「違国日記」読んだ
masterpiece.
忘れないうちに読後感メモ。
【以下、「違国日記」(ヤマシタトモコ・祥伝社)のクライマックスシーンへの言及を含みます。読んで感動が薄れることはないと信じますが念のため⚠️】
無意識の傷の代償として豊富な語彙を得て、それでも言葉で捉えきれない何かにむけて言葉を紡ぐことを生業としている槙生サンと、無意識に空いた穴の「さみしさ」から、限られた語彙に多様な意味を盛り込もうとする朝ちゃんの間で、最終的に「コミュニケーション」が成立する奇跡的な物語である。
槙生サンは圧倒的な言葉の操り手であると同時に、社会生活面ではかなり「エッジにいる」人物として描かれていて、そういう自分を認めてくれる同業者を含めた限られた人たちと過ごしている。朝ちゃんは「なんで両親死んでておばが小説家なのにワタシの音楽はパッとしないんだろう」と、ある意味すっとぼけたことが現在の関心事で、そのなかで自分の中の「欠落のオリジン」としての父親像を「探偵」していく、というのが後半の主なストーリー(前半はお膳立て)で、「どんなに言葉を積み重ねても足りないんだ」族と「かんたんにいってくれないとわからない〜」族の衝突と和解が今日的な風俗のもとに描かれている。masterpieceだと思った。
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