らりるれろ

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アルフォンソ・リンギスにおける「感覚」(sensation)論の1980年代までの生成史整理、およびその解釈上の留意点の提示

要約本発表では、アルフォンソ・リンギスの「旅行記」としての哲学の根底にあるとされる「感覚」論について、1967年から1988年までの間の彼の議論の推移を整理し(第1節)、彼に固有な「感覚」解釈を理解する上で留意すべき事項を明らかにする(第2節)。 リンギスは、「知覚」ではなく「情動性」としての「感覚」を重視し、レヴィナスの「エレメント」の思想に接近し、後に『存在するとは別の仕方で』における可傷性における他なるものから受ける「命法」のあり方を支持した。 しかし1988年に

    • https://note.com/good_deer169/n/n9153005567a3?nt=_8414763 5番地さんからのありがたいレビュー。 末尾にご記載の通り、この発表時点では私も「なんやかんやリンギスは(事物じゃなくて)人を見てるのかな」と思っていたが、よく読んでみると、彼はむしろ徹底して事物の事物性から全てを説明しているらしい。

      • アルフォンソ・リンギス—「旅行記」としての哲学

        はじめに:なぜ旅行記として哲学をするのか?本発表では、アメリカの哲学者アルフォンソ・リンギス(1933-)の “The Alphonso Lingis Reader”(2018)(以下、『アルフォンソ・リンギス読本』)[1]に所収の論文 “The Unlived life is not worth examining”(1999)(以下、「生きられていない生は吟味するに値しない」)[2]の精読を通して、彼が訴えている「哲学における旅の重要性」とは何であるかという問いに答える

        • 企業向け哲学対話について

          はじめに:企業内での哲学対話みなさんこんにちは! 今日は、私が企業向けに行っている哲学対話について、その概要・進め方・会社でやる意義について説明します。 哲学対話の源泉はいくつかありますが、日本では2000年頃に大阪大学臨床哲学研究室のメンバーがハワイでのP4C(=Philosophy for Children、子どものための哲学、学校教育での哲学対話)を踏まえて紹介したのが始まりとされています。 今では学校だけでなく、街中のカフェやオンラインのイベントスペースでフリ

        アルフォンソ・リンギスにおける「感覚」(sensation)論の1980年代までの生成史整理、およびその解釈上の留意点の提示

        • https://note.com/good_deer169/n/n9153005567a3?nt=_8414763 5番地さんからのありがたいレビュー。 末尾にご記載の通り、この発表時点では私も「なんやかんやリンギスは(事物じゃなくて)人を見てるのかな」と思っていたが、よく読んでみると、彼はむしろ徹底して事物の事物性から全てを説明しているらしい。

        • アルフォンソ・リンギス—「旅行記」としての哲学

        • 企業向け哲学対話について

          大学院入試のための西洋哲学史<列伝>

          はじめにみなさんこんにちは、らりるれろです。 お待たせしました。以前公開した「大学院入試のための西洋哲学史の記録(メモ2024年1月)」の正式な版を、ようやくお届けできる状態になりました(希望的観測かもしれませんが)。 このnoteは、西洋哲学・思想を先行する大学学部生・大学院生向けに、定期試験や大学院受験のために必要な西洋哲学史の知識の概略を提供するものです。「列伝」のタイトルの通り、2500年の西洋哲学史の中で絶対に外して語れない哲学者を取り上げ、その思想のキーワード

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          大学院入試のための西洋哲学史<列伝>

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          レヴィナス思想史—その試みと挫折

          概論はじめに 本稿は、学問バー@新宿のイベント(02/23)「哲学対話、レヴィナスに向けて、レヴィナスと共に」でお話しするレヴィナスの思想について、実際にプレゼンする内容よりも詳細に記述したものである。 レヴィナスの思想「について」と書いたが、レヴィナスの思想「について」語ることを、おそらくレヴィナスは倫理的に異議を唱えるだろう。後段で見ていくように、他者を対象化する営みは<私>を分離された自存的存在たらしめる上で必要不可欠だが、そうする行為は常に<他者>からの審問に曝

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          レヴィナス思想史—その試みと挫折

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          プラトン『饗宴』解説(第1章)

          読解の前提歴史的背景 p255の「解説」にある通り、ここで語られている「饗宴」の様子は紀元前416年とされており、プロローグでアポロドロスとその友人がその様子を追憶しているのはそれよりかなり後の時代である(p226の記述の通り、ソクラテスが刑死する少し前、紀元前400年頃と推定されている)。 本作を執筆した時期のプラトンは、イデア論の理論的構築に取り組んでおり、その過程の中で「人間がイデアの認識に至るには、知恵の愛という特別な欲求が必要であり、それはエロスという人間の根源

