見出し画像

監査法人1年目の教科書 -病まないメンタル編-

この記事は、どうして新人が監査法人で病んでしまうのか?その考察と対策を監査法人1年目の方 or 監査法人就活生向けに書いています。

入社前の方、入社して間もない方へなるべく監査法人の状況をご理解いただくことで、病んでしまう確率を下げれないか?という試みです。予防注射を打って、なるべく罹患しないように、罹患してもダメージを最小限するイメージです。

会計士試験に挑むと決意し、短答・論文試験とプレッシャーのかかる試験を突破してきた優秀な人たちが、より良い社会人生活を送れるよう祈っています。

■この記事を書こうと思った背景

後輩がストレスで顔面麻痺に

先日監査法人時代の後輩がストレスで顔面麻痺になったと連絡を受けました。驚くと同時に「そんな子には見えなかった」という言葉がよぎりました。仕事も一緒にしたことがありましたし、時には宅飲みもしました。そんな背景もあり、その連絡はショックでした。

監査法人を離れてしまった私ですが「なにかできることはないか?」そう思い、この記事を書こうとパソコンに向かっている次第です。なお「監査法人1年目の教科書」をシリーズ化し、仕事術、引越し編 etcの記事を投稿していく予定です。

今回は第一弾として、監査法人で新人がなぜ病んでしまうのか、その仕組みを考察し、その対策を書いてみようと思います。

■監査法人で新人が病んでしまうの原因は?

休職してしまった後輩の話も踏まえて、新人に多大なストレスがかかるよくあるパターンが以下です。

  1. 入社直後に最大の繁忙期を迎える

  2. タスクを振られるが何をすればいいのか分からない

  3. それでも何とか仕事を終わらせようと、忙しそうにしている先輩に質問してみる

  4. 先輩から教えてもらう。分かったような気がして、仕事を再開すると次の分からないことが出てきて、また先輩に質問する

  5. 3,4を繰り返す

  6. そのうち繁忙期の疲れが先輩にも溜まり、塩対応になってくる

  7. 塩対応を受け、最初は仕事が分からなくて当然だと思っていたが、分からないのは自分の能力が足りないからか?と自分を疑い始める

  8. 目の前の仕事をどうすればいいのか分からないにも関わらず、聞きづらくなる

  9. 不要なことを質問しないよう、一生懸命質問を精査してから先輩に質問する

  10. それでも先輩は冷たい

  11. 同期も同じような状況か気になるが、入社直後で気軽に連絡できる同期はいない

  12. 分からないことを抱えるようになり、更に自分の能力を疑うようになる

  13. ストレス下では脳の処理能力も下がり、仕事の進捗が滞ったり、普段ならしないようなミスをする

  14. 仕事の進捗具合をチームメンバーから聞かれ報告すると、早めに相談するよう言われる

  15. 質問してもいいんだ、と思い質問するがやはり先輩は冷たい

  16. 「自分でなんとかしなければ」「ほかの人は皆できてるんだから」と一人で頑張ってしまう

  17. 自分への能力を疑った上で、あまりタスクがない閑散期を迎える

  18. 本当にタスクが少ないにも関わらず、自分の能力が低いからタスクを振られていない、社内で干されているように感じる

  19. 閑散期に入りリモートワークが増え、周りとのコミュニケーションが更に減る

  20. 孤独感を感じるのと同時に、干されている意識が強くなる

  21. 四半期レビューや3月決算以外の監査で再度忙しくなる

  22. 2回目だからと、一人で頑張ってしまい、疑問点を抱え込む

  23. 閑散期に入り、干されている気がまたしてくる(時間があるからこそ、過去のミスを振り返り、干されている意識を強めてしまう)

  24. 多大なストレスがかかり、病んでしまう(自覚がないケースもあり)

私が思う病んでしまうポイントは2つです。

①自分への信頼感を失う

入社すると自分の経験値がもっとも低い状態で、最難関の繁忙期に投入されます。ゲームに例えれば、装備もレベルも初期のまま、ゲームのラスボスと戦わされる状態です。

こう例えると「勝てなくて当然じゃん」と感じていただけると思います。しかし、公認会計士試験を突破した後だと、社会人としてはこれからなのに、ラスボスを倒せて当然だ、というマインドになりがちなのです。

監査は簡単な仕事ではありません。簡単ではないからこそ公認会計士試験を設け、公認会計士のみが実施できる仕事になっています。その前提を忘れ、仕事の難易度の高さを責める前に「自分はできない人間なんだ」と自らを責めてしまった結果、自分への信頼感を失ってしまうことが少なくありません。

ここで蛇足かもしれませんが一応補足を。私は信用と信頼は意図的に使い分けています。信"用"は過去の実績を信じる気持ち、信"頼"は前向きな未来を信じる気持ちであるとしています(合っているかは不明です)。

