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らせんの本棚

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SF、ファンタジー、実用書からマンガ、画集、絵本などなど、アトランダムに紹介するレビュー集。神楽坂らせんが読んで「グッ!」と来た本を不定期に紹介していきます。もちろんネタバレはな… もっと読む
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#短編集

『あけましておめでとう計画』レビュー

『あけましておめでとう計画』/ 『キャベツ畑でつかまえて』 ―実録・日本テレワーク物語―野田昌弘(著 ――― 元旦なので、なにかおめでたいお話を~、とおもって本棚から引っ張り出した古い本がこちら。 もとは1985年元旦(というから37年前!!)に発行された本で、その後、1990年に『キャベツ畑でつかまえて』に改題されて再発行されました。 その表紙はこちら どちらも加藤直之さんの絵で、なんだか目つきの悪いガチャピンと、三角眉毛のふくよかなおじさんが描かれています。この、ち

『人之彼岸』レビュー

『人之彼岸』(ひとのひがん)郝 景芳(ハオ・ジンファン)(著)/ 立原透耶・浅田雅美(訳) ◇ 『折りたたみ北京』で、『三体』に続いてヒューゴー賞を中国SF界にもたらした郝 景芳(ハオ・ジンファン)さんの短編集です。 彼女は1984年に天津市で生まれ、清華大学で天体物理を学び、その後、経営学と経済学の博士号を取得。なるほど『折りたたみ北京』の著者らしいプロフィールです。けしてどっちつかずではなく、理系と文系の両方を専門にしている作風が素晴らしい。 境界線があいまいで、

『あなたの人生の物語』レビュー

『あなたの人生の物語』テッド・チャン(著) 浅倉 久志(訳) ――― ――― ネビュラ賞を受賞し、映画「メッセージ」の原作となった表題作の他、現代短編SFの名手として知られるテッド・チャンの8本の短編を収録した作品集です。 寡作な方のようで、あまり作品数は多くないのですが、ものすごい打率で名作揃いなのですよね。実際、この短編集に収められている8篇の殆どはネビュラ賞、ヒューゴー賞、ローカス賞などなどを総なめしています。 あんまり賞とったからスゴイスゴイと太鼓持ちをす

『なめらかな世界と、その敵』レビュー

『なめらかな世界と、その敵』 伴名 練(著) ――― ――― おんもしろかったです! 短編集なので、例によってそれぞれざっと一言づつ紹介をしておくと…… ◇ 『なめらかな世界と、その敵』 表題作。表紙のイメージこれかしらん? 青春SFでちょっぴち百合成分♪ 最初わけのわからない状態から始まって「なめらかな世界」の意味に気が付いた時に印象がガラッと変わります。この世界の認識の相転移感がとってもセンス・オブ・ワンダー。読了感もさわやかでよいです。 『ゼロ年代の臨界

『反対進化』レビュー

『反対進化』エドモンド・ハミルトン (著), 中村 融 (翻訳), 市田 泉 (翻訳) ◇ エドモンド・ハミルトン といえば、SFの創成期に活躍された方で、キャプテンフューチャーで有名なスペース・オペラの超大御所さまです。 しかし、いわゆる典型的な、 危機に陥った世界を救うためにさっそうと現れた主人公が科学と知力と(時に腕力)で悪を倒して世界を救ってついでに美女もものにしちゃう。 というアメリカ人好みのやつをパターン化して量産してしまったがために、当時のSFの