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バケツ5つで世界を周るダックマン!「生きる意味がない」とさえ感じた幼少期を乗り越え、世界を笑いで満たしていく

過去に虐待を受け、今を強く生きている人たちを発信していくインタビューメディア「RASHISAストーリーズ」。記念すべき第1回目は、中村鷹人さんに登場いただきました。

「ダックマン」という肩書で、バケツ5つで世界を旅しながらパフォーマンスをする中村さん。その他にも英語を教えたり手品をしたりと、世界中に笑顔を運んでいる中村さんですが、生まれてまもなく母親に首を締められる、ロウソクを食べて生きるなど、生まれながらの虐待の日々。そんな彼が、いかにして「ダックマン」にたどり着いたのかーーお話しを伺いました。

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中村鷹人(なかむら・たかひと)| 1993年生まれ、青森県出身。通称ダックマン。自らをTKエンターテイナーと称し、俳優、ミュージシャン、お笑い芸人、バケツドラマー・ダックマンと、多方面から世界を旅し人々を笑わせる活動をおこなう。
Twitter: @tkentertainer
公式Webサイト:http://tk-entertainer.com/jp/

目の前の人すべてに笑顔を届けるエンターテイナー

——まず、ダックマンについて簡単に教えてください。

僕はTKエンターテイナーとして世界中でさまざまな活動をしており、そのうちの一つとして演じるキャラクターです。バケツ5つを持って世界中を周り、バケツドラムのパフォーマンスをしています。他にも、英語の先生、俳優、ミュージシャンなど、TKエンターテイナーには数多くのキャラクターが存在しています。

——活動の幅を広げていることに理由はありますか?

一人ひとり、「面白い」と感じることが違うからです。たとえば、バケツドラムを楽しんでくれる人もいれば、うるさいと感じる人もいます。そこで「受け入れられないならいいや」と終わらせるのではなく、「目の前の人にどのように楽しませられるだろうか?」と考えて、できうる最大限のパフォーマンスをすることを心がけています。そのためにも、マジックやジャグリングなど、やったことのないことでも合間を縫って練習しています。

——目の前の人を想ってのことなのですね。どのような想いで活動されていますか?

「ただあなたを幸せにすること」です。自分のパフォーマンスを通じて、世界に笑顔を増やしたいという想いだけです。特に、過去の僕のように苦しみを抱いている人に届けたいですね。

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後ろめたさを持って生きてきた幼少期

——どんな幼少期を過ごされたのですか?

1~2歳までは病院の施設で育ちました。生まれてすぐに母に首を締められたらしいんですけど、僕の泣き声に耐えれなくてヒステリックな状態に陥ってしまったそうです。「その状態で子育てをするのは無理」と判断され、病院の施設に引き取られた形です。

——いきなりショッキングな出来事があったのですね。

後から聞いて驚きました。また、海外に出る22歳まではサンドバック状態アザや切り傷、タバコの跡が絶えませんでした。食べるものもろくに与えられず、餓死寸前だったのをよく覚えています。

——その状況は小学校に入ってからは何か変わりましたか。

外には出られるようになりましたが、そこからは違った苦しみがありました。それまで人が多い場所に行ったことがなかったので、人が多い学校に行くのが怖くて、通学路にある木で吐いたこともあるほどです。さらに、学校に着いたとしても、人が多くて本当に辛かったのを覚えています。それに後ろめたさがあったんですよ。「これだけ人がいるんだから、自分なんて生きてても死んでてもどっちでもいいだろう」という後ろめたさが。

——感じなくてもいい後ろめたさを抱いていたのですね...

そうです。他にも、同じアパートに住んでいた友達がある日突然いなくなったことがあって。その理由を人伝いで聞いたんですけど、僕が虐待をされている時の声が聞こえて、耐えきれなくなって引っ越したそうです。「生きているだけで迷惑なの?」なんて気持ちも少し芽生えていました。

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他人に笑われて生まれた「生きている感覚」

——小学生の時の印象に残っているエピソードはありますか?

ある日の給食の時間です。ミスって机の上の食べ物を全てひっくり返しちゃったんですよね。さらに、片づけようとしたらこぼした牛乳で足がすべっちゃったんですよ。そこで大ゴケしてしまって。クラス全員の生徒と先生に笑われました。。

——大ゴケしたら笑われちゃいますよね...。

その時どう感じたんですか?
意外かもしれませんが、心底快感だったんです。「これしかない!」と思ったほど。「皆んなから注目されている!これが生きている感覚なのか!」と感じたんです。「死にたいと思わなかったの?」って聞かれても、そもそも生きている感覚がなかった僕が初めて抱いた感情でした。

——今に通ずる出来事な気がしました!

まさしく!そこから僕の「皆んなに笑われたい」って軸は変わっていません。

——ミルク事件以降は順風満帆だったんですか?

