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らせんの本棚

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SF、ファンタジー、実用書からマンガ、画集、絵本などなど、アトランダムに紹介するレビュー集。神楽坂らせんが読んで「グッ!」と来た本を不定期に紹介していきます。もちろんネタバレはな… もっと読む
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#おすすめ本

『ドードー鳥と孤独鳥』レビュー

『ドードー鳥と孤独鳥』川端裕人:著 🦤 この素晴らしい装幀でこそ包み込める、厳粛で、壮大な生物史の物語。 遺伝子、ゲノムから細胞、生物、命、生物相、土地、気候、環境、そしてすべての歴史の、めぐるめぐる堂々巡りの旅路。 これは本当に一言では説明も紹介もしづらい、心をゆさぶる物語。 そう、フィクションだからこそ書くことができた物語。しかし、とても現実的、知的、史実的で、コロナ騒動を経た「今」だからこそ書かれるべきだったのではないか。そして、川端裕人という著者の仕事歴、作品歴

『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ 3』レビュー

『 ツインスター・サイクロン・ランナウェイ 3 』小川一水(著) ♡ 来た来た、キマシタ! 第三巻!! もう1,2巻は読まれてますヨネ? え? まだお読みでない?? ソンナバカナ、全人類が読むべき(言い過ぎ)の『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ』シリーズを、まだお読みでない?? まあ、それも良いでしょう。いまから楽しめるんですからね。 ちょうど今、kindle Unlimitedの読み放題対象に小川一水センセの作品群が沢山はいっていて、その中に『ツインスター・サ

『ライトニング・メアリ 竜を発掘した少女』レビュー

『ライトニング・メアリ 竜を発掘した少女』アンシア・シモンズ(著/文) 布施 由紀子(訳) カシワイ(絵) 📚 19世紀初頭、まだ人々は信仰と科学の折り合いがつけられず、ごく一部の科学者以外のほとんどの人は聖書に書かれていることだけが本当で、すべての動物はそのままの姿で神様によって作り出されたと信じられていた時代。 土の中からたまに現れる奇妙な形の石=化石は、あるわけのない異物。または、「神様の失敗作」と言われていました。 イギリス南西部ドーセット州の小さな町、ライム・リ

『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ 2』レビュー

『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ 2』 小川一水(著)🚀 の続きです。 主人公二人がめっちゃすてきで可愛くてかっこよくてサイコー。もう離れらんないっ!! ってことで、連続でいきます。 でもでも、①よりページ数多いけれど、でもでもでもでも、ああああー、読み終わっちゃったー。続き早くー!! と、既に禁断症状が出始めた『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ』シリーズ、二巻目なのです。 🚀 一巻目でとってもドラマチックにお互いの気持ちを確認しあった二人。当然、ラブラ

『地獄の楽しみ方』レビュー

『地獄の楽しみ方』 / 京極夏彦📚 小説家・京極夏彦さんが、17歳の高校生たちへ語った、『地獄のようなこの世を楽しく生きていくための「言葉」徹底講座』です。 2019年に出版された黄色い表紙のソフトカバー版『地獄の楽しみ方 17歳の特別教室』が文庫になって再登場。電書版もでてますね、これはほんと、多くの人に読んでほしい本なので、文庫大歓迎! なのです。 さて、その内容は……。 さすがは「言葉」のプロなのです。 最初に、『僕がこれから話すことは、役に立つことではありませ

『猫のゆりかご』レビュー

『猫のゆりかご』 カート・ヴォネガット・ジュニア (著) / 伊藤典夫 (訳) 🐈 ご存じカート・ヴォネガット・ジュニアの出世作であり代表作。 世界を破滅させる超発明『アイスナイン』をめぐる物語であり、『ボコノン教』という疑似宗教の伝道書でもあります。 まず、超兵器アイスナインとは、簡単に言えば水を常温で固体化(氷)にする発明。凝固点が常温で、融点が45.8 ℃という不思議な水=氷です。 通常、水が氷点下の気温で凍り付くときは、最初に結晶構造を決める「結晶の種」から同様

『ゼロからつくる科学文明』レビュー

『ゼロからつくる科学文明』  タイムトラベラーのためのサバイバルガイドライアン・ノース(著) / 吉田三知世(翻訳) ⌚ 突然ですが、あなたのお家のタイムマシン、だいじょうぶですか? アレ、出先で故障しちゃったら大変ですよね>< とはいえ、時間旅行には事故がつきもの。 バックトゥザフューチャーでもドラえもんでも、かの H・G・ウェルズの時代からの伝統なのでしょうか、タイムマシンってやつはけっこう壊れやすくって、大昔や遠未来にタイムトラベラーが置き去りになってしまう事故は枚

