女嫌いの僕が一人でまたアソコに行ったら、沼だった件について
8月21日、日曜日。
今世紀をひっくり返しても暇な日は、「メンズポートレート」の搬入締め切りの日である。
朝の8時に無駄に起きて、朝の掃除。ベッドシーツはオキシドールで1時間漬け込んで天日干し。
母はこの日仕事が休みで朝から、友人とビュッフェに食べに行くと張り切っていて、シャネルの香水がふりまくったせいか、洗面所を1面、いい香りにさせていた。
「あーあ、搬入だりぃな。京橋まで車でいくかぁ。」
だったらなんで展示なんてやるんだよ。やめちまえって思うかもしれないけど、ただ支度をするのがめんどくさいだけなのである。重い腰を上げるともう11時を回っていて、母はすでに外出していた。祖父に早めの昼ご飯にセブンイレブンで当たったラーメンを作ってあげた。塩分が濃いめのラーメンは水を多めにして、白だしを少し加えて味を調える。すると、和風だしっぽい醤油ラーメンに変わる。麺はやわめ。これが祖父にとってはちょうどいいらしく、粥が進むらしい。
「わかめはどっさりいれとくれ、卵はおとし玉ね。」
戦後間もないころ、祖父はまだ9歳で、厳格な両親に育った典型的な昭和人間なので、それはもう亭主関白であり、女にはめっぽう強く、息子である叔父にはめちゃ甘い。今は後期高齢者ということもあり、どやされることはないが、小学生のころ、お箸の持ち方で1時間も説教させられたころが懐かしい。
「はい!わかってるよー」
わかめどっさり醤油ラーメンの完成で、2人、ラーメンをすすりながら、録画したホラー番組を見て、「おじいちゃんは心霊って信じるの?」というと
「心霊かー。心霊なー。それより今日は暑いからお茶持って行けよ。ズズズ」と話を終わらせる。興味がない話がでると本当に興味を失くすのは遠隔家の伝統だ。なんやかんやしていると時間は、もう12時半。やべえやべえ。メイクとヘアセットを終えて、昨晩準備していた展示物をもって、車を走らせた。
ちょうど暇をしていたモデルさんが「久々に会いたいぞ!どっかでお茶していく?」と声をかけてくれたので、彼女の住む近くのコンビニで集合する。今日のお相手は舞花ちゃん。とても美人なのにどこか男気があることに気づいたのは僕だけではないはず。
「ひらめきたん!久しぶり!ひらめきたん!今日も歯並びきれいね!」
ご存じの方もいるだろうが、僕は以前「閃き3」という名前で活動をしていた時期がある。その当時に出会ったのが舞花ちゃんで、俗にいう「被写体」として小さく活動していて、中崎町で撮った、「日常の日に花束を」シリーズではだいぶお世話になった。彼女の家から会場までは20分。最近の悩みについてや性生活の話をしていたらすぐついてしまった。会場につくと、石田シンヤさんとモデルのツユちゃん。そして毎度おなじみのオーナー、パイソンさんがバーカウンターで話していた。
「パイ様!!展示搬入きやした!!ハァハァ!!」
「おうおうwお疲れ様ですー。」
A1パネル2枚は妙に重くて4階まではだいぶしんどい。そしでデブの4階の上りはだいぶきつい。パイソンさんに設営の指示を伝えると、代理で設営してくれる。本来は自分でやるのだが、ステートメントを忘れていしまい、急遽、305でプリントしてもらう。代理設営をお願いすることになった。ちょうど企画展「Nudist」がやっていたので、少し見て回る。やはり圧倒的だったのはwako氏の作品であっただろうか。時刻は15時をまわっていた。
「私さ、17時にいったん家に帰んなきゃだから、ひらめきたんそれまで遊んでくれる?」と舞花ちゃんがいうので、僕は快く了承した。
車を移動し、難波。
なにか甘いもの食べたいというお互いの食欲を満たすべく、裏難波へ向かったのは喫茶ロア。そこで、トーストを1枚とコーヒーを飲んだ。しかも喫煙可能、これは愛煙家の僕には非常にうれしい。お互いの小さい趣味に「ディズニー好き」というのもあって、ディズニープリンセスの話を小1時間もしていた話は軽く、はずみもう17時を回っていた。
「あ~ん、もっと話したいからまた会おうね!次は喫茶アメリカンいきたい~」
「おけ!また車でいくべ!」
彼女を駅で見送って、僕は一人になってしまった。まだ17時。家に帰るのはさみしい。すると僕は急にどこかへふらりと行ってみたくなった。
日本橋のオタロードは僕のふるさと。
あの薄い本、ああメロンブックスで買ったよな。うわあ、ボークス懐かしい!そうそう、この雄臭いフロアの香り。いやぁ、忘れられないな。ヲタロードってかんじ!あそこでけいおん!フィギュア全員揃えたよな・・。などなど、思いをふけるそんな日本橋にふらっと立ち寄った。メイド喫茶・ソフレ・コンカフェ、道中を等間隔でビラ配りしている女の子を横目に見ているとコンビニのそばでビラを配っているメイドさんに声をかけられたのだ。
前にも会ったような、あれはコンカフェ膝栗毛のときか!
