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らせんの本棚

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SF、ファンタジー、実用書からマンガ、画集、絵本などなど、アトランダムに紹介するレビュー集。神楽坂らせんが読んで「グッ!」と来た本を不定期に紹介していきます。もちろんネタバレはな…
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2021年9月の記事一覧

『息吹』レビュー

『息吹』テッド・チャン (著) / 大森望 (翻訳) ◇ 現代最高のSF作家は誰かと聞かれたら、なかなか答え辛いところですけれど、すくなくともベストテンの中には絶対はいっていると思うのがこのテッド・チャンさま。 驚くべくことに、この長編流行りの時代に、ほぼ短編だけで勝負されていて、しかもとっても寡作な方。この『息吹』は第二短編集なんですが、第一短編集の『あなたの人生の物語』から17年でようやく二冊目。という超寡作。 だのに、出す短編が常にSFの世界的な賞を軒並み受賞し

【SFは絵だねぇ】『デューン 砂の惑星』の巻

もうじき新作の映画が公開されるという『デューン 砂の惑星』。 ご存じフランク・ハーバートの名作です。私も過去何度かレビューしてきましたが、今回取り上げるのはこちらっ! 昭和47年12月31日発行(って大晦日だ!)の旧ハヤカワ文庫版。の、表紙&挿絵についてです。 ご覧の通り、表紙の絵が石ノ森章太郎さん(当時は「ノ」が入っていない石森章太郎)です。もちろん挿絵も石ノ森先生画です。これが素晴らしいんですよー☆ このころのSF小説本って、こんな風に表紙に漫画家さんを起用してい

『人間の手がまだ触れない』レビュー

『人間の手がまだ触れない』ロバート・シェクリィ(著)/稲葉明雄・他(訳)📚 古典SF(といってもいいかな?)の短編集です。 1950年代に一世を風靡したSFの原点! 特に日本の第一世代のSF作家の皆様に多大な影響を与えたというロバート・シェクリィの短編集第一弾です。 シェクリィの作風としては、一言で言えば不条理ユーモアSF。当時売り出し中だった筒井康隆氏のことを指して「和製シェクリィ」などと言われていたといえば、だいたい通じるでしょうか。 不条理であって、ユーモアもあり

『翼よ、あれがパリの灯だ』レビュー

『翼よ、あれがパリの灯だ』チャールズ・リンドバーグ(著) 佐藤亮一(訳) 《現代世界ノンフィクション全集22》より 🛩 タイトルの『翼よ、あれがパリの灯だ』という言葉と、ニューヨーク~パリ無着陸飛行についてはよく知られていますが、その言葉を発するに至った物語のほうはあまり知られていない気がします。(映画にもなったらしいけれど、私は知りませんでした><) 本書を読むと、当時の、今から考えたらまるでおもちゃのような飛行機で成し遂げられた快挙は、本当に文字通り命がけの「

大森望(編)『ベストSF2020』レビュー

『ベストSF2020』 大森望(編)――― いきなり別出版社の本の話ですがw 創元SF文庫で2008年から2019年まで12年間出されてきた『年間SF傑作選』の精神的(?)後継者として、あの(?)竹書房から刊行されたのが本書。2020年の年間ベストSF傑作集です。 編者はご存じ大森望さん。創元版は日下三蔵さんとペアで編纂されていたので、今度は大森望氏単独セレクションの〈ベスト日本SF〉集というカタチです。 2020年と言えば、コロナ禍が始まったばかりのころ。集められた作