小学生の時はそうでしたが、中学校でまた孤立してしまったんです。最初に受けた模試で268人中268位と正真正銘の最下位になり、周りの人たちにからかわれるように。「バカが移るから近づくな」なんて言われたり、クラス全員が「半径5メートル以内に寄らないようにしよう」というルールを決めたりと、あからさまにイジめられていました。

——それはキツいですね...。でも、確か中学校では生徒会長だったんですよね。

いじめられている状況を乗り越えようと思い、何か周りよりも秀でたものが欲しいと考えました。そこで僕は、「頭が良かったらいいんでしょ!」って開き直り、めちゃくちゃ勉強したんですよ。結果的に学年で一番になったり、生徒会長も経験したりしました。すると、周りの目もちょっとずつ変わっていたんだすよね。小学校の時に魅せられた「面白さ」だけでなく、周りから「尊敬」される必要があるんだなぁと学びました。

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自分の無力さを感じさせられた、目の前で目撃した「死」

——大学時代はカウンセリングの仕事をしていたとのことですが、どんなことをしていたんですか?

大学のカウンセリングルームで、ボランティアとしてお手伝いをさせてもらっていました。心理学を専攻していましたし、「人を救いたい!」という想いが強かったので、お願いしてボランティアで携わらせてもらっていました。悩んでいる人の話を聞いたり、カウンセリング前後の表情などを見たりして、「カウンセラーという仕事もありだなぁ」とおぼろげながら思っていました。

——カウンセラーの道を視野に入れながら、結果として目指さなかったのは理由があるのですか?

カウンセラーとしての自分に無力さを感じてしまった出来事があったんです。

——詳しく教えていただけますか。

ある日、ここ(取材を実施したカフェの横の道)を自転車で走っていたらパチンコ屋の屋上から女性の人影が見えたんですよ。そして、僕がパチンコ屋の下に来る頃には飛び降りていました。自殺です。

——あまりに突然の出来事ですね…

その後警察や救急車が来たんですけど、あまりにもショックすぎて僕はその場を離れられなかったんですよね。良かったのか悪かったのか、女性の顔がたまたま見えたんです。すると、僕がボランティアをしていたカウンセリングルームに来て、僕が受け持っていた女性でした。「僕と接した時間は何だったんだ」「僕の力が無かったからいけなかったんだ」と自分を攻めるようになりました。ショックが大きすぎて、この道を通ると思い出してしまいます。

——…。

実は、今の路上パフォーマンスはこの出来事がきっかけになっています。一人ひとりの人生に深く入り込むことは難しいと気付き、多くの人を広く助ける手段を探し始め、結果的にたどり着いた形です。さらに、「道」で目撃した悲しい出来事だったので、そこで僕は「道」で笑顔を増やしたいと考え、路上パフォーマンスに挑戦することにしました。

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目の前の人の悲しみをくみ取り、笑いで満たすパフォーマーへ

——話を戻して、今の活動に至ったきっかけを教えていただけますか。

きっかけは、オーストラリアでのワーキングホリデーでした。行ってすぐの時は100万円を持っていたんですけど、旅行会社にお金を巻き上げられたりして600円になってしまいまして。どうしようもなくなって、一時ホームレス生活をしていたんですよね。それでも苦しくなってきたので日本に帰ろうとしたんですけど、「どうせなら最後に何かやりたい!」と思ったんです。そこで思いついたのが路上パフォーマンスで、友達にアンプを借りて、ゴミ山からバケツを持ってきて、簡易ドラムセットを作って。これが、ダックマンが生まれた瞬間でした。

——ついに!

そんな出来事から生まれたとは意外でした。パフォーマンスをしてみていかがでしたか?
バケツを叩いていると、お金をくださる人がいたんです。その人の心を動かすことができたのでしょうか。そこで、「こうやって生きていけばいいんだ」と思いました。それからダックマンの服を着て、胸を張って路上で活動をするようになりました。

——そのときの出会いが今を作っているのですね。最後に、読者へのメッセージををお願いします。

僕は、バケツ5つで4年間世界中を旅しながら生きてきました。この活動や僕自身の過去を虐待を受けた人などに知ってもらうことで、内側から人々を支えていきたいと思っています。また、僕はよく、コップに例えて話すことがあります。コップの水がストレス、コップがストレスを受け止める度量。それが溢れたら泣いてしまったり、立ち直れなくなったりしますが、僕はコップから溢れる水を汲み取り、笑いで満たす――。そんなパフォーマーになっていきたいと思います。

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取材・文/岡本 翔
撮影/安東佳介
編集/角田尭史
※1枚目の写真(ダックマンの格好をしているもの)のみ別の方が撮影いただいたものを中村さんご本人からいただきました。

※取材希望や提携をご希望の方はこちらからご連絡ください。


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