②孤独

監査法人の労働環境は、コロナ禍で一気に変わりました。出社メインではなく、在宅ワークがメインです。特に一人暮らしの方はコミュニケーションする機会がぐっと減ります。コミュニケーションが減ることの影響は計り知れません。この環境下で上記①自分への信頼を失うと、精神的には辛いです。

何が正しいかが分からなくなります。そうなると判断基準を失うため、他人に頼りたい気持になりますが、入社直後だと頼れる他人が少ない状態になりがちです。

例えるなら、恋人に振られ自信を無くしている中、友人に相談しようと思っても恋人に時間を割いていたため、久しぶりの連絡が取りずらく、家族には心配かけたくないから相談したくないと思う結果、一人で抱え込む。しかし自分の判断が正しいか信じれないため、どうしたらいいか分からない。そんな状態です。

ここから先では①②を踏まえて、どう対策していくかを書いていきます。

■病みずらい2種類の人間

そもそもの整理ですが、病みずらい人にはどんな人種がいるのでしょうか。本題に入る前に、乱暴ではありますが、病みずらい人間は二種類存在すると私は考えていますので、その話をさせてください。

①そもそも傷つかない人
②傷ついても回復力が高い人

①はほぼ先天的、②は後天的に獲得した能力であると私は考えています。

自分はどっち側の人間なんだろう?と思った人もいるかもしれません。ただこの記事を読んでいるのであれば②であると推定されます。

①の人であれば「病む?俺/私には関係ないわー!」とおそらくこの記事は読まないか、「病む人ってどんな思考?」と興味本位で読んでみるか、という方ではないでしょうか。

そもそも①の人が傷つかないのはなぜか?それは圧倒的な自己肯定感があるからです。「俺/私は生きてて当然」「俺/私がこの世にいなかったら世界がかわいそう」くらいのことを言葉に出さずとも無意識下で考えていますので、➁とは全く別の人種であり、そこを目指すのはハードルが高すぎます。

以上を踏まえ、ここから先は②の方前提に書いてありますのでご承知おきください。

■自分への信頼を失わないために

①そもそも傷つかないこと、②傷ついてしまったらなるべく早く回復する、が大事です。それぞれ詳細に書きますね。

①そもそも傷つかないためにできること

天使と悪魔 思考

あえて一つ目に持ってきました。いい人でなければならない、そんなことを思っていないでしょうか。持論にはなりますが、自分を守るためにはいい人でもあり、悪い人でもある必要があると考えています。

残念ながら、いい人だけでは搾取されてしまう可能性がぬぐえません。ビジネスの世界では皆が必死であり、いい人だけではないのです。

このことは自己管理が上手いなぁと思う人を見て思いました。心に天使と悪魔を飼っている人が多いのです。

優しい一面も持ちつつ、人も責める。もちろん責め方は大人ですが、人を傷つけても進むべき時はあると割り切っている気がします。

自分を責めがちですが、それと同じように人を責めるという懐刀は持っておきましょう。たとえその刀を抜かなくとも、抜く選択肢があることが心の支えになりますし、その気迫は相手にも伝わります。

どうせ同じ人間です。宇宙の誕生から今日までを1月1日から12月31日の1年間に凝縮すると、人間が生まれたのは12月31日の夜です。人間なんて長い歴史で見れば、この前生まれたベイビーなのです。いざという時は責める選択肢を持っておきましょう。

分からないのは皆同じ思考

論文試験と同じです。すごい人は目立つし、比較すると自分がちっぽけに思うこともあるでしょう。

しかし多くの人は、同じところで躓くのです。同期に相談すると、そこ俺/私もわからない…というパターンがほとんどです。このことは入社して時間を重ねれば実感いただけるでしょう。

分からない自分を責めるのではなく、まずは誰もが躓く問題であることを前提に対処を考えていきましょう。

ここがすべてではない思考

監査法人がすべてではありません。公認会計士試験を突破した皆さんは、想像している以上の選択肢があることを忘れないでください。仮に監査法人を辞めても他の選択肢があります。いつでも辞めれる、という意識が自分を救う時もあると忘れないでほしいです。

例えば種を植えて、芽が出ない。さて種が悪いのか?土壌が悪いのか?

皆様が種だとすると、土壌が悪い可能性が高いと私は思います。先にも書きましたが、公認会計士試験を突破した人は、やはり優秀な人が多いです。多いのです本当に。公認会計士試験を突破したという自負はもってしかるべきでしょう!

