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らせんの本棚

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SF、ファンタジー、実用書からマンガ、画集、絵本などなど、アトランダムに紹介するレビュー集。神楽坂らせんが読んで「グッ!」と来た本を不定期に紹介していきます。もちろんネタバレはな… もっと読む
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#SF

『三体0 球状閃電』レビュー

『三体0 球状閃電』劉 慈欣(著)/ 大森 望、光吉さくら、ワン・チャイ(訳) 〇 主人公、陳(チェン)の14歳の誕生日。 嵐となったその夜、両親と食卓を囲んでいたところ、突然、彼らの眼前に家の壁を通り抜けて球状の雷(ボール・ライトニング=球状閃電=球電)が現れました。 うっかりその球電に触れてしまった両親は、閃光とともに一瞬にして灰となってしまいます。 その衝撃的な瞬間が陳(チェン)少年の人生を完全に方向づけ、球電現象の研究の道に進むことになるのでした。 しかし、この

マーダーボット・ダイアリー『逃亡テレメトリー』レビュー

マーダーボット・ダイアリー『逃亡テレメトリー』マーサ・ウェルズ(著) / 中原尚哉(翻訳) 📚 ( ゚∀゚)o彡゜弊機! 弊機!  というわけで、個人的大人気の弊機ちゃんが活躍するマーダーボット・ダイアリーの最新巻三作目です。 第一作は ↑で、第二作は ↑で、それぞれレビューしています。(できれば↑もどーぞ♪) 三作目である今回は、表題作『逃亡テレメトリー』と、『義務』、『ホーム――それは居住施設、有効範囲、生態的地位、あるいは陣地』の二短編を収録しています。

『歴史は不運の繰り返し』レビュー

『歴史は不運の繰り返し』 セント・メアリー歴史学研究所報告 ジョディ・テイラー(著) / 田辺 千幸(訳) 📚 みんな大好きタイムトラベル。 わたし大好き女性主人公。 そんでもって舞台はイギリス。(なぜかアメリカは国境閉鎖している世界) この段階で好きな本っぽい三要素そろってますw さてさて、その主人公、マデリーン・マクスウェル(マックス)は大学出たての歴史学者の卵。博士号は持っているものの就職先のあてのない、いわゆるポスドクです。(どこも同じなのねぇ……><)

火星シリーズ:『火星のプリンセス』レビュー

火星シリーズ:『火星のプリンセス』 エドガー・ライス・バローズ (著) / 厚木 淳 (訳) ◇ どんどん古典に走ってる今日この頃ですw 今回は、ご存じ(かな?)火星シリーズ第一作の『火星のプリンセス』。 著者のエドガー・ライス・バローズさんは、このシリーズの他に、あの『ターザン』シリーズを書かれてます。ジャングルの王者ターザンで大ヒットを飛ばした人気作家が、空想科学小説を出した! ってことで、これまた大人気シリーズになったそうです。 ターザン・シリーズは1914

『白鹿亭奇譚』レビュー

『白鹿亭奇譚』 アーサー・C・クラーク (著) / 平井 イサク (訳) 🦌 ご存じ、『2001年宇宙の旅』の原作者(というか、かのスタンリー・キューブリックと共同で制作、脚本を担当した)アーサー・Ⅽ・クラークのSF法螺話です。 クラーク先生といえば『2001年』。なのですが、それだけじゃありません、静止衛星という概念を考案して、衛星通信の基礎をつくったり、スリランカの位置をすこしばかり南に動かして軌道エレベーターを建造したり(『楽園の泉』の中のネタ)、大英帝国勲章を

ハヤカワ銀背の箱入り娘☆

ハヤカワの銀背ってありますよね。Wikipediaによると ハヤカワ・SF・シリーズは、早川書房が1957年12月から1974年11月までに318冊刊行したSF小説の叢書。~ ファンからの愛称は「銀背」。 と書かれてます。 ハヤカワのSFマガジンが1959年からなので、その2年まえから出ていたSFのシリーズなのですねー。 うちにも何冊か、ちょう古典の定番がとってありました。 ↑こんなかんじ。写真だと茶色っぽい『タイム・マシン』と『海底二万リーグ』は金背といわれてるや