『日出処の天子』《完全版》レビュー

『日出処の天子』《完全版》山岸涼子(著) 📚 無人島に一冊(1シリーズだけ)持っていくなら? とか、貴女のナンバーワン少女漫画は? という問いに、多くの女子が間違いなくコレ。と答えたという(要出展)山岸涼子の『日出処の天子』。 かくいうワタクシも文庫本でそろえてあったのですが、この度なんと完全版がオール電子書籍化したということで、再度一気にそろえてしまいました。 この、電子化第一弾となる『日出処の天子』を筆頭に、 山岸涼子さんの多くの作品が一挙に電子化!! ありがた

『歴史は不運の繰り返し』レビュー

『歴史は不運の繰り返し』 セント・メアリー歴史学研究所報告 ジョディ・テイラー(著) / 田辺 千幸(訳) 📚 みんな大好きタイムトラベル。 わたし大好き女性主人公。 そんでもって舞台はイギリス。(なぜかアメリカは国境閉鎖している世界) この段階で好きな本っぽい三要素そろってますw さてさて、その主人公、マデリーン・マクスウェル(マックス)は大学出たての歴史学者の卵。博士号は持っているものの就職先のあてのない、いわゆるポスドクです。(どこも同じなのねぇ……><)

『すうがくでせかいをみるの』レビュー

『すうがくでせかいをみるの』 ミゲル・タンコ(著) / 福本 友美子(翻訳) 📚 またまたちょっと変わった絵本のご紹介♪ よりにもよって数学の絵本ですw でもこれ、とっても幸せにあふれている本。 幸せな数学好き少女のお話なのですよ。 普通、数学が好きな女の子、というだけでもう、なんというか世間から排除されちゃいますよね。 よくてまあ人とはちがう、普通でない「変わった子」扱いをされてしまうことでしょう。家族からだって、扱いにくいとか、女だてらに勉強なんて……よりに

『ドードーをめぐる堂々めぐり』レビュー

『ドードーをめぐる堂々めぐり』 正保四年に消えた絶滅鳥を追って川端裕人(著)🦤 ドードー (dodo) 🦤は、マダガスカル沖のモーリシャス島に生息していた絶滅鳥類。 大航海時代、1598年にモーリシャス島を訪れたオランダの探検艦隊によって初めて存在が確認された飛べない鳥で、発見されてからわずか83年後の目撃情報を最後に絶滅してしまった幻のトリです。 幻ゆえに、そして、飛べない事とずんぐりした愛嬌ある身体つき(これは初期の想像図によるミスリードだったそうですが)ゆえに「

『白鹿亭奇譚』レビュー

『白鹿亭奇譚』 アーサー・C・クラーク (著) / 平井 イサク (訳) 🦌 ご存じ、『2001年宇宙の旅』の原作者(というか、かのスタンリー・キューブリックと共同で制作、脚本を担当した)アーサー・Ⅽ・クラークのSF法螺話です。 クラーク先生といえば『2001年』。なのですが、それだけじゃありません、静止衛星という概念を考案して、衛星通信の基礎をつくったり、スリランカの位置をすこしばかり南に動かして軌道エレベーターを建造したり(『楽園の泉』の中のネタ)、大英帝国勲章を

『着眼と考え方 現代文解釈の基礎』レビュー

『着眼と考え方 現代文解釈の基礎』新訂版 遠藤 嘉基(著/文) /渡辺 実(著/文) ◇ いきなり教本の紹介です。 そして、いきなり裏表紙の紹介文張っちゃいます。 半世紀近くにわたって読み継がれた、至高の現代文教本がここによみがえる! 「文章を読む」とは、書かれた言葉の何を拾い上げ、それらをどう関係づけることなのか――。数々の小説や評論を題材に、重要な箇所をどのように見分けるかを、実演を織り交ぜながら徹底的に解説する。本書は、「文学的な文章」「論理的な文章」の2パ

『息吹』レビュー

『息吹』テッド・チャン (著) / 大森望 (翻訳) ◇ 現代最高のSF作家は誰かと聞かれたら、なかなか答え辛いところですけれど、すくなくともベストテンの中には絶対はいっていると思うのがこのテッド・チャンさま。 驚くべくことに、この長編流行りの時代に、ほぼ短編だけで勝負されていて、しかもとっても寡作な方。この『息吹』は第二短編集なんですが、第一短編集の『あなたの人生の物語』から17年でようやく二冊目。という超寡作。 だのに、出す短編が常にSFの世界的な賞を軒並み受賞し