バカヤロー!まだ始まっちゃいねーよ! 【キッズ・リターン感想】
『キッズ・リターン』は
北野武監督の映画です。
1996年に放映されたものになるので
大分古いものになりますね。
あらすじは、こんな感じ。
落ちこぼれの高校生マサルとシンジは、
高校が受験ムードになっても
悪戯やカツアゲなどをして
勝手気ままに過ごしていた。
ある日、カツアゲの仕返しに
連れて来られたボクサーに
一発で悶絶したマサルは、
自分もボクシングを始め
舎弟のシンジを誘うが、
皮肉にもボクサーとしての
才能があったのはシンジであった。
ボクシングの才能がないと悟ったマサルは
ボクシングをやめ、以前にラーメン屋で出会った
ヤクザの組長のもとで極道の世界に入り、
二人は別々の道を歩むことになる。
高校を卒業し
プロボクサーとなったシンジは快進撃を続け、
マサルは極道の世界で成り上がっていく。
Wikipediaより
これが物語中盤までの
あらすじですね。
引き続いて、後半部分の
ネタバレをしてしまいます。
そうでないと
感想を書きたい部分が
書けないので。
ラストシーンがあってこその
この映画だと思いますので。
…以下、ネタバレ注意…
………
……
…
プロボクサーとなったシンジは
悪い先輩によって堕落させられ
結局、引退することになります。
一方、マサルも調子にのったツケで
兄貴分に腕を切られ、極道の道から
追い出されます。
つまり、二人とも
一度は上手くいきかけたものを
全て失います。
そして、有名なラストシーン
自転車に二人乗りをして
卒業した高校の校庭を走りながら
シンジがマサルに
こう問いかけます
「俺たち、もう終わっちゃったのかな?」
マサルは答えます
「バカヤロー!
まだ始まっちゃいねえよ!」
このセリフを最後に
エンドロールが始まる訳です。
…
一時、成功を収めかけたように
見えたところからの転落…
お互い、全てを失ってからの
このやりとり…
このラストシーン、
私は「希望」だと見ています。
この二人
高校もロクに通わず
それぞれ尖った道に進み
上手く行きかけたところで挫折
全てを失い
身体も傷ついています
もう一度、高いところを
目指すにはあまりにも
厳しい状況であり
シンジの言うとおり
「終わってる」と言っても
おかしくない状況でしょう。
でも、彼らは生きています。
二人で会い、笑えています。
今、何も持っていなくても
生きて、誰かと笑えているなら
それは決して
「終わった」人生なんかじゃ無い
と、私は思います。
この映画の登場人物に
対象的な人物が居ます。
マサルの同級生ヒロシ※です。
※名前は劇中に出てきません
Wikipedia参照
ヒロシは、真面目に生きた人間でした。
母子家庭のため、
高校卒業後はスグに就職します。
また、想い人であった喫茶店の娘サチコには
最初そっけない態度をとられつつも
結局は結婚までこぎつけます。
ここまでは良いんです。
真面目に勉強し、就職し、結婚する
キレイにレールに乗っています。
良くなかったのは仕事の方で
最初の就職先は超ブラック企業
パワハラが横行し
彼はタクシー運転手に転職します。
…が、こちらも
酷くブラックな会社
「稼げてないなら、帰らないで仕事して」
というスタンス
真面目なヒロシは
そのとおりに働き
相当無理をしたのでしょう
事故を起こして死亡します。
いくら真面目に積み上げても
死んでしまえば
もう、笑うことはできません。
ヒロシのように
身体が死んでしまった場合は
もちろんですが
たとえ、身体が生きていても
心が死んでしまえば
同じように、笑うことはできません。
真面目に生きていようと
死んでしまえば終わりなのです。
どんなに失敗をして
積み上げたものを全部なくしても
生きて笑えるなら、良いんです。
マサルとシンジは
全て失ったのではありません。
最も大事なものは
しっかりと残っています。
それさえあれば
また、始めることだって
できるわけです。
…
失敗した…
もうダメだ…
終わりだ…
という時、
最後のセリフを思い出したい
「バカヤロー!
まだ始まっちゃいねえよ!」
生きて、誰かと笑えれば
それで十分じゃないか、と。
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