とりとめのない話
稽古前、まっつんがジュースをおいしそうに飲んでいました。
藤原「まっつん、それ、何ジュースですか?」
まつ「缶ジュースです」
藤原「そうじゃなくて、缶の中身を聞いています」
まつ「トマトジュースです」
藤原「俺、どうにも苦手なんです」
まつ「缶ですか?」
藤原「トマトジュースです。まあトマトに限らず、野菜ジュース全般ですが」
まつ「野菜が苦手なんですか?」
藤原「野菜は好きです」
まつ「じゃあ、ジュースが苦手なんですか?」
藤原「そんな人あまりいないでしょう。野菜も、ジュースも好きだけど、野菜ジュースが苦手なんです」
まつ「缶は?」
藤原「何とも思っていません」
まつ「俺は好きですけどね、缶」
藤原「野菜にジュースの甘みが混ざってる感じが苦手なんです」
そら「100%ジュースは?」
そらちゃんが話に参加しました。
藤原「だから、ジュースは基本的に好きなんですよ」
そら「じゃあ、100%のトマトジュースを飲めばいいと思います」
藤原「100%のトマトジュースって、それはもう、つぶれたトマトじゃないですか?」
そら「それで言うと100%のオレンジジュースもつぶれたミカンですよ。あれ、くさったミカンて何でしたっけ?」
藤原「金八先生です。100%のトマトジュースより、トマトをそのまま食べたいです」
坂井「私、イチゴが食べたい時、がまんしてプチトマト食べますよ」
演出助手の坂井さんが話に参加しました。
坂井「イチゴが世界で一番好きな食べ物なんですが、どうしても食べたい時にはプチトマト買うんです」
藤原「それは、自らに何かを課してるんですか?」
坂井「それで『これはイチゴだ、イチゴだ』って自分に思い込ませ、プチトマトの食感をイチゴと錯覚させるんです」
藤原「なぜ素直にイチゴを食べないんですか?」
坂井「だって、イチゴ食べ始めたら、止まんなくなっちゃうじゃありませんか」
若宮「……何の話してるんですか?」
藤原「トマトジュースです」
坂井さんの主張は、誰からの理解も得られませんでした。
この辺りから、みんなが話に参加します。
若宮「つまり、素材の味を、そのまま生かした方がいいってことでしょう?」
文目「けどスイカは冷やした方がおいしくないですか?」
そら「え、冷えたら甘みがわからなくないですか?」
文目「でもぬるいスイカおいしくないでしょう」
そら「甘みをより感じれるのは、冷えてない方のスイカですよ」
文目「おいしいのと甘みが強いのとは、別ってことじゃないですかね?」
藤原「あぁ、ビールもその道の人は常温で飲むって言いますもんね」
若宮「だから、素材の味を生かした方がいいってことですよ」
坂井「川の水でスイカを冷やしたらおいしいってことでしょう?」
若宮「え、シチュエーションの話?」
まつ「あれか、山でカップ麺食ったらうまいみたいな」
全員「は?」
まっつんが川の話を山の話にしました。
まつ「うまいだろう、カップ麺は、山で食ったら」
若宮「山のは、あれ、気圧の関係で脳がおいしく錯覚してるんでしょう?」
まつ「あれ、そういう理屈なの?」
若宮「そうじゃないんですか、知りませんけど。ポテトチップだって膨張するし」
藤原「じゃあ、坂井さんも、山でプチトマト食べたらよりイチゴと錯覚できるんじゃありません?」
坂井「そうなんですかね。本当なら試してみますが、先に誰か実証してくれないかな。知り合いにキャビンアテンダントさんがいる方、いません?」
文目「あ、いますね」
藤原「マジで?」
文目くんが挙手しました。
文目「叔母がキャビンアテンダントさんです」
藤原「じゃあそのおばさんに、今度聞いておいてください」
そら「でも、キャビンアテンダントさんって、飛行機の、なんか狭いスペースで急いでご飯食べなきゃだから、あんまりおいしく感じないんじゃないかな」
文目「それはそうでしょうね。家でゆっくり食べるご飯の方がおいしいと思います」
若宮「あぁ、気圧よりシチュエーションの方が強いと」
文目「あと仕事中は気ぃ張ってるから、気圧なんかで錯覚しないんじゃありません?」
まつ「漁師さんも毎日船に乗ってるから、三半規管が発達するしね」
藤原「じゃあ坂井さん、今度山に登った時、プチトマト、食べてみてください」
坂井「わかりました」
なぜまっつんは、川の話を山に持ち上げたり、山の話を海に下ろしたりするのでしょう。
そしてこの時、全員が坂井さんに対して「イチゴを食べればいいのに」と思っていました。
そら「そもそも、達郎さんは野菜で何が一番好きなんですか?」
藤原「ジャガイモです」
そら「え、ジャガイモは野菜じゃないでしょう」
全員「え?」
その場にいた全員が固まりました。
そら「え、ジャガイモって野菜ですか?」
藤原「ジャガイモは野菜ですよ」
そら「ジャガイモは野菜じゃないでしょう」
藤原「え、じゃあジャガイモって何なんですか?」
そら「ジャガイモは、根菜です」
坂井さんがスマートフォンでジャガイモを調べ始めました。
藤原「……根菜も野菜ですよ」
そら「そうなんですか?」
藤原「“野”の“菜”と書いて、野菜ですよ」
そら「じゃあ、根菜も野菜の仲間ってことですか?」
藤原「根菜を何だと思ってたんですか? あと、葉っぱ系の野菜だと、ナスが好きです」
坂井「ふふ……」
藤原「何です、坂井さん?」
坂井「ジャガイモも、ナス科ナス属の植物ですよ」
藤原「へえ……」
坂井「本当にナス科がお好きなようで」
若宮「……何の話してたんでしたっけ?」
藤原「トマトジュースです」
そのあとみずきくんが、プロスピ2019で育てている瑞樹選手の画像をみんなに見せました。それがこれです。
何が言いたいのかと言うと、10分押しで稽古を開始しました。
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