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夜、祈る【短編小説】

「赤ちゃんできたかもしんない」
 凛世(りぜ)は硬い声でそう言い、俺はコーラを啜った状態でフリーズした。情けないほど何も言葉が浮かばない。目の前にオムツのCMに出てくる赤ん坊の姿がよぎり、心臓がやかましく鳴り出す。ゴクリと口に含んだ炭酸を飲み下した。

 辺りは家族連れや子供達のグループやカップルで賑わうフードコートで、中庭に設置されたテーブルと椅子のセットに俺達は座っている。俺と凛世のテーブルにはハンバーガーショップのトレイと紙袋、中にはバーガーの紙ゴミ。晴れた日のショッピングセンターのお昼どき、テーブルセットに囲まれた人工柴の中庭では小さい子供が走り回って「The平和」って感じの風景。その中で俺たちの周りにだけ、目に見えない固くて重い空気の壁があって、俺は突然それに気づいたように息苦しくなる。

「何で。ゴム無しでヤったことないじゃん」
 おいおい第一声がそれかよ。内なる俺がツッコむ。俺と彼女はゲームアカデミーという専門学校に通っていて、二人ともゲーム会社から内定を貰って一安心、来年からは社会人だ。
 ただ別々の会社で俺は東京に、彼女は大阪に、入社後は勤務することになる。でも希望の会社に就職が叶い、未来は期待と希望に満ちていて、それに比べたら二人が離れることは俺にとって些細な事だった。会おうと思えば会える。新幹線も飛行機もあるし、スマホで毎日連絡も出来る。それに、まあぶっちゃけ。これから出会いもあるだろうし?なるようになるんじゃね?
……てのが俺の正直な心情だった。

 凛世は俺をじっと見つめた。
「避妊してても百パーじゃないらしいよ。精子って精液の中だけじゃなくて」
「おい、声でかいって」
「いいじゃん別に誰に聞かれたって。何、狼狽えてんの。妊娠って、ヨッシー的には恥ずかしいことなわけ?」
「恥ずかし……くは、ないけど、そりゃ狼狽えるわ。……もう調べたわけ? えーと検査するヤツとかで」
「まだ」
 俺は少しだけ息を吹き返す。まだ確定じゃない。
「早く調べた方がいいんじゃね」
「どうして?」
「どうしてって……」
「中絶するなら早くしないと。そういう意味?」
「そんなつもりないけど」
「じゃあどんなつもりなの」
「…………」
 胃が締め付けられるような沈黙が続く。俺は意識してゆっくり呼吸しながら、少し離れた場所から自分達を眺める想像をする。向かい合って座る、見た目フツーの、何なら幸せそうなカップル。けど見えない部分で何かが決定的に変わろうとしている。いや多分、変わった。いまここで。彼女は大きなため息をついた。
「時間が要るよね……考えてくれる? 私も考えるから」
「何を?」
 凛世は立ち上がりながら「これからのこと」と言った。

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 いま、学校では卒業制作が進んでいる。
 俺たちは十人グループで動画を一本作る事を目標にしている。俺はキャラクターのモデリング(成形)とモーション(動き)。凛世はプログラム。
 幸いなことに俺らは全員、どこかに内定していたので、提出物のデキはどうあれ、留年はほぼ無い。でも、このメンバーで作る最後の作品だし、卒業制作展は一般に公開され、在校生徒の家族だけじゃなく、学校に興味を持つ高校生も観に来る。凄いと思われるような作品を作りたかった。
 ただ、点数で評価されないという意味では気楽で、仲間とああでもないこうでもないと話し合いながら作るのは楽しい。楽しくて仕方なかった。先週までは。