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          プラトン『饗宴』解説(第1章)

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          読書会レジュメの作り方/社交ダンスとしての読書

          みなさんこんにちは、らりるれろです。 私は色々な場所で色々な読書会をしており、その都度レジュメを作って説明しています。どんなやり方でレジュメを作っているか、簡単に紹介させてください。 まず、本と出会います。この瞬間から私の読書は始まっています。本屋で、Twitterで、Amazonで、あるいは別の本の中で。タイトルや装丁、帯の文が、パッと目に留まる。その時に得られる印象から、読書体験が始まります。 思い立ったが吉日。本の重力には抗えません。気がついたら手元にその本が届い

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          大学院入試のための西洋哲学史の記録(メモ2024年1月)

          はじめにみなさんこんにちは。らりるれろです。 そしてすみません。「院試のための西洋哲学史を作るぞ!!」と息巻いていながら、最低限人前に出せるものを作ろうとするとかなりの年月がかかることに気が付き、早期の公開は断念しました。 その代わり、「とりあえずこのくらいのメモがあれば、阪大の臨床哲学と上智の哲学研究室はかなり余裕で=専門試験で9割取れるくらいで合格できるぞ」という指標の提示を目的として、僕が院試対策として作ったメモの公開に踏み切りました。 働きつつ、論文と研究発表の

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          大学院入試のための西洋哲学史の記録(メモ2024年1月)

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          フーコー「真理と権力」読書会用資料

          はじめに:いま、フーコーについて語るということ 先日、会社の先輩と帰りの電車でバッタリ会った。違う部署なので普段あまり話したことはなかったが、(なぜか)後輩指導の話で盛り上がった。 その先輩は、後輩指導の悩みについて次のように話してくれた。 「コミュニケーションを取るのが難しい子がいてね……。言ったことは丁寧に実行してくれるんだけど、なかなか自分から動けなくて、お客様の前でフリーズしちゃうんだよね。1年かけて矯正したつもりなんだけど、なかなか直らなくて……」 特にビジネ

          フーコー「真理と権力」読書会用資料

          踊り手の存在論ー世界の中に存在しつつ世界を始め直すことー

          衝撃から始まった。文字通りの意味での衝撃である。 存在が踏み鳴らされている。その事実の衝撃が耳をつんざく。 そこでは、存在の音が音楽の中にありつつ、同時に存在の音が音楽を作り直していた。 踊り手の存在をめぐるこの二重性は、この舞台の装置に関係している。 舞台のライトが当たる部分に踊り手がいる。舞台の袖にギタリストと歌い手がいる。 視覚的に捉えれば、光の当たる場所(前景)に踊り手がいて、バックグラウンド(後景)をギターとボーカルが支えていることになる。 私たちがYouT

          踊り手の存在論ー世界の中に存在しつつ世界を始め直すことー

          生きている他者に対して、哀悼可能性を見出すことは可能か:2023/05/06読書会用資料

          要旨本章全体の議論の予告(1~4段落) 本章では、「何によって、私たちは他者の生命を保護しようとするのか」という問いの前提を問う。言い換えれば、「いつ、どんな時に、生命の保護は要求されるのか」、そもそも「何が生命としてみなされるか」という議論の特徴を明らかにする。 他者の生命の保護について論じる際、その問いは特定の一人の他者の保護に関する問いと、特定の人間集団の保護に関する問いに分かれる。本章ではこのうちの前者の問いを扱う(後者の問いについては第3章で論う)。 他者の生

          生きている他者に対して、哀悼可能性を見出すことは可能か:2023/05/06読書会用資料

          『歴史の概念について』(ベンヤミン)原書解読

          なんで翻訳するのか 私はまだドイツ語の入門書を一通り読み終えた程度のドイツ語入門者だが、ベンヤミンの『歴史の概念について』の原典購読会に参加している。 正直、一文の意味を取るのに、普通に10分〜15分程度はかかる。4行以上に渡るような長文だと、30分くらいはザラに掛かる。 それでもベンヤミンの論文は比較的短いので、なんとか心折れることなく読むことができている。 それにしても僕たちは、DeepLやChatGPTなどの生成AIによる翻訳技術が高度に発達した時代で、それでもな

          『歴史の概念について』(ベンヤミン)原書解読