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第四回:デイリータスクリストの理想と現実

その日にやることを一列のリストに並べましょう、それをお供にしながら1日の作業を進めていきましょう、というメソッド(ノウハウ)を紹介すると、多くの人がすんなり納得してくれます。

なんといっても、一日という単位は私たちにとってはお馴染みですし、やることを一列に(つまりリスト形式に)並べることも違和感はありません。だから、だいたいのイメージはすぐに浮かびます。

しかし、そうして最初にイメージされるデイリータスクリストと、現実のデイリータスクリストは、決して小さくないズレを持っています。絵に描かれたナポレオンと、現実のナポレオンくらいの違いがあるのです。

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最初にイメージされるタスクリストの運用は、きっとこんな感じでしょう。

朝一にその日の「やること」をぱぱぱっと書き出し、さあ作業開始と一番上の項目から取り掛かる。そこからは、切っては捨て切っては捨てと天下無敵の侍のように「やること」を処理していき、一番最後のタスクを終えてその日のタスクはすべて終了。あとはクールなガンマンのように落ち着いて職場を立ち去っていく……。

はい。これは理想です。つまり現実ではありません。こんな風に進む一日は、一年のうち一日か二日あれば良い方でしょう。実際のデイリータスクリストは、もっと泥臭く、混乱していて、思うようにはほとんど進まないものです。

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現実のデイリータスクリストの運用は、かっこよさもクールさもありません。ただただ現実的な「成果」がそこに記載されていくだけです。

まず、デイリータスクリストに書いてあることなのに、どうしても取り掛かる気持ちが湧いてこないことがあります。「やるべきこと」であることは、わかっている。でも、どうしても取り掛かる気持ちが湧いてこない。だから別の作業をしているうちに、どんどん先送りされてしまう。そんなことは珍しくはありません。

さらに、仮に作業に取りかかれたとしても、スムーズに作業が進むとは限りません。じっと腕組みして考えたり、作業に必要なファイルを見つけるために延々時間を使ったりといったことが起こります。

もっと言えば、リストに載っていること以外の作業も次々に発生します。上司から依頼される仕事もありますし、同僚の失敗のカバーや、取引先からの長電話など、まったく予期しなかったタイミングで新しい作業が入り込んできます。

あげくのはてに、気移りな私たちは、何かの作業をしているときに、フラフラと別の作業(リストに載っていない作業)に着手してしまうこともあります。いわゆる脱線です。

そうこうして一日が終わってみたら、朝一のリストとはすっかり姿を変えてしまい、やり残したことが大量に積み残されているリストがそこに無残な姿を晒しています。

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これが現実のデイリータスクリストです。あなたがデイリータスクリストを使い始めて、上記のような「出来事」に遭遇したとしても、びっくりしないでください。ましてや落ち込むなんて論外です。これが、デイリータスクリストの「現実」なのです。言い換えれば、私たちの仕事の仕方の「現実」です。

だからこそ、デイリータスクリストが役立つのです。

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