 俺と凛世は、極力いつも通りの態度で過ごしたつもりだったが、友達には気づかれていた。制作作業が長引いた学校の帰り、長田と近藤と俺の三人で夕飯を食べているとき、俺は二人に、ちょっと上手くいってない、と話した。妊娠の可能性については黙っていた。長田はビールをあおった。
「いい機会だし別れちゃえば」
 近藤は「おい」と声をかけたが長田は言葉を続けた。
「だってヨッシーはGASEで凛世はバーズソフトだろ。会社に入ったら、同僚と過ごす時間の方が、遠恋の彼女よりずっと長くなんだから。どうしたって無理っしょ。先輩も言ってたじゃん。この業界、社内恋愛が凄く多いって」
 近藤が明るい調子で割って入った。
「うるせえよお前。人のことより自分はどーすんの」
「もー別れた。元々、卒業までの期間限定で付き合ってたから」
 その答えに俺と近藤は驚いた。「マジで!?」「そうなの?」
「ん。社会人なったら忙しくなんじゃん?なら学生のうちに青春を楽しみたいしさ、その価値観で一致してたから」
「意外。仲良さそうだったのに」
「仲良いよ今も。これからもフツーに仲良い友達。もうエロいことしないってだけ」
 俺は最後の唐揚げを皿から摘みあげた。
「そんなに切り替えられるもん?あんなコトもそんなコトもした記憶があんのに」
「だいじょぶ。感情的に深みに嵌まらないようにお互いコントロールしてたし」
 近藤が首を振った。
「俺には無理だわー」
 長田はからかうように
「近藤は三ヶ月以上もたせる事がまずは目標だよなぁ。お前はさ、相手に期待し過ぎ。違う人間なんだから分かんなくて当たり前。理解しようと頑張っても、シンドイし長続きしないって」
 俺は思わず考え込んだ。理解。俺は凛世を理解していたかな。
 お互いに理解し合ってるつもりでいた……けど。あの時の彼女の言葉『これからのこと』妊娠していたとして、彼女がこの後、どう出るつもりなのか正直、全く分からない。もうすぐ就職って時期に妊娠?入社と同時に産休入り?ありえないだろ。そもそもバーズソフトに産休制度があるかどうかも分からない。『これからのこと』もし子供を産みたいと言われたらどうする?結婚?新入社員で妻子を養うなんて無理ゲーだろ。育児なんて俺たちには無理だよ、おろしてくれ。彼女に言えるか?
『これからのこと』
 結婚なんて考えたことはなかった。ただの一度も。

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 二人と別れてから、帰りの電車の中で、俺は窓に写る自分の顔をぼんやり眺めた。
 専門学校に入学してから、同じクラスで気が合った者同士、何となくグループになった。大学に比べて専門学校は、在学期間が短い分、授業のスケジュールはタイトだ。次々に出る課題を必死にこなして、お互い教え合ってるうちに自然と親しくなった。一年の終わり頃に付き合い始めて。俺も彼女も誰かと付き合うのは初めてで、何やっても何を見ても楽しくて。
 ……いつからか、彼女の顔を思い浮かべようとすると、笑顔ではなく、何処かをぼんやり見つめている顔が思い浮かぶようになった。おかしいな。あんなに楽しくていつも笑ってた筈なのに。結婚して凛世と家族になる。家族という言葉と彼女が俺の中で全く噛み合わない。

 家族、という言葉で思い浮かぶのは母の事だ。
 四歳の時に母が亡くなり、八歳の時に父が再婚した。俺と母は血縁が無かった。俺には産みの母の記憶はあまりなくて、今の母には割と直ぐに馴染んだ気がする。
 ただ「家族」という言葉について、微妙な気まずさ、というか、違和感のようなものがずっとあった。母に最初に会った時に父が言った言葉。
「今日から、この人とお前とお父さんと三人で、家族になるんだよ。義行(よしゆき)、仲良くしような」

家族に「なる」。
仲良く「する」。
家族ってなるものなの。
家族って意識して仲良くしようとするものなの。

────その問いは声に出される事なく、俺の中に沈んでいった。
時々、意識の表面に浮かび上がりそうになるたびに、沈める事を繰り返し……

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 駅から家までの通い慣れた道のりが、妙に遠く感じた。父は単身赴任中で二年前から不在だった。専門学校に入ってから、課題制作で帰りが遅くなる事も多いので、夕飯を自宅で食べる時は事前にLINEするという決まりになっている。母はパートで朝が早い。俺が帰る時間には、母は寝る直前。起きる時間にはもう家を出ている。
 玄関にたどり着いた時に目眩がして、ドアの取手に手をかけたまま俺は数秒、立ち尽くす。
「……ただいま」
「おかえりー」
 パジャマに上着を羽織った母が、居間の椅子に座ったまま応えた。
「晩ご飯食べたよね?……あれ、どうしたの」
「風邪ひいたっぽい」
「あらら」
 母は引き出しから風邪薬の瓶を取り出し、三錠取り出して俺の手のひらに載せた。
「飲んで。お風呂止めておいた方がいいよ」
 寒気が襲ってきた。俺は身震いし、薬を飲み込んだ。
「お風呂の栓、抜いておくから。早く寝なさい」
 寝巻きに着替える頃には震えが酷く、これはいよいよヤバイな、と思う。布団に潜り込むと震えが少しマシになる。母が部屋に入って来て、部屋の机に冷えピタとタオル、水のペットボトルを置いた。
「これ本格的な奴かも……」
「ここんとこ根を詰めすぎだと思った。疲れが出たんじゃない。義行、ここに置いとくから。お母さん明日、仕事休もうか?」
「大丈夫」
「お昼ご飯困るでしょ」
「……」
 俺は答える気力もない。母は冷えピタを俺の額に貼り付けた。

色褪せた情景。 家の居間でテレビゲームをしている俺と友達二人。 俺達は小学生だった。 友達が母に何かを言った。 歪んだ母の顔。 俺は堪らなくなる。 友達に殴りかかった。 取っ組みあいの喧嘩。 すぐに割って入った母に止められる。 俺も友達も泣いている。 もう一人の友達は困った顔をしている。 俺はどきりとしたのだった。 友達が発した言葉に。 悪意のない子供のストレートな言葉。 
────そこに周りの大人が隠していた本心が顕れていた。 

その時、母の心にヒビが入ったのが、分かった。

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 熱に浮かされながら途切れ途切れに昔の夢をみていた気がする。
 結局、俺は三日間、学校を休んだ。一日目はポカリと水とゼリー飲料しか喉を通らず、二日目には、昼と夜、起きて粥とりんごを食べる事が出来るまで回復した。
 そして三日目。昼に起き出して雑炊を食べた後、居間の椅子に座り、スマホを取り出して溜まりに溜まったLINEを読んだ。休む事は伝えてあったので、作業の進捗や問題点を履歴に残してくれるように頼んでいた。
「義行アイス食べる?」
「食べる」
 この日、母は休みだった。久しぶりに食べた雑炊は美味かった。母はハーゲンダッツのカップを二つとスプーンを持って来てくれる。俺達は向かい合ってアイスを食べた。同じ家に住んでいる筈なのに、こういう風に向かい合ってゆっくり過ごすのは久しぶりだった。

「何か昔の夢見てた。……俺さ、小学生の時、ウチで友達と喧嘩したことがあったじゃん。あん時のこと」
 母は笑った。
「あったねーそんなこと。『おばさんさあ、ヨッシーのまがいもののママなの?うちのママが言ってたんだけど。まがいものって何?』って。グサッときたなあ。けどすぐ義行がその子に飛びかかって喧嘩始めてさ。あれってやっぱり、お母さんのために怒ってくれたんだよね?」
「別に。何かムカついただけ」
 母はまた笑った。
「でもあの事件の後、あの子の母親が謝りに来てくれて、そこから他のママさん達と仲良くするキッカケになったんだよね。義行も、あの辺りから懐いてくれた気がするし。だから却って良かったわ」
「そうだっけ」
「そうだよお」

