお店の前には、クリスマスケーキが積まれた台が設置されていて、台の後ろに立つお菓子屋さんの店長、夢路(ゆめじ)さんと目が合う。サンタの格好をして、胸まである白い付け髭をつけた夢路さんは、ちょっとふくよかな体型のおじさんで、まるっきりサンタそのものだ。夢路さんは私を手招きした。
「菜花ちゃん、おかえり」
「ただいま。夢路さん、めちゃくちゃ似合うねぇ!ホンモノみたい」
「よく言われる〜。ここでちょっと待ってて」
 夢路さんは店に入ると、すぐにケーキの小さな箱を持って戻ってきた。身を屈めると、小声で
「これね、ちょっと形崩れちゃったケーキなんだけど、味は同じだから。持っていって。チョコのやつ、好きでしょ? お母さんと食べな」
といって渡してくれる。
「いいの?!……ありがとうございます」
「他の人にはナイショね」
夢路さんはニッコリ笑って小さく手を振った。私も手を振りかえし、ケーキの箱を大事に持って、家路につく。

 鍵を開けてアパートに入り、しっかり施錠を確認すると、暗い居間の電気をつけた。小さなテーブルにケーキの箱を載せて、ランドセルを降ろし、電気ストーブのスイッチを入れる。
 踏み台を持って来て、部屋に干されている洗濯物を取り込む。居間の床に積まれた洗濯物をひとつひとつ畳む。それが終わると、冷蔵庫の晩御飯を食べようか、それとも先にケーキ食べちゃうか、迷う。
『お母さんと食べな』
ごめんね夢路さん。せっかくのケーキなんだけど、お母さん、今日は帰れない仕事の日なんだよね。

──── 忙しいから。
長距離トラックの運転手は。クリスマスと年末は、特に。

……お母さんが忙しいのは、良いことなんだ。それだけお金が儲かるって事だから。うん、分かってる。よーし先にケーキ食べちゃおう。うわぁケーキなんて超久しぶり!
 台所からフォークとお皿、果物ナイフを持ってきて、慎重にケーキの箱を開ける。ちょっと斜めに傾いた、小さいチョコのホールケーキ。果物ナイフで四等分にする。そのうちの一つをお皿に載せて。フォークで掬って、一口。あまーい!美味しい!

 リモコンを取り上げてテレビをつける。電飾で彩られた街を沢山の人が行き来する映像。ケーキを味わいながらそれを暫く見た後、チャンネルを替える。
 CMを眺めていると、心が彷徨いだす。前回、ケーキを食べた時のこと。そうそう、あの……

おばさんがウチに来た時。

 あ、いけない。心がひゅっと小さく固まるような気がしたけどもう遅い。
 一年生の私はケーキを食べた後、居間の隣の部屋で昼寝をしていて。背中からおばさんと、お母さんの声が聞こえてくる。
「……早い方がいいの。将来の事も考えたら、良いお話なのよ、分かるでしょ」
「まだ……あの人が亡くなって三年だし、そんな気になれないな」
「中々無いわよ、お子さん居ても大丈夫って言ってくれる方は。こういうのは、子供が大きくなるとどんどん良い話無くなるから」
「しっ。姉さん、声が大きいってば……」

