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闇の王展 Ⅹ

美とは

「もう終わりだ…美しくなかったら生きていたって仕方がない」
ハウルの動く城でハウルが言う有名なセリフ。あれほど美しくともなお「美」への執着があり、理想との乖離に恐怖を抱いている。
ずっとこの言葉は私の中に在る。

世の中には整形しても整形しても理想になれず苦しむ人々がいる。「美しい」を求めても求めても満たされない、それはある意味地獄。周りから見たら美しいのに。美への執着であり、美への依存。

私は…?

私は元々、自分の顔が嫌いで嫌いで仕方なかった。三白眼も、切開ライン引いたような目頭も、獲物を狙うような猫科の大型獣みたいな目元も、ほとんどない鼻も、角度がすごい眉も。
でもずっとファッションは譲れず小学校では浮いて、不細工だ、目立ちたがるなとあれこれいじめもあり。
だから中学卒業後からメイクを始め、高校もメイクして髪をしっかり巻いて武装してた。嫌いな顔を、まあ許そうと思え、外に出る力をくれたのはずっとメイク。
メイクの力は本当に強く感じて生きてきた。
院卒後に就職した製薬会社でノーメイク出社を強要されるまで、ノーメイクで外に出るなんて本当に考えられなかったくらい大学でもバチバチメイクで。
製薬会社で心身ともに疲れてしまったのは、ハード過ぎた等、色々思いつく点はあるけど、生きる術の一部を削がれてしまったからなのかも、なんて今では思ったりする。

そんなメイクとファッションを通して、切り撮っていただくことで、やっと最近、少しだけ自分を認めてあげられるようになってきた。

ハウルは魔法で理想の美しい自分を認められるけれど、私はメイクしても着飾っても、自分を美しいと、心からは思えない、未だ。
そこはハウルとは全然違うけれど、でも私のこの気持ちもまた、ある意味「美」への執着であり、恐怖であり、依存である。

美は心に潤いを与える。
美しい絵も写真も物も。
私たちの心を癒してくれる。

でもいつでもそうなのだろうか?
「美」として大きな括りで見た時、それは癒しだけなのか…?
時に私たちは美に服従させられているのでは?

闇の王展Ⅹで私が描きたかったのは
そんなテーマ。

先述の通り、「美」の象徴としてこの作品を作るにあたり、自分ではない、美に魅せられ、いつの間にか美に服従している魔女を描きたかった。彼女はそんなこと微塵も感じていない。ただ美しいと思う黒い薔薇を、共に美しいと感じて欲しい無邪気な心でいる。

それを表現するには、「むらさき」とわかるビジュアルは要らない。だってどんなにがんばっても、心の底から美しいとはまだ未だ思えず、私も美への執着、恐怖の中にいるから。私もまた美に服従しているのかもしれないけれど、美を象徴できるとは全く思えなかった。

だから、見たことの無いビジュアルのむらさきでの創作作品。伝えたかったテーマに繋がるように、私を私でなくして、沢山のヒントとなるモチーフを盛り込んだ。

ぜひ、ご自身の解釈で、
ご自身の思うままに、
ご覧いただければ幸いです。

闇の王展Ⅹ 2023


むらさき

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