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シン・仮面ライダー めちゃかっこよかった。

シンシリーズで唯一あまり観る気が起きなかったのが「シン・仮面ライダー」でした。何故かというと僕は人生で一作も仮面ライダーを見たことがないから。リアルキッズの時に平成ライダーを何本か見ていた記憶はあるのですが、重いストーリーに辟易してすぐに見なくなってしまいました。あまりに思い入れが無さすぎて、SNSで仮面ライダーの話題で楽しそうにしているオタクが煩わしいとさえ思っていました。
そんな人間が果たしてこの作品を見てもいいのか、若干悩みました。庵野監督は間違いなくとんでもない思い入れでこの映画を作っているだろうし、マニアックすぎる映像は、ある程度のコンテクストを共有していないと楽しめないのではないか、という危惧がありました。

結果的にはめちゃくちゃ見て良かった。

全編に渡って製作者の「カッコいい」と「好き」が詰まっているように感じて、それだけで突っ走っていくような映像。初見の人間がこの「カッコいい」と「好き」の特急電車に乗車できるかどうかは正直賭けでしたが、僕の中のヒーロー像、つまり僕の好きな「カッコよさ」と奇跡的にマッチした。
それは、怪人を殺すことにさえ躊躇する優しすぎる主人公であったり、超人的な膂力故に血しぶき舞う戦闘であったり、スーツを隠すための渋すぎるロングコートであったり(僕が一番好きなヒーロー「ロールシャッハ」のようで脳みそが痺れ続けた)、個性的な怪人達であったり(地味にクモオーグが好きです、あいつかなり面白い奴でしたよね)、少女と少女の関係性であったり(クソデカい感情、だぁいすき)、ヒーロー同士の共闘(暗闇に光る1号、2号のマスク、あまりに美しく最高でしたね……)であったり、様々な要素が全部僕の好きなモノで構成されていてとにかく良かった。バッチリ感応した。僕にとっては極上のエンターテインメントだった。
この好きなもの、カッコいいものだけを繋ぎ合わせたかのような映像作品は、僕が滅茶苦茶好きな映画である「キルビルVOL.1」を思い出しました。あの映画もタランティーノ監督の「好きなもの」が超濃縮されてぶち込まれており、各所にマニアックな元ネタがある映画です。場面も継ぎ接ぎで、突然アニメシーンが入ったりするような、勢いだけで最後まで突っ走っていくような映画。それでもなんだか面白いんですよね。元ネタなんて一つも知らなくても、なんかカッコいい。もちろん元ネタを知っていればもっと面白い。どちらもそんな作品なんだろうと感じました。
しかもなんだかハチオーグ戦はビジュアルがかなりキルビルっぽくて笑ってしまいました。

また、正直。正直言うと庵野監督に対してかなり警戒心があります。作家性が色濃く出るかと思って少々警戒していたのですが、良い感じで作用していたと思う。「あらら」が口癖のハチオーグの造型はあまりにオタクすぎるだろうがよ、と思いましたし、ハチオーグがルリ子をルリルリって呼んでいて、「え、もしかしてマジでホシノ・ルリが元ネタなの?」って笑ってしまいました。線路上の会話とか異様に顔面に近づくカメラワークとかは、それ好きだねぇ~という気持ちになりましたが。しかし明らかに人類補完計画みたいなことを言い出した蝶オーグには流石に「またかよぉ~」って思ってしまった。ずっと他者とのコミュニケーションの話してますね……

最後に、僕が好きなものの一つ。
それは覚悟のガンギマった自己犠牲を厭わないヒーロー

蝶オーグとの闘いは本当に良かった。本郷君も覚悟キまってて、覚悟決まってる男の戦いはどんな内容であれ、とにかくカッコいい。覚悟とはすなわち自らの命を差し出して何かを成し遂げるということ。常に命懸けというヒーローの領域、更に一歩先に踏み込んだ、超常の精神性。その上でとにかく相手のプラーナ=体力を削るという泥臭い戦闘もよかった。最後は高潔な精神性の勝負。それは人間と地続きでありながら一線を画する存在であるヒーローの本質。
そして蝶オーグの野望を阻止、和解し、人類を救い、ルリ子の思いを遂げ、本郷も泡沫(うたかた)に消えてしまう。その意志は一文字が継いでいく。なんて儚くて、祈りに満ちた最期なんでしょう。
僕が幼少の頃に夢見た一番カッコいい消え方。
やっぱり、シン・仮面ライダー、めちゃくちゃ好きだな。



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