見出し画像

参加レポ「縄文展&空想ショートショート」

ホモサピエンス(ヒト)がアフリカの地で誕生してから約20万年といわれています。ヒトが生まれて、ここまでどうやって生きてきたのか、何が本来的に自然なことで、何が不自然だから現代の私たちが難しさを感じているのか。だから、私たちはどんな未来をつくっていきたいのか。

縄文を含めて狩猟採集民に惚れている私が、「ナチュの森で出会う縄文展」に参加してみて感じたことを書き連ねたいと思います。

ナチュの森

北海道 登別駅から車で10分ほどのところにあるナチュの森。ここで「ナチュの森で縄文にであう展」が開催されています。ジェネレーターでもある高秀章子さんが企画プロデューサーをされている企画展。
狩猟採集民好きとして、どうしても行ってみたく、思い切って参加してみることにしました。

ナチュの森は、ナチュラルサイエンスという化粧品の会社が保有している場所で、廃校を利用して工場やレストランや子どもが遊べる屋内外の遊戯場などが建てられているところです。明るくおしゃれな建物に、親子で楽しめる体験コーナーも各所にありました。Mama&Kidsのクリームの商品を見て、娘が小さい頃を思い出して懐かしい気持ちにもなりました。

ホテルのように美しく心地よい空間

縄文で空想ショートショート

北海道一日目は、高秀さんやぐるぐる探究隊の方で企画された「縄文で空想ショートショート」に参加させていただきました。ぐるぐる探究隊さんは、Feel度Walkのイベントを随分以前から実施されていて、私も娘と参加させていただいたこともありました。
今回のテーマとなるショートショートとは簡単にいうと、短くて不思議なものがたりのこと。ゲスト講師としてショートショート作家の田丸雅智さんがいらっしゃるというスペシャルな回でした。縄文で空想をしながらふしぎなものがたりをつくるという事を知り、何か自分にとってヒントになることが生まれるに違いないと思って参加しました。

親子の参加者や大人のみの参加者が集まる中、会はスタート。
田丸さんからショートショートについての説明や、今日やることをご案内いただきます。ショートショートなんて作れるだろうかと不安な気持ちも折混ざる中、「何かの正解があるものではないので安心してください」というアナウンスで、ほっこりした空気が流れていきます。

その後会場に突如、縄文人さんがあらわれて(笑)、縄文に関係したものを届けてくださいました。
その対象物をヒントに、いよいよ妄想タイムがスタートします。知識から考えるのではなく、妄想をする時間。

最初はその対象物をみて、「外から眺めて、考えている」状態でした。この手のようなところがマッサージの器具みたいと思って眺めていました。しかし、田丸さんの妄想を紹介してもらって、ふにゃっと頭が柔らかくなりました。そして、「対象物の中に入って、感じる」ような感覚になり、自分が中空土偶になりきってみると、この目の感じに引き込まれて、見えにくい何かを目を細めてみているような感覚になりました(笑)。

私の妄想は、最近目が悪くなって細めてみるようになった土偶さんをイメージしました(笑)

他の参加者の大人や子どもの皆さんも、続々と最高の妄想を披露してくださいます。

そこに、現在のなんとなく気になるものや、未来の時空が加わって、さらにお話が膨らんでいきました。30分以上はお話を考えていましたが、あちこちで妄想の花が咲いているのも聞こえてきて、あっという間の時間でした。

それぞれの妄想がかけ合わさっていきます

私がかけ合わせたものは、この部屋のすぐ近くにあったオブジェ。帽子というタイトルで、中空土偶と同じような謎めいたオブジェ。

どう絡めようかと迷っていたら、田丸さんが話しかけてくださって、会話をしながら空想を膨らませました。じっくり見ていると、上から光があたっている様子が気になってきました。それがだんだんとステージ上にいるように見えてきて、田丸さんが「まるで山口ももえみたいだね!」と。ステージといえば、先ほどの参加者の方のお話も絡まってきて、お話が見えてきました。方向性が出来たところで、ペンを走らせてかいていき、この女性がももえちゃんになっていくと、やっぱりこの歌が聴こえてくる!「ちょっと待って、Playback,Playback!」。なんとなく気になって、じっくり観察して、会話して、書きながら、色々な段階を経て妄想が膨らんでいく自分の中の変化もとても面白かったです。

いよいよ発表タイム。そうきたかー!というお話から、じわっと情景が浮かんでくるお話など、どれも最高のお話ばかり。

その中でも、子どもの発想から生まれた「鼻す」というお話が、私のツボでした。いつしか人は匂いで会話をするようになって、いい気持ちのときはいい匂いを、嫌な気持ちは嫌な匂いが出て、鼻でコミュニケーションをするから、鼻す。摩訶不思議な物語だけど、でも、むしろ嗅覚は人間にとって退化した機能で、ずっと昔は匂いによる情報量がもっと多かったはずです。言葉に頼りすぎた私たちに、またその機能が復活する事があるかもしれないと思わせてくれる、なんとも夢のあるお話だと感じました。

鼻したり、色んなサインがあったり。あちこちに飛びながら膨らんだお話

最後に田丸さんの作った作品を聞いて、さすがの面白さ、冒頭から一気にその世界観に引き込まれ、最後のオチも一本とられた気持ちになって、ショートショートの真髄を感じさせていただきました。

お話が生まれるために大切だと感じたこと

みんなが作ったお話が、本当にどれも面白かった。その理由は、そのアイディアやセンスだけではなく、田丸さん始め、ぐるぐる探究隊の皆さんや周りの人たちがそれを面白がっていったからだと感じました。最初の小さなアイディアの段階から、全力で肯定してくださいました。田丸さんの言葉は、ふわっとした曖昧な言葉ではなく、本気でその中から素晴らしいポイントを見つけて、とてもシャープに全肯定をしてくださるので、その言葉から刺激を受けて膨らみ、ますます素晴らしいものになっていきました。

そして、そのコメントはどちらかの方向に誘導するわけでもなく、ただひたすらに称賛するものでした。アイディアをブラッシュアップするというよりも、その人の中でまた何かが生まれるのをぐっと待つような印象を受けました。だからこそ、その人がそのアイディアをさらに好きになって、その人やその人たちのものになっていくのではないかと感じました。

田丸さんは、ショートショートのお話を書かれている上に、誰でもが書けるような講習をされたり、ビジネスの場でも研修などをされているそうです。ショートショートは短いからちょっとした隙間を彩ることができるとお話されていたことが印象的でした。最近だとショートショート小説が入ったラベルのビール缶の制作をされたりもしたそうです。

そんな隙間に、ありったけのアイディアを詰めていくワクワクした気持ちは、きっと人生でも色々な場面を豊かにしていくのではないかと感じましたし、ビジネスでも画期的で想いのこもったものが生まれていくのではないかと思いました。

いつも心にワクワクしたアイディアを。
そして全力の肯定を。
それがこの世界をキラキラと輝かせてくれる。

そんな素敵なお土産をいただいた時間となりました。

2日目 企画展見学

初日は飛行機の関係で時間がとれなかったので、二日目にじっくりと企画展を見学させていただきました😊

縄文が好きという場合でも、どこに惹かれるのかは人それぞれだと感じています。私は、元々は世界の狩猟採集民の本を読み、文化人類学の視点から彼らの精神性に惹かれていきました。民族によって異なる文化を持ちつつも、「自由で、一人一人が自律していて、共有して分け与える。そして遊びや余暇の時間もある。そして彼らはとても知的で、動植物などの自然との関係性を深く知る賢い人々である」という共通項があるらしく、その世界観にキュンとしてしまったのでした。また、NHKの番組で、狩猟採集民が共同育児をしていて、母乳さえ他の子に与えるほど、集団で育児をしていた事も知りました。現代では母親が全ての責任を背負って苦しくなってしまっていますが、それは本来のヒトの自然な姿でない、という事も、狩猟採集民に興味をもった理由の一つでもありました。

その中でも縄文は、狩猟採集を中心としながらも、定住生活をして、平和で豊かな文化を築いたといわれ、一万年以上も続いた世界でも珍しい文化。森と共に生きてきた日本の素晴らしい文化だと思います。

そんなこんなの縄文に触れて体験出来たのが、この縄文展でした。

縄文展で感じたことは、身近に感じられるような情報がたくさんありつつ、実際に自分が体験できるものがたくさんあるということ。また、その感想が書かれたカードがたくさんあってカード越しに感想をシェアし合えるということ。難しい知識ではなく、等身大の縄文人を同じ人として感じられるような空間でした。会場全体がとても可愛らしい雰囲気に包まれていたことや、情報提供も難しい雰囲気でなくとても分かりやすく、ナビゲーターの犬のジョーのイラストが案内してくれる世界観なども、親近感をもって縄文の世界に入り込めた理由のひとつだと思いました。

相棒のジョー!かわいい。

私のお気に入りスポットをご紹介します。一つ目は、中空土偶と会える部屋。これは現地での感動を味わってほしいのであまり伝えません。が、ちょうど私が入ったタイミングが他の人が誰もいない時間で、中空土偶と二人きりになって、見つめ合えた時間でした。その時代の精神世界に惹きこまれていくように、中空土偶とお話ができたような、鳥肌がたつ感覚を味わえた贅沢な場所でした。

お気に入り二つ目は、人気スポットの鹿撃ち体験コーナー。

弓矢で鹿を狙います!

朝イチで行くことができたので、大人の私が占領することができ、何度も遊ばせていただきました(笑)。縄文LOVEの気持ちの込めながら体験したところ、結構当たってご満悦になれました(笑)。感想カードでは、鹿に当たらなくて難しい!縄文人ってすごい!の声が多数書かれてありました。自分がやってみるとその難しさも分かるし、この弓はどうやって作ったの?何で出来ているの?と疑問もぐっと沸いてきます。体験することで、ぐっと解像度が高まる様子を見させてもらったことも、とても興味深かったです。

3つ目は、感想カード展示コーナー。みんなが感じたことが、たくさん飾ってありました。その量もすごい量!この縄文展で感じたこと、びっくりしたこと、疑問に思ったことなどが描かれていて、いつまでも眺めていられるところでした。子どもたちは、「シカ撃ちが難しかった!これができる縄文人ってすごい」「シカの皮でタイコができてるなんてびっくり。大きさによって音が違って面白い」「(成人するタイミングで抜歯をするのですが)抜歯なんて絶対いやだ!」など、素直な感想がいっぱいありました。
大人も様々な感想を書いていて、「平和ってなんだろう?」「縄文時代の知恵が今の時代に何かヒントをくれそう」などの深い感想も多数ありました。

他にも、巨大年表パネルは、世界の出来事との繋がりがあって、ちょうど自分が整理したいポイントだったのでずっと見ていたくなりました。また各種本物の展示や、縄文展スペース外にある鹿のアクセサリーや勾玉作り体験、縄文風ピザを食べられるレストランや、超かわいい縄文グッズのお土産など、見所いっぱいであっという間に一日が過ぎていきました。

シカのアクセサリーと勾玉。ここから磨きこみます。

縄文展で感じたこと

縄文のことなんて、普通の人は思いを馳せる時間もまずないテーマだと思います。でも、こんな風に分かりやすく、身近に感じられる伝え方をすれば、興味をもって面白いと思うことなのだと知れました。子どもは子どもなりに、大人は大人なりに、自分の興味関心と繋がりながら、縄文から感じることがそれぞれにあったようでした。

大きな戦争がない時代が1万年も続いたといわれる縄文時代ですが、一方で平均寿命は30~40才だったり、大人になるときに抜歯という儀式があったり、厳しい環境もあったとのこと。「生きる」ということ時代に一生懸命だったのではないかと思います。

縄文時代を思うと、そこに希望もあるし、一方でそこから発展して安心安全に暮らせるようになってきた人類の進歩も感じます。昔がいい、今がいいという話ではなく、これからの未来をどう創っていくのかを考えていくことの大切さを改めて感じました。何かをユートピアにするのではなく、起こった出来事をありのままに捉えること。縄文時代も、現代も、素晴らしい側面と、苦しい側面があります。ここまで生きていた全ての人たちによって、その時代になりに思った改善を加えてきた結果、今がある。そして、私たちは未来をつくる一人のヒトである。1万年も続いた時代からヒントを得ながら、人々が幸せに生きていける未来に少しでも貢献していきたい。きっとその時は、わくわくするようなアイディアや空想や妄想から、見えてくる世界がある。そんな事を感じた縄文展でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?