マーダーボット・ダイアリー『ネットワーク・エフェクト』レビュー

マーダーボット・ダイアリー 『ネットワーク・エフェクト』 マーサ・ウェルズ(著/文), 中原 尚哉(翻訳) ◇ きましたよー! 弊機! マーダーボット・ダイアリーの続編です! 前編はこちら のレビューで語っていますのでまずご覧いただくとして、前編(マーダーボット・ダイアリー)で弊機ちゃんについで私の中で大人気のART(不愉快千万な調査船)さんが再登場! それも、すごい役どころで!! さて、どのくらいすごい役どころかというと、うーん、ネタバレになりかねないところで苦し

『マーダーボット・ダイアリー』レビュー

『マーダーボット・ダイアリー』(上・下) マーサ・ウェルズ(著/文), 中原 尚哉(翻訳) ◇ お仕事されてる人は自分の会社のことをよく「弊社」って言いますよね。 弊社とは、自分の属する社の謙称のこと。 自分の会社のことを示す際に使用するへりくだった表現、謙譲語である。 弊社の語は、相手の会社に対して自社が格下であるというニュアンスを含んでおり、社外の人間に対して「我々の会社」と言いたい時に使用する表現である。(Weblio辞書より) と、あるとおり、相手の会社よ

『火星へ』レビュー

『火星へ』上・下 メアリ・ロビネット・コワル (著) / 酒井昭伸 (翻訳) ――― ↑で『宇宙へ』向かった初の女性宇宙飛行士〈レディ・アストロノート〉シリーズの続編です。 ――― 1960年代初頭。前作、『宇宙へ』で地球に衝突し未曾有の大被害を引き起こした〈巨大隕石〉の影響は、いったんは落ち着いてくれたものの、大氣中に広まった塵による温室効果で遠からず地球は死の星になってしまうことは確実視されていました。 人類存続のためには速やかに宇宙へ、そして他の惑星へ移住し

『三体』レビュー

『三体』Ⅰ劉 慈欣(著) / 大森 望, 光吉 さくら, ワン チャイ(翻訳) / 立原 透耶(監修) 『三体』Ⅱ 黒暗森林(上・下) 劉 慈欣(著) / 大森 望, 立原 透耶, 上原 かおり, 泊 功(翻訳) 『三体』Ⅲ 死神永生(上・下)劉 慈欣(著) / 大森 望・ワン チャイ・光吉さくら・泊 功(翻訳) ――― 全五冊。まるっとレビュー、ネタバレ無しでいきます。 ☆ ☆ ☆ ようやく! 三体三部作完結(の日本語版)です!! いやあ、Ⅰのころからすご

『折りたたみ北京』レビュー

『折りたたみ北京』 現代中国SFアンソロジー #ケン・リュウ /編 ◇ 『紙の動物園』で知られるケン・リュウさん(中国読みで劉宇昆=リウ・ユークン)が編纂・英訳した、気鋭7名の中国作家による13作品+3本のエッセイ+ケン・リュウさんの序文+各作家の紹介文、という、ちょー盛り沢山。詰め込みに詰め込みまくった中国SFのアンソロジーです。 今、中国SFがとってもアツいわけですけど、『紙の動物園』のようにご自身で書くだけでなく、あの劉 慈欣(リウ・ツーシン)作『三体』の英訳

『宇宙【そら】へ』レビュー

『宇宙【そら】へ』メアリ・ロビネット・コワル (著) / 酒井昭伸 (翻訳) ――― 時は西暦1952年。人類の技術はようやく宇宙開発のとば口にさしかかり、やっと数個の小さな人工衛星を打ち上げることができたぐらいの時代。 当然アポロ計画なんてないし、まだ有人ロケットも打ち上げられていなかったころです。 そんなある日、突然に巨大な隕石がアメリカはワシントンD.C.近海へ落下。 アメリカの首都を一瞬にして文字通り消し去り、東海岸に未曾有の被害をもたらします。 その日、ロ

『白熱光』レビュー

『白熱光』グレッグ イーガン (著), 山岸 真 (翻訳) ――― グレッグ・イーガンですよ。ハードSFですよ!! いやあ、すごかったー。堪能しました~☆ 奇数章はるか未来の銀河系、人類はとっくにポストヒューマンでトランスヒューマンしてまして、暗号化されたデータ信号に変調されて光の速さで銀河中を飛び回り、バーチャル世界とリアル世界の行ったり来たりはあたりまえ、どんなところでも好きなように仮想化も実体化もでき、好きなだけ存在(永遠に生きられる)できるという、もうほ