とりあえずランチしよう思考

仕事で関係のある方とはなるべくランチに行きましょう。根は皆優しいですし、同じ会計士試験という辛い道を歩んだ同志なのです。そのことを実感できるのがやはりオフモードでの繋がりです。

残念ながら繁忙期は人を変えてしまいます。交渉事はご飯を食べながらするといいと言われますが、それは精神が安定するからです。お互いランチを食べながらご機嫌な状態で、少しプライベートな話ができるといいでしょう。

②傷ついてしまった時いかに回復するか

傷ついてしまった時の対処法です。これは人によって異なるかと思います。ゆくゆくはご自身で、こういう時はこうする、こういう時はこう、と多くの選択肢を発見するのが良いでしょう。以下参考までに私が普段している方法を書いておきます。

美味しいものを食べる

読んで字の如くです。笑
スーパーによって普段は買うのをあきらめている食材やお惣菜ありますよね?笑  そういったものをご褒美と称して買っています。

睡眠を大事にする

私は睡眠を1日8時間はとりたいです。6時間だと明らかに足りなく、7時間が続いても寝不足の症状が出ます。睡眠は生産性だけでなく、メンタルにも多大な影響が出ますので、意識して睡眠時間は確保しています。

ちなみに私は在宅が続くと眠れなくなります。そうなったは私はアロマキャンドルを寝る10分前に焚くようにしています。香りよりは火を見ることがリラックスに繋がり、良く寝れてる気がします笑

頭の中の言葉を書きだす

発声はせずとも、頭の中で人は思考しています。私は定期的に頭の中に浮かぶ言葉をそのままノートに書きだしています。ポイントはそのまま書きだすことです。しょうもない言葉も、恥ずかしい言葉もそのままです。

書きだされた言葉を見ると、自分がいかにちっぽけなことで悩んでいるか、客観視できます。ちっぽけだなぁ、と思うと「こんなこと考えなくていいじゃん!」とそれだけで癒える傷もあるものです。

私はそれを家の中でやることもあれば、公園のベンチでやったり、カフェでやったりと様々です。

自分にやりたいことをやらせてあげる

私であれば大抵カラオケか漫画の一気読み、カフェで普段は手を出さない高めのメニューを飲む…etcです。これはひとつ前の「頭の中の言葉を書きだす」とセットな場合が多いです。書きだしていると、その中に○○したい、等の言葉が出てきます。それを叶えてあげると、あっさり心が前向きになることも少なくないです。

カウンセリングを利用する

各法人カウンセリング窓口が設けられているケースが多いです。福利厚生の規定等を見てみましょう。無料でカウンセリング受けられます。私は精神的に弱い自覚があるため、メンタルになんの問題がなくても、2カ月に1回はカウンセリング受けるようにしていました。ただ話を聞いてもらう。話しながら自分の感情理解や自己分析を進めていました。

抵抗がある人も多いでしょう。私も最初抵抗がありましたが、やってみてよかったです。そこでの自己分析が転職にも活きています。

アミノ酸を飲む

アミノ酸とは、血管や内臓、皮膚、筋肉などのもとになるタンパク質を構成している重要な栄養素のひとつです。セロトニンやドーパミン等メンタルに大きくかかわるホルモンの材料になります。

アミノ酸を意識して採るようにしてから、メンタルの底辺が上がった気がしています。あくまでも気であり、定量的に説明できず恐縮ですが、必要な材料がなければホルモンも作れないだろうと考え、飲み続けています。ちなみに私はこのサプリメントにしています。なおこの方法は友人の東大生から勧められました笑


■孤独にならないために

社会人になると、努力して広げない限り人間関係は先細りで間違いありません。失いたくない人間関係は、意識して繋がり続ける努力が必要です。これが全てといっても過言ではありません。

ちなみに、とある歌詞で私の好きなフレーズがあります。「ほどけないんじゃない、結び続けたんだ」まさに人間関係はこれだと思っています。

では、そちらを前提に置いた上で詳細な話に入っていきましょう。

社内に1人でいいから気楽に話せる人を見つける

愚痴れる人を見つけましょう。愚痴が言えるなら、社内のことも相談できます。数ではなく、一人でいいですので見つけましょう。

人間関係の基本は「10回お茶するなら、1回ご飯へ行け。10回ご飯行くなら1回泊まれ」です。まずはランチへ誘ってみると良いのではないでしょうか。そういった繋がりは監査法人から転職する際も、独立する際も助けになります。

他社の人・社外の人と会話する時間を意図的に設ける

昔からの友人、何かのイベントで知り合った友人等、在籍している会社とは全く別の文化を持つコミュニティの人と意図的に交流しましょう。他を知るから、自分のコミュニティが客観視できますし、仮に自分のコミュニティがなくなってもそこで生きていけます。選択肢が一つではしがみ付くしかありませんが、選択肢が二つあれば選べます。1と2では全く違うのです。

家族と話す

確執があるご家庭もあるかと思いますが、ご家族とコミュニケーションとるのはいかがでしょうか。こちらは踏み込むのもいかがなものかと思いますので、ここまでにいたします。

■最後に

最後まで読んでいただきありがとうございました。この記事が皆さんの役に立てば嬉しいです。なお以下の記事が「監査法人1年目の教科書」シリーズすべてを集約したものