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エルアラメインの狼男【逆噴射小説大賞2022】

 闇をライトで切り裂き、荒野を走るコンテナトラックが大きく揺れて、助手席に座っていたリクは窓に頭をぶつけた。シートベルトがあってもこれだ。
 運転しているカイを睨みつけるが、年季の入ったハンドルを巧みに操り、岩だらけの悪路を乗りこなす様子にリクは口を閉じた。途端に車体が大きく跳ね上がり、今度は肩をぶつける。ついに我慢ができなくなり大声で尋ねた。

「どこに行くんだよ!?」

 カイは顔を前に向けたまま、叩きつけるようにわめいた。

「アイツを人の多い場所から離さないとまずいだろうが!」

 トラックが石を弾き飛ばし砕きながら進む騒音と振動がゴゴンゴンと途切れることなく、鼓膜が破れそうだ。リクは声を張りあげた。

「戻るつもりあるよな?アウトドアの用意なんて僕らは」

「うるっせえ!じゃあどうすりゃ良かったんだよ」

ドッガアンン!!

 途轍もない轟音と振動に、カイは思わずブレーキを踏むとリクと顔を見合わせた。

ドガン!ガゴッゴンンン……

 音に反響が混じる。衝撃はコンテナの中からだ。リクの顔は蒼白になった。
「ジョウだっ、起きたんだ。暴れてる」
 カイは顔をしかめた。「あのヤロー俺の愛車を」

 雷が落ちたような音と振動が車内を震わせた。車体は大きく傾き、中のがらくたがバラバラと落ちる。「やばいっ倒れ」カイが言い終わる間もなく、つんざく轟音と振動が車体を揺さぶり、トラックは二人の悲鳴と共に横転した。

 地面の側になったカイはシートベルトを外そうともがき「リク、生きてるかっ」と、上になった助手席に声をかけた。リクは呻き、目を見開く。フロントガラスの先に……

 ……こちらを見つめる大きな獣。

 昆虫のような緑色の複眼がライトの光を照り返している。
 身体は青く輝く鱗に覆われ、四つ足獣の形をした巨大なトカゲのようでもある。チロリと長い舌がひらめき、吐く息が灯りに白く浮かぶ。

「ジョウ」

 リクは、かつての幼馴染の名を呼んだ。


(続?)



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