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逃避行(仮)

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ケルアックがやったような《自動記述的な》小説を書いてみようと、「上司を銃殺した男が女と逃げる」とだけ決めて、後はプロットも推敲もなく筆任せに書いていきます。
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記事一覧

逃避行(仮).3

「暗いのはいいにしても、あっついわねえ」

そう言いながらエミリが髪をかきあげると、微かな汗の匂いを感じた。しかし、それはエミリの本来の体臭である甘い匂いと混じりあっていたので、不快な感じは一切なかった。俺もべっとりと汗をかいていたので、きっと腐った果物のような匂いがしただろう。自分の体臭は感じにくい。そういえば、人は、鏡に映して自分を見るとき、脳のごまかしで、他人が見るよりも少し優れて見えると聞

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逃避行(仮).2

タクシーが神保町に着くまで十五分とかからなかった。途中、パトカーが追って来たりしやしないかと、運転手に不審に思われない程度にミラー越しに何度か背後を確認したのだが、それらしい車は(勿論俺は、覆面パトカーの見分け方などまるで知らないのだが)一台もなかったようだ。さすがに、非常線が張られるまでにはもう少し時間がかかるのだろう。

太陽がやたらと眩しい。夏日照りだ。それにしても、太陽の光はこれ程澄んでい

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逃避行(仮).1

エレベーターに乗り込んだのは、犬飼と俺の二人だけ。ついに、そのチャンスがやって来たのだ。俺は、スーツの内ポケットを、上から摩ってみる。確かに、そこには硬い感覚があった。お笑い種だ。今日一日、ずっと俺は、胸のあたりを膨らましていたのに、誰一人それを指摘するやつはいなかった。後で、「確かに、彼は、スーツの中に何かを隠し持っていました」と、何人もの奴らが証言するだろう。隠し持っていた!確かに俺は隠し持っ

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