 俺は空になったアイスの容器を見つめながら、思い切って口を開いた。
「聞いたことなかったけどさ。親父と結婚するの嫌じゃなかった?初めての結婚なのに、相手は再婚でコブ付きとか。フツー嫌じゃない?」
 母は少し気まずいような笑顔で
「うーん……まあねえ直ぐには決められなかったかな。いきなり小学生の育児なんて、自分には無理って思ったし。けどお父さんがね、傘の下に君が居るって思うと気持ちが明るくなるんだって言ってくれてね」
「傘の下?」
「ほら玄関に朱色の傘があるでしょ。あれ、結婚前にお母さんが使ってたんだけどね。亡くなった奥さん……義行のお母さん、が同じものを持ってたらしいのね。
 奥さんが亡くなった後、会社の玄関であの傘を見てドキッとしたって。最初は嫌だったみたい。けど段々と、傘の下の可愛い女の子から目が離せなくなったって」
 母は、あははと照れ笑いをし、俺は妙に尻の下がムズムズした。
「可愛いとか。自分で言っちゃうし」
「本当にそう言われたんだもん。……迷ったけど、お父さんのこと好きだったし思い切って結婚して。……けどねえ、周りからしたら、以前に居た奥さんの後妻さん、て見方なわけよ。何やっても前の奥さんと比べられてるんじゃないかって。だんだん誰もがそういう目で見てる気がしてきて。トドメに“まがいもの”発言でしょー。……本当はねえ、あの日の夜にお父さんに八つ当たりしちゃった。『あなたにとっても私は、傘の下の奥さんの“まがいもの”なんでしょ』って」
「…………」
「そしたらねえ。『僕と義行は君と家族になりたい。……でも、家族って直ぐにはなれないと思う。他人同士が出会って、この相手と家庭を作ろうと決める。最初から家族だった訳じゃないだろ。……一緒に暮らし始めて時間と体験を共有して、その積み重ねで段々家族になるんだ。そして最後まで側に居るのも家族なんだ。僕はそのつもりで君を守るから。ずっと守るからゆっくりで大丈夫だよ』って。……ね、カッコいいよね。惚れ直しちゃった」
「よく覚えてんね……」
「何回も思い出してたもん。……苦労の甲斐あって、アンタももうすぐ社会人かあ。やー肩の荷が降りたーって感じ。立派に育ってくれて嬉しい。けど、ちょっと寂しい。アンタも寂しいんじゃない?」
「なワケねーし」
 母は笑って席を立ち、俺の頭をガシガシとかき回してから、二人分のアイスの容器を回収してゴミ箱に捨てた。そのまま洗濯物を取り込むためにベランダに出る。

 立ち働く母の背中を眺めた。
毎日、毎日の洗濯、掃除、食事作り、仕事。日々の営みを守るための終わりのない闘い。

『立派に育ってくれて嬉しい』
 なあ、この言葉に相応しい人間か、俺。
 大事なものを守る為に闘い続ける、最高にカッコいい親の、最低にカッコ悪い息子よ。
 お前は一度でも、たった今、自分の彼女がどんな気持ちで居るか、思いを巡らせたことがあったか?

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 三週間、死に物狂いの追い込み作業をして、どうにか卒業制作の動画を締め切りギリギリに提出した後、チームの全員で打ち上げをした。
 俺と凛世は、何事もなかったように過ごしていたけれど、申し合わせたように、俺たちの隣には誰かが座り、宴会の間中、隣同士になることは無かった。分かりにくい気の使い方だけど、やっぱり皆にはバレてたわけだ。
 卒業後は、それぞれ違う会社に行くことになる。俺たちは三年後に再会する事を約束して解散した。その時に再び全員の顔を見れたら良いけれど。きっと別の会社に移ってる奴も居るんだろう。結婚してる奴も居るかもしれない。


 俺と凛世は、二人でよく行ったコーヒーショップに向かった。あの日以来初めて、俺たちは間近に向かい合って座った。
「生理きた」
 凛世の短い呟き。俺は安堵のあまり大きな溜息をつきそうになったが堪えた。そしてどうにか「うん」と頷いた。
「もし赤ちゃん出来てたらどうするつもりだった?とか、聞いてみたい気もするけど。意味ないから止めとくね。……私は産む気なかったよ。結婚も育児もまだ全然考えられないし。やっと夢が叶いそうなんだし」
「うん」
 凛世は口をつぐんだ。再び口を開いた時、声が少しだけ震える。
「……このまま産んだら……何かあった時に『この子さえ居なければ』って考えちゃいそうで。何するか分かんない、と思って……怖くて」
 凛世の目に涙が溜まり、いっとき瞳が透明な海の中に浮かんだ。そして溢れ、顎から滴った。俺は彼女の手を握った。あれからずっと不安だったんだろう。怖くて恐怖に押しつぶされそうになってたんだろう。彼女がそうやって暗闇の中で震えながら丸まっていた時、俺は自分の事しか考えていなかった。
「ごめん」
 百回謝っても謝りきれない。床に額を擦り付けて土下座したい気分だ。周りに誰も居なければ、実際に実行していただろう。
 凛世は俺の手を握り返して言った。
「……明後日、出発する。もう荷物は向こうに送ってる。……最後に、駅の入口まで、送ってくれる?」
「うん」
 俺たちは立ち上がった。

 地下鉄の駅の出入口まで十メートルの所に、花屋があった。
 夜の中に色華やかな色彩が浮かび、道行く人々は通りすがりに目を止めている。店頭の灯りに銀色の筋が映る。降り出した小雨に、凛世は鞄から黄色い傘を取り出して開いた。
 俺は店に入ると、黄色い花で纏められた小さなブーケを買い求め、その場で凛世に渡した。彼女は驚いた顔をした。
「えっ!花をくれるなんて初めてじゃん!わぁ嬉しいー。ありがとう」
「黄色好きだろ」
「知ってたんだ。や、分かるよねぇ」
 そうなのだ。凛世は黄色とかベージュ、ブラウン系の服をよく着ていた。アクセサリーもゴールドか、鮮やかな黄色が多かった。……知ってたのに。こんなに喜んでくれるなら、もっと早くあげればよかった。
「私、何もあげられるもの無いなあ」
 俺はかぶりを振った。
「俺は君からたくさん貰った。ありがとう。本当に」
 凛世は泣き笑いのような顔で微笑んだ。
「……私もありがとう。義行と居る時が、生まれてから一番、楽しい時間だった……ここでお別れしよ。じゃあ元気でね」
「うん」
 俺は彼女の傘の下から歩み出て、雨の中に立ち尽くした。彼女はくるりと向きを変えて、向こうに見える地下鉄の入り口に向かって歩き出した。


 夜の中、遠ざかる傘の鮮やかな黄色がぼやけて滲む。
 俺は上着のフードを引き下ろし、目頭の涙を指で拭った。きっとこの景色を忘れないだろう。黄色い傘を見かけるたびに、下に彼女を探してしまうかもしれない。……しばらくは。

 どうか彼女がこれから幸せになりますように。俺と過ごしたよりもずっと、楽しい時間を過ごせますように。仲間たち皆の顔を思い浮かべる。ちっぽけな人間の男であるところの俺はただ祈ることしか出来ない。どんな人間でも未来に対しては、この先があると信じて歩み続け、幸せを祈るしか出来ることはないんだから。


 俺は祈る。

 幸せがありますように。
 みんなに。俺たちみんな、ひとりひとりに。


(完)


※ネムキリスペクト42thのテーマは「まがいもの」です。

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