 居間とこの部屋を隔てる襖がそっと空いて、お母さんが私の様子を伺っているのが分かる。私は居間に背を向けて、一生懸命に寝たふりをする。

 何も分からない子供のフリをして。

 グッと歯を噛み締めて、口を固くつぐんで、声が漏れないように、涙を堪える。


……私が居るせいで。
……お母さんは幸せになれない。
……私が居るからお母さんは忙しくて大変だ。


知ってる。分かってる。

……私は…………わたしが……


消えたほうが。


「なのはっ!!!!」



 私はビクッと驚いた。居間のテレビ画面いっぱいに『はたらく魔法省』のコメットの顔のアップが映っていて、カンカンに怒って叫んでいる。あれ?今、なのはって言った?
「バカ菜花!しっかりして!ホラちゃんと周り見なさいって!よおく見て!」
 一瞬で居間の情景は深いラムネ色の水中に溶けて消え、目の前を小さな魚が泳ぎ過ぎてゆく。金色の魚の表面には『ジタバタ』とか『へなへな』とか、漫画の擬音みたいな言葉が浮かんでいる。
 私のすぐ上を、服を着た黒い猫が怖い顔をしてこちらを睨み、尻尾をぎゅんと伸ばして私の右手を掴んで引っ張った。右手は人間の腕じゃなく、細長い半透明のヒレになっていて、私はギョッとする。慌てて身体を見下ろすと、首から下が黄色い魚に変わっていて、足は大きな尻尾になっている。
「ついて来て!」
 コメット、いやドリちゃんが尻尾で私を引っ張りながら上に向かって泳ぎ出した。私は驚きすぎて、呆然としながら、それについて泳ぐ。これ人魚……いや、腕もヒレになってるしどっちかというと人面魚……。

 バシャ!と飛沫をあげて、ドリちゃんと私は水面から顔を出した。そのままパラソルとロッキングチェアに向かって泳いでいくと、お腹が、次いで尻尾が、地面に触れる。ドリちゃんが尻尾を離したので、私は両手……にあたるヒレを砂地の地面に踏ん張って、ずりずりと身体を引きずりながら、パラソルの下まで這い進み、力尽きて仰向けに寝転がった。
「もぉ〜何これぇー可愛くない……人魚ってこんなんじゃないじゃん。思ってたんと違うぅ」
 ロッキングチェアに腰掛けたドリちゃんは、足元に寝そべる私のお腹を軽く足で踏んだ。ぶぎゅる、と肉球が鳴った。
「ほーんと贔屓目に見ても打ち上げられた巨大な鯛焼きってトコねぇ」
「……こめん。深いトコ行っちゃダメって言われてたのに。なんか、ぼーっとしちゃって」
 私はドリちゃんの、深い不思議な水色の瞳を見上げた。
「ねえ、あのままだったら、私、魚になっちゃうとこだったの?」
「たぶんね」
「魚になったら、私、どうなってたの?」
 ドリちゃんはちょっと黙ってから、口を開いた。
「アタシも断言はできないけど……この世界の一部になっちゃうんだと思う」
「世界の一部に……それは元いた所に戻れなくなるってこと?お母さんにも会えなくなるってこと?……そう、なんだ」
 お母さんの顔が思い浮かんで、消えた。ドリちゃんはしゃがむと、私のお腹をスポンと叩いた。
「大〜丈夫!何のためにアタシがここに居ると思ってんの。さあ、早く自分の身体を思い出して!!元に戻ったら戦闘服に着替えるからねっ」
 薄いヒレになっていた腕は、みるみる色と質感を備え、見慣れた人間の腕に戻った。上体を起こして体を見渡すと、いつの間にか黄色い服を着たヒトの身体に戻っている。
「ボレロが無い……」
「アンタが沈んで行った時、脱げたの見えたけど、拾ってる余裕が無かった。まあ、ここで着替える予定だったから。諦めて」
「……」
 私は立ち上がり、湖の表面を見渡したけど、それらしいものは浮いていなかった。
「お気に入りだったのになぁ」
「いずれどっかで出てくるわよ。ここはアンタの夢の中だって言ったでしょ。さ、これに着替えて」
 見ると、ドリーマーの手には服が載っていた。どこから出したんだろう。聞いても答えないんだろうな、きっと。
 私は溜息をつくと、びしょ濡れのワンピースを脱ぎはじめた。

 着替えた服はドリちゃんの服によく似ていた。ポケットが沢山付いたツナギ。ドリちゃんのは濃い青と緑が混ざったギンガムチェックだけど、私のは黄色とオレンジ色のチェックで、白いレースの襟部分はお揃いだ。そういえば、タイツと靴も、いつの間にか消えている。
 私は濃い紅色のボディーバッグを斜めがけし、パラソルの下にあった新しい赤いスニーカーを履いた。ハンマーを手にしっかりと握り、もう片方の手に脱いだワンピースを抱えて、ドリちゃんに尋ねてみる。
「これどうしようか」
 ドリちゃんは私から服を受け取ると、おにぎりを握るみたいに両手でギュギュッと握り潰してゆく。手の中で縮んでいったそれは3㎝くらいの黄色いボールになった。ドリちゃんは少し離れた場所に歩いてゆくと、足元の土を掘って、それを埋め、また土を戻した。
「何やって」
「しっ!」
 ドリちゃんが人差し指を口にあてる。と、服を埋めた場所から小さな芽が出てきた。早送り映像みたいに、ニョキニョキと葉を広げて背を伸ばし、2メートル位に伸びると、先がみるみる膨らんで、大きな蕾になった。
「すっごい……」
 呆気に取られて見ていると、重そうに垂れた蕾がゆっくり開いて、中から何かが溢れた。私はとっさに受け止める。

金色に煌めく小さな鍵だ。

「それは大事な鍵。心臓の上のポケットに入れておいて」
 ドリちゃんは厳かな様子で告げた。私は言われた通り、左胸の蓋つきポケットに鍵を入れ、ポケットのボタンを閉めた。

 ドリちゃんはボディバッグから、銀の蓋がついた懐中時計みたいな物を取り出した。手のひらに載せ、軽い音をたてて蓋を開くと、中で銀色の盤面に青い一本の針がくるくる回っているのが見えた。コンパスだ。
 針の回転速度が遅くなったと思うと、唐突にピタリと針が止まる。ドリちゃんは右斜め前の方向に向き直った。
「こっちね」
 先を見渡すと、白い花が咲き乱れた草原の向こうに、ピンク色の巨大なキノコの林があって、そのずっと先には、細長い塔のような岩が何本も並んでいるのが、霞んで見える。ドリちゃんはキビキビした調子で
「まくってくわよ!その靴、特殊アイテムだから。ホップステップジャンプで。アタシに合わせて動いて」
「えっ?」
ドリちゃんは、私の左手を掴むと駆け出した。走りながら
「いーくよぉーー……ホップ!」
 ドリちゃんとタイミングを合わせ、まずは片足でジャンプ!ぐうん、と身体が大きく跳ねて、三メートル位先に着地した。さらに数歩走って
「ステーーップ!」
 次は反対の足でジャンプ!さっきの倍は高く飛び跳ね、私は空中で駆け足をしながら着地し、その勢いのまま思いきり踏み切った。
「ジャーーーーンプっ!!」

 ビュルウウーと耳元で風を切る音。私とドリちゃんはぐうんぐうんと風のスピードで空中を飛んでゆく。まるで巨大なバッタになったみたい!凄いスピードで眼下を地面が飛び過ぎてゆく。
「すぅーーーーごーーーーいっ!なぁにコレぇーーーーちょーーきもちいーーーー」
 私は叫んだ。口の中にゴウと風が吹き込んで喉から抜けてく。やがて地面が近づき、走りながら着地をすると、次のホップステップジャンプは、もっともっと高く、ずうっと長かった。
 私たち風になってる!
 隣を見ると、ドリちゃんも、ツナギと黒い毛皮をなびかせて、気持ちよさそうに笑っていた。



「上条さん、稼働中のドリーマー、点滴替えました。あと385番適合です。明日、患者に説明して、早ければ午後から稼働開始になりそうです」
 この病院に勤務するもう一人の飼育員、中川遊馬(なかがわあすま)は、特別室に戻ると、防護服のマスクを外し、キャップを取った。パソコンにカルテを打ち込んでいた上条は、そのままの姿勢で彼を振り返る。
「ありがとう。これで同時稼働は六頭目か。最高記録じゃないか?」
「稼働率が上がるのは良いことですけど、これ以上、同時稼働が増えると、二人で廻すのは厳しくなるかもですねぇ」
「そうだな。……中川君、今のうちに飯食っときなよ」
「はい。上条さんは」
「済ませた」
 中川は防護服と手袋を丸めるようにして脱ぐと、専用のリサイクルダストボックスに放り込んだ。手を洗うと、自分の机に置いてある鞄から弁当箱を取り出して、食べ始める。

 食べながら中川は、隣の机の上にある、プリントした紙の束に気がついた。英文にはアンダーラインがひかれ、沢山の付箋が挟まっている。
「それ、こないだの学会の論文ですか」
 卵焼きを頬張りながら中川が聞くと、上条はパソコンの手を止め、紙の束を取り上げてパラパラとめくった。
「そう……ヨーロッパでもアジアでも、ナイトメア病は増え続けてる。ペースは緩いけど、ドリーマー以外の治療法は未だ無いし、ドリーマーを保有できない国の人々にとっては脅威になりつつある。生体は中々増えないし、適合率も横ばいで……」
上条はため息をつく。中川は考え込むように
「ドリーマー生産の特許を公開すれば、って話もありましたけど、維持管理に手間も金もかかるし、適合率も上がらないし、あんま現実的じゃないっつか、やっぱ病気の原因を特定するのが先ですよね。……最も、薬ができちゃったら、俺たち失業ですけど」
 上条は席を立ち、待機中のドリーマーが眠るケースを覗き込んだ。
「ドリーマーの能力は、まだまだ未知数だから。脳科学の分野で需要は続くと思うよ。ナイトメア病だけじゃなく、精神疾患でもいずれ力を発揮すると思う。その研究も進んでる」
 上条はD-0388と刻まれた空のケースを眺めた。
「あのう……上条さんって、子供の頃、ナイトメア病から生還したってホントですか?」
 上条は振り返って中川の顔を見た。中川は幾らか慌てたように
「すみません、こないだ飲み会で聞いて、気になって。あの、無理に話さなくても」
「本当だよ」
 上条は落ち着いた声で応え、言葉を続けた。
「僕は助かって、その時のドリーマーは、死んだ」
 中川は口の中身をごくりと飲み下した。ポケットの携帯が鳴り、上条は取り出して耳元に持っていく。その顔が厳しくなった。
「……すぐ行きます」


 ぶおん!!
 私の振り回したハンマーから竜巻が生まれて、風の渦の中に見える青く光る星が、行手を阻む黒い影絵の木をしゅわわわ〜と溶かしてゆく。森の木々が慌てて道を開けたところを、私とドリちゃんは走り抜ける。

 森の先が明るくなってきた時、私達は立ち止まった。薄い緑色の太くて頑丈そうな糸が、通路を塞ぐように、幾重にも張り巡らされている。ドリちゃんはシャキン!と手の先から長くて鋭い爪を出して、糸を薙ぎ払った。糸は切れず、ドリちゃんの爪にべっとりくっつく。
「……!?っギャア!きっもちわるっ!!」
 ドリちゃんは心底嫌そうに顔を顰めながら、それでも手を止めず、糸をかき分けて進んだ。糸を伝って、上の方から緑色に光る巨大な蜘蛛が滑るようにこっちに近づくのが見え、思わず悲鳴をあげる。
「ヤダあー蜘蛛!!でか!キモっ!ちょっドリちゃん何とかしてっ」
「忙しいの!アンタがやんなさいっ」
「えーーっ」
「イメージ!!教えたでしょっ」
 私は力一杯、ハンマーを振り回した。ごうっと青い星が風を巻き上げて蜘蛛に当たったけど、数秒、怯んだだけで、また蜘蛛はこちらに近づこうとする。効いてないじゃん!私は泣きそうになる。
「必殺技とか、呪文とか無いの?!」
 ドリちゃんが息を切らしながら喚いた。呪文?!えっとえーっと……ハンマーヘッドを蜘蛛に向ける。
「あ、アナナス!バナナス!プラタナスっ!」
 ハンマーヘッドから赤い光が迸り、稲妻になって蜘蛛を貫いた。蜘蛛は、すぱぁんと音を立てて弾け、小さな沢山の緑色の蝶になって、糸の間を飛び去っていった。
「よしっ、これでラストっ!」
 ドリちゃんは最後の糸を払うと、私の手をとって、森を駆け抜けた。視界が開けたと思ったら、その先の空は星が無数に瞬く夜で、私は星のあまりの多さに圧倒される。

 暫く走っていくと、ドリちゃんは立ち止まった。私は途切れた道の先を覗き込む。ここから先は深い崖になっていて、ずうっと下のほうに、一面の黒い森で覆われた地面が続き……その先に聳え立つ何かが、見えた。

 そこだけ、赤黒い雲が渦巻く不気味な空の下。ときおり閃く紫の雷光に照らされて、西洋のお城みたいな建物が立っている。いかにも魔王の城!って感じ。これ、見たことある。これは……
「『はたらく魔法省』に出てくる、ラスボスのお城だぁ」
 私は呟いた。ドリちゃんはコンパスを取り出した。針はハッキリと城の方角を指し示している。
「……最後の試練ってわけ。あそこにあるのね、この世界の出口が」
 ドリちゃんは一瞬、厳しい顔をした。それから私の顔を見て
「ラスボスってどんなの?」
と聞いた。
「魔王。……相手を石にする魔法を使ってくる。名前は夢道(ムドー)」
「お約束」
 ドリちゃんは右膝のポケットから何かを取り出した。差し出されたそれを受け取る。直径2㎝位のこんぺいとうで、中で不思議な色がチカチカ光っている。指でつまんで、覗き込んだ。
「きれーい……」
「食べて」
 ドリちゃんは自分の分を口に放り込んだ。もぐもぐ、ごくん。ドリちゃんの身体をふわっと薄い光が包む。食べるの勿体ないけど、私も思い切って口に入れた。甘くてスッとする、ソーダ味。忽ち溶けて、飲み込むと、疲れがひいて身体に力が漲ってくる。

 ドリちゃんと私は顔を見合わせて頷いた。
そう……イメージ。ここは、私の世界。

城へ行く方法は、もう分かっている。

 私はハンマーヘッドを上にして、ハンマーを構えた。赤いハンマーヘッドに口を当てて、強く息を吹き込む。聞き覚えのある旋律がそこから流れ、いんいんいん……と、辺りに響きわたる。

 程なく、後ろの空から羽音が近づいてきた。大きな生き物は、私達の上に飛んでくると、高度を下げ、近くにズズンと着地した。地面が震え、風が巻き上がる。
 赤銅色に輝くドラゴンが、赤い眼をこちらに向けた。
 私とドリちゃんはドラゴンに飛び乗った。ドラゴンは身体を城の方向に向けると、大きな羽根を拡げて、その場でゆっくりと羽ばたき、フワリと浮き上がった。そのまま、空中を滑るような優雅な動きで滑空してゆく。

 ドラゴンの羽ばたきにうねる背中の筋肉を感じながら、私とドリちゃんは風を切って、前方に聳える不気味な城へと飛んでゆく。
「ヒゲを洗ってまってなさいよお!!」
 ドリちゃんはコメットの決め台詞を叫ぶと、不敵に笑った。



【転】完

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あうあうあう……長くなりすぎちゃった?!
大明神様あんこ様、【結】お頼みもうします〜!

この物語の前のあんこぼーろ作【承】のお話はこちら!
ふんわり柔らかい色合いのすってきなヘッダーとってもかわいい。羨ましいぞ〜……↓


この物語の原案になった記事、イシノアサミさんの素敵ワールドはこちら!↓


プロジェクト起承転結の……明日が見えてきたっ!!

乞うご期待〜でございます!
次はいよいよ最・終・回。

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