「おねえさん💛メイドカフェいかがですか💛」
「あ ・・いや・・えと。」
「わ!おねえさんのプレステバックめっちゃいい!!!!」
「あ、ありがとうナス・・、ぷ、プレステすきなんス・・」
「へえ、めっちゃいい💛おねえさんは今日どこかいくんですか💛?」
「いやどこも・・、コンカフェ・・・男装さんとかいる・・どこかかっこいい男の子がいてるカフェとかってあるんですか?」
「うーん、うちの店は男装カフェとかではないんですが、推しが働いているお店をよかったら教えますね💛うちの店まで近いんですよ💛」
本来なら自分の働いている店を紹介するだろうに。わざわざ道案内までしてくれたのだ。なんとも親切なメイドさんだったのだが、ネームプレートがなかったので、お礼もなんも言えなかった。とりあえず、周辺のコンカフェであることはわかった。
彼女に案内されるがままたどり着いたのは、またあの雑居ビルである。
雑居ビルを上った先にあのカフェがあるらしい。あれおかしいな。前にも・・どっかでそんなことが・・まぁそんなことはどうでもいいや。
エレベーターで5Fまで上がり、扉をあけるとそこは、天国のような感じのシャンデリアが飾られた、まさに虹色ふわふわコンカフェだった。
「おはようございまーす💛あ、検温と消毒してくださいねん💛」
「ウッス」
検温と消毒を軽く済ませ、キャストさんに誘導されるがまま、席に着く。
メニューを持ってきた茶髪の男装キャストさん、碧海さんとちょっとだけえらい人のねむさんに軽くルール説明を受け、登録をすませる。どうやら登録すると安くなるらしい。名前を聞かれた時「遠隔びぶ・・れーしょん??」と聞かれたので、すがすがしくも「遠隔vibrationです」と答えた。ねむさんは「遠隔さんですね!遠隔さん!」と返事する彼女がとってもかわいかった。
メニューには1時間のチャージと各料理やドリンクの金額と、コースの3種類あって、僕は「満喫コース」を選んだ。満喫コースでは歌リクエストとキャストさんが作るオリジナルカクテル、ブロマイドとチェキがついてくるらしく、このオリジナルカクテルにはパフォーマンスがついており、各キャストさんを指名するとオリジナルのカクテルと同時に、いろいろなんかしてくれるらしい。きゅるるんとした目のちょっとえらい人のねむさんがいろいろ教えてくれたので、「うーん、男装キャストさんが・・いいかもですね・・」というと、「いまだったら、碧海くんと類くんがいるよ。おねえさんはオラオラ系か胸キュン系かどっちにする?」
とキャストさんのメンバー紹介ファイルを渡してくれた。
いや・・誰だかわからんが迷う・・。確かにオラオラもすきだが、胸キュンも捨てがたし。初手のパートナーポケモン並みに悩む・・ヒトカゲかフシギダネかゼニガメかと言われて1時間くらいは悩むくらいに悩んだ。
そしてねむさん・・あんたがものすごく、かわいいよ。すると、しびれを切らしたねむさんが
「じゃあ!じゃんけんできめよ💛お姉さんがかったら、類くん!ねむがかったら碧海くんねー!」
と手を差し出した。いいのか、そんな駆け引きみたいなことをして!!!初手をそんなじゃんけんごときで・・うぉおおおお。昔からじゃんけんは絶対負けるから、もうわかっていたのだけれど、僕はあっけなく負けてしまった。この手で類くんさんを・・・くっ・・・アディオス・・類・・くんさん・・
「じゃあ碧海くんね!少々お待ちください・・!」
すると碧海さんからイメージカラーのオリジナルカクテル(ノンアル)をもってやってきた。
「では、遠隔さん・・!準備はいいですか・・・!」
「え、ファ!?え!?」
「失礼します。」
え!なにをする。やめれい!!!僕は思わず目をつむった。
すると耳元で「今日は来てくれてありがとう。だいすきだよー💛(悶えていたので記憶があいまいですすみません)」
とかわいい声で言うではないか。
なにかがズブっとはまったような心情である。明らかにわかった、これは沼だ。ふん、まぁいいだろう。27年間、女に4度告白されたことはあるが、これほどまでに「だいすきだよー💛」が心に響くなんぞないわけが・・ふん・・(ズブズブ
「え・・あ・・アザス・・(滝汗)」
「本当によかったですか?僕のパフォーマンス。」
「え!いや全然・・ファ・・とっても・・ゴチっす・・」
「いえいえ、うれしいです💛」
碧海さんは、ニコっとわらって去っていった。
いやいや、最後まで残さずサービス精神を忘れない所、いや・・尊いね。ブロマイドはスーツの1枚にした。
歌のリクエストとチェキは類さんにした。類さんは僕よりすこしだけ身長が低くて、しかも御曹司というコンセプト。ナイス。母の教育がかなりずれているらしく、ボーカロイドやアニソンを歌えるなど、隅々の設定もしっかりしている。何より、amazarashiを歌えるとは、お母様。とってもええ教育をなされてますよ。遠隔は拍手を送ります。と心でなんども拍手をおくったくらいだ。
「類さんはなぜ、男装さんに?」
「もともと、僕もお客さんとして別店舗で通っていたんですけど、いろいろの伝で、ここの応募を知って入った感じっすね。」
「ほええ・・ずっとされてる方かとおもってました。」
「そうかな。よかった?」
「はい!!とっても!もし、類さんでよければなんですが、チェキもお願いしたいです。」
「え、僕でいいんですか?」
「はい。(とても)」
チェキも撮影し、1時間が経過する前にお会計、帰りにキャストの皆さんがお見送りしてくれる。なんていい店だ。僕のコンカフェの1時間はあっという間におわった。ビルを出ると、夕方は夜に染まり、人々は駅の方面へ向かう足が増えたような気がする。
「さて、帰るか。」
帰りに戦慄かなのさんのBabyUFOを聞いた。
夢は見たままだった。
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