「宿命」は「願望」で変えられるか? J.S.ミル『功利主義』付録1
こんにちは、らるです。
前回で、『功利主義』の本編の紹介は
終わったのですが、付録の内容も
面白かったので紹介します。
…
人間の行為は因果の法則で決まっているか
こんな話を聞いたことがありませんか?
全ての出来事は、原因があって結果がある
だから、この先起こることは全て
もうすでに決まっているんだ。
要は、未来は全部決まってる
という話ですね。
空中でボールを手放せば
必ず地に落ちていくように
全ての物事はどうなるかが
既に決まっている…
とても、もっともらしい話です。
物理的には疑いようのない「因果の法則」が
「人間の意思」にも当てはまるかどうか
というのは一つの哲学的問題になっています。
もし、自分の意思が、これからどうなるか
もう既に全て決まっているとしたら
頑張る気をなくしちゃいますよね。
これに対して、ミルは何と答えるか
人間の意思にも「因果の法則」はある。
ただし、その人自身の願望で
意思は変えることができる
つまり
「因果の法則」は認めつつも
自分自身で変えられるものだ
と述べているわけです。
…
必然の意味
まず、意思の『必然』というのはどういうことか
説明している部分を引用します
個人の心の中に現れている動機を前提とし、また、その性格や気質も同様に前提とすれば、彼の行動の仕方は間違いなく推論できる。われわれがその個人を十分に知りつくし、その人に作用している誘因を把握すれば、われわれは、物理的な出来事について予測できるのと同じくらい確実に、その人の行為を予言できるだろう。
P165
その人の心の中の動機、性格、気質
その人に作用している全ての原因
全部わかっていれば、
その人が何をするかは
予想がつくであろう…というのが
「意思の必然」の説明です。
その通りだな、と思います。
他の人の行動が予想できないのは
その人の中の動機、性格、気質、
その人に作用している原因のどれかが
分かっていないからだ…ということになります。
これもまた、もっともな話です。
…
どうやって自分で意思を変えるのか
先ほど説明した
「意思の必然」の要素
その人の中の動機、性格、気質、
その人に作用している原因
この中で、カンタンに変えられてしまうのは
「作用している原因」です。
例えば、こんな例が考えられます。
ソシャゲのガチャを天井まで引こうとしている人
(その人の現状の意思)に
それだけのお金があれば、他に何ができるかを
一生懸命伝えて(新たに作用する原因)
ガチャを引くのを辞めた。
(新しい意思)
というようなことです。
この例では「作用する原因」を
外から与えた形になっています。
ですが、これは
自分で与えることも可能なのです。
「本人自身の願望」が
意思を変えるために作用する原因の一つに
なり得るわけです。
つまり
「変わりたい」という願いが
自分の中に存在している限りは
自分の意思を変えることはできる
という話なわけです。
希望のある話だな、と思います。
…
まとめ
人の意思は
その人の中の動機、性格、気質、
その人に作用している原因
で決まる。
ただし
その人に作用している原因の中には、
その人自身の願望も含まれている
つまり「因果の法則」が働いていても
「変わりたい」と願う限りは
「自分の意思」を変えることは可能である
ということである。
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