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元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜㊶

「なぁ……。君を……ここから連れ出したいと考えてる。
ただ今のこの状況下だと難しいのは理解しているが。
ただどうしても必要なものが……。それは……勇者の証を身に着けた人。
つまり、国王が必要だ……。そしてその為にも俺は一度……国に帰るつもりなんだ。
ただ……そこでの問題が……。実は、俺は既に国王から追放された存在になっているのさ。
だから戻れば当然……捕まり処刑される。そんなところへ……君を連れて行くということはできない」
ただそんなことを言うのも、彼女を悲しませるだけだというのは理解していた。
ただ……言わなければいけないことだと思っていたから俺は正直に伝えることに決めたのである。
「でもな……。今の俺は違うぞ……。だって今の俺は……。彼女のおかげで変わることが出来たのだと思う……。
彼女のおかげで強くなれたと思っているしな、自信を持って宣言することも出来ると思う、
以前の弱かった自分とは違うというふうにな……。だからもし、もしもの話だよ、
彼女が良ければで良いんだがな、一緒に来るかい? ……ただし条件があるんだけど、
それを承諾して欲しいんだ」
「条件? ……どんなことか教えてもらえますか? 私の愛は変わらないのですし、
どのようなことでもそれで貴方が守られるというのであれば……。
お願いします聞かせてくださいませんでしょうか?」
彼女がそういうことを言ってくる。
そんな彼女を見ると俺は決意を決める事が出来た為、はっきりと告げることにしたんだ。
そしてそんな時だったんだ……。
俺達の元に突然何者かが現れると、俺たちの前に一人の男が現れ、俺達の会話を中断させてきた。
そして彼は俺に近づいてきて話しかけてくると……突然、 俺の胸に剣を突き刺してきたのだ。
俺に痛みを感じる暇さえ与えることもなく……。そして…… そして男は……そして突然、
男が、俺に向かって襲いかかってきた。
しかし……。俺も咄嵯のことで何も出来ないわけではなかったのと……。
相手の動きが予想よりも速かったために避けられず、俺の胸へと、男の突きが見事に入ってしまう。
だが……。ただそれだけではなかった。次の瞬間、俺に衝撃が走る。
「え……なんで……」
俺が、その光景を目の当たりにして驚きの声をあげる。
なぜなら……。相手である、黒い甲冑を着た男性が俺の方を見て、
驚いていたからだ……しかし俺はそのことに関しては今はどうでも良い。俺にはもっと重要な事があるのだ。
なぜ、俺の体に入り込んでいる物が、あの女性の中に入っていたはずの、俺の腕であるということなのかを……。
ただ俺は……自分の腕を見る。俺の手の中には先ほどまで俺に
襲い掛からんとした男性の手が握り締められていたのだ。
俺は……俺はどうしてしまってんだ……?
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そしてその手に感じる感触に……そして握った拳を開けようとしても開かないことに俺は違和感を感じ、
「え……あ……。く……体が勝手に……動いちゃって……」
俺も戸惑ってしまいながら声を上げるとそれと同時に俺は自分が何をしてしまったのかに
ようやく気が付く事になる……俺の口から出た言葉を耳にしたことでだ。
俺は今自分の意思に関係なく……この見知らぬ黒ずくめの鎧姿の男性の体を乗っ取り乗っとしまったようだ。
しかも……。
何故か分からないのだが……俺の意志と関係なくこの男性の動きに合わせようとしているのである。
俺は焦燥しながらも冷静さを欠かずにいられないままだ。
何故なら俺の目の前では既に決着がついているような状態だったからである。
それは勿論……。
「まさか、貴様が裏切るとはな……それもこのような手段を使ってな……。
だがこれでお前が俺に勝てると思わない事……な!」
そう言うと同時にその言葉と共に俺が、その声の主に斬りかかる。
その人物は俺に不意打ちを受けたこともあり俺の一撃を貰ってしまったようで、
よろめいてしまったのだが、なんとか踏み留まると反撃をしようとしたのである。
だが、その時既に遅かった……。
「ぐは! バカな……。なんだと……」
と叫びつつその場に崩れ落ちていき……やがて、絶命した。
俺が、そいつを殺めたんだ。
だからなのだろう…… 目の前にいる人物が死んだのを確認すると……。
「おい……ちょっとまってくれよ。嘘だろ……。
冗談だと言って欲しいな……。こんなことは。頼むよ、目を開けてくれよ……。ねぇ、聞いてるんだろう?」
俺は必死に声をかけたが返事は無かった……。
それでも尚諦めずに俺は彼女に呼び掛けていた。
ただ…… 俺が彼女の名を呼んだところで反応を示すことはなく……。
彼女は死んだままだ……。
「ふー……。仕方がない、このままにして置けないよな……。どうにかできないのか……」
俺は彼女に呼びかけることをやめるとすぐに、魔法を唱えた。
そうするとみるみると傷は塞がり始めた。
(俺にはこの世界で回復が出来る唯一の力があったはずだ……。
この能力を使い続けれはそのうち治せるようになるかもしれない)
とそう思うと少し安心できた。
(取り敢えず、まずは何が起きたのかを確認しなければならない。そのためにはここを出る必要がある)
そう考えたため扉を開けることにする。
(それにしても、一体誰がこんな事を……。もしかしてこいつは魔王側の人間だったりするのか?)
そう考えるが確証は無いのが現状だ。
「とにかく外に出てから色々と考える事にするか……」
そんなことを考えつつ部屋から抜け出そうとする。
幸いと言うべきか、この部屋の窓らしきものは開くようになっていたためそこから俺は脱出する事にしたのだ。
窓から外へ出る際に気が付いたんだが……どうも俺はこの世界の服装をしているらしく、
白いローブのような物を着させられていたんだ。
そして俺は今いる建物を見渡す。
ここは何処かに作られている施設らしいことが分かり、その作りはかなりしっかりしたもので壁などの素材や、
その見た目からかなりの技術で作り上げられていることが分かる。
それに建物のつくりや広さなどからかなり大きな施設のようである事も分かったんだ。
そんな時に俺は気になったことがあり、この部屋に入ってきた人物が
この施設の研究員だとして……その彼がここに居ないことが不思議でならなかった。
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「う……頭が痛くなる……。やっぱり記憶は戻ってないみたいだな。
ただ……この場所についての知識は残っている。確かこの施設は……」
俺は頭を抱えつつも何とか耐える。
この知識がどこから来ているものかを思い出そうとしたのだが、上手くはいかなかった。
ただそのことについては余り重要ではない気がしたため一旦放置することにした。
それより大事なことがあるからだ。
俺は辺りの様子を探っていると人の気配を感じた。
しかもそれは一人じゃないように思える。
俺は慎重にその方へ向かっていったんだ。
すると……やはりそこには、俺と同じように逃げて来たとしか見えない男女数人がいるではないか。
ただそこでおかしな点があることに俺は気づくことになる。
その者達の中に子供や若い女性の姿が見えることから恐らく、
「避難しに来た人達か……もしくは研究をしていた人って感じか。
でもおかしいぞ、一体どうやってこんなところに……一体どうなって」
そんなことを俺は考えているとそこに
「大丈夫か? どこか怪我をしたりしていないか? よし、問題なさそうだね。じゃあいこうか」
と俺に優しく語り掛けてくる者が現れたんだ。
「君は……。うぅ……。すまないな。俺は今、君の知っている名前を名乗るわけにはいかないんだ……。
それに俺自身もまだ……どういった立場に居るかが分かってなくてな……。
だけど一つ分かるのはこの場にこのままいていいはずがないということだ。君たちは一体……」
俺が疑問を口にしようとする。
彼は、優しく微笑みかけると、
「詳しい説明をしてやりたいところなんだが、今は急ごう。このままだと追っ手が来る可能性があるんでね……」
(俺のことを気にしている割に随分あっさりしてるというかさっきの対応がまるで別人みたいな態度だ……。
本当にこいつも俺と同じなのかわからないが……でも確かに俺の記憶の中の誰かに似ているんだよ。
