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世界を愉しむ研究ノート

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楽化主義促進のために、「世界の愉しみ方」をテーマとして研究ノートを書いていきます。
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競争とは異なる原理において:『「分かち合い」の経済学』を読んで

「世界を愉しむ」というテーマでさまざまな本を読んでいく題読の二回目は、「生きのびるための岩波新書」フェアから神野直彦氏の『「分かち合い」の経済学』を取り上げる。 まずは概略を辿ろう。現在は資本主義まっさかりであり、しかもその危機が叫ばれているが適切な処方箋は見当たらない。すべてがそれによってうまく調整され、適切な資源の分配が(まるで見えない手に導かれるように)行われると言われていた競争原理は、むしろ貧困などの格差を悪化させる症状を隠すことなく生み出し続けている。 では、ど

定常社会をいかに楽しむか:『ポスト資本主義』を読んで

「世界を愉しむ」というテーマでさまざまな本を読んでいく題読(だいどく)の一回目は、「生きのびるための岩波新書」フェアから広井良典氏の『ポスト資本主義』を取り上げる。 取り上げる順番に恣意的な要素はない。あるいはまったくの恣意である。四冊購入した本のうち、この本から読み始めたというだけだ。でも、その選択には否応なしに私の無意識の恣意性が入り込んでいるだろう。なにせ、私はドラッカーが大好きであり、ドラッカーもまたポスト資本主義社会に言及しているからだ。 現代において「ポスト資

「生きのびるための岩波新書」を読む:序文にかえて

愉しむことについて研究を進めていきたい。そのために本を読む。まずは「生きのびるための岩波新書」を手に取る。 人は、何かについて考え悩むとき、本を手にします。そして、新書はもっとも手に取りやすい書籍です。だからこそ、「本を読むこと」を通して、読者の皆様とともにこのきびしい現実を生き抜いていきたい。そんな思いから、「人生の道しるべ」となる名著を厳選しました。 上記のフェアで手に取ったのが以下の四冊。 『哲学の使い方』(鷲田清一) 『「分かち合い」の経済学』(神野直彦) 『異