何なんだこれは……。
う……なんか頭痛が……酷い……何か大切なことを忘れてしまっている感覚に陥る……。
でもそれは今の俺にとって何よりも大事だってのはわかる。きっと忘れたらダメなことに違いない。
でも俺はどうしても思い出せない)
「うぅ……ダメか……く……また酷くなっているな。俺ももう限界か……。
悪いがこれ以上君を庇う余裕は無さそうなんだ。さぁ早くここから離れよう」
と俺に手を伸ばしてくるが……。俺は彼の差し出した手を払い除けるように
してから俺は自分で歩こうとするがどうにもならないくらい体に痛みを覚えている。
そんな時であった……。
「うぅ……。体が……いうことを聞いてくれない。クソ! 俺の体め! 動けって言ってんだろう! うぅ……」
と苦しんでいると、俺が動かせていないと思っていた体はどうしたことか動くようになっており、
俺の意思通りに動き出すと……俺は俺に近づいてきた彼に向けて蹴りを放つ。
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ただそこで俺は驚くことになった。
なんせ相手が避けようとしなかったからだ。
その為俺は相手に思いっきり命中させた筈だったんだ。
なのに俺は足に伝わってくる衝撃が思った程でなかったことに戸惑いを隠せなかったのは
事実で……俺は思わず呆然としてしまう。
ただ、その直後だったんだ……俺に突然異変が起こりだすと……次第に体に変化が訪れ始める。
髪の色は銀から白へと変化し、目は赤く染まってしまっていた。
そして瞳の形が変わってしまうと顔付きはどんどん大人びたようなものへとなっていく……そんな変化に
俺は困惑するばかりだったのだ。
そしてそれは同時に自分の意識が俺の物ではなくなっていったことの証明でもあることに俺は恐怖を覚えた。
俺はその気持ちを抑えることができず、そのまま地面に倒れ込んでしまいそうになってしまうが、
その瞬間俺は抱き抱えられたんだ。
そして俺はそのまま、その相手から声をかけられることになった。
しかし、俺が今の状況を理解する暇も無く、更に状況は動いて行く事になる。
俺は、俺を抱きしめてきた人物を目にする事になり驚愕することになる。
そしてその人を見て俺は何も言わなくなってしまったのだ。
その人物はどう見ても…… 女性であり、しかも俺がよく知る人物であり、
見間違うことはないほどの親しい存在の人だった。
その女性は、俺をみてにっこりと笑う。
そう、彼女こそ……俺の妻で娘を産んですぐ他界してしまっていた。
娘、ユリーシャだ……、間違いなく、俺は……自分の目を信じることができないままに
彼女へ質問をすることに決めたのである……。
なんと聞けば良いのだろうなと考えながらではあるが、今はそれどころではなかったし、
それを知るために行動しないと行けなかったため、俺は彼女に話しかける事にした。
彼女なら、俺のことに関して知ってることがあるかもしれないと考えたのもある。
もし俺が何も知らなかったとしても彼女が知らないということはありえるのだし……。
俺の事を俺自身が覚えていなかったとしても、彼女は確実に俺を知っているはずだからだ。
そして俺が彼女の方をじっと見つめると、その口を開いた。
俺はその口から語られる言葉を黙ったまま聞いた。
その言葉が俺にどんな影響を及ぼすかも考えずに……。
しかし……彼女が話してくれたのはとても信じられないものではあったんだけどな……。
そう彼女はとんでもないことを言う。そして……その内容に俺は愕然となっ。
何故なら俺が今こうして俺でなくなったのは、俺に憑依したせいだというのだ。
そしてその事に対して俺は納得できるものではなかった。
何故ならば、どう考えても俺の体を乗っとれるとは思えない。
そもそもこの体に入っている俺の腕にそんな力はないだろう。
だからその事については理解ができない。
いやその話はどうでもいい……。
問題は俺にこの体の主の魂がまだ宿っていないと言うのだ。
そして俺がこの世界に来る前の時間に戻るにはどうすればいのかという話に
なってくるというので俺は驚きを隠しきれなかったのだ!
そしてその理由についても俺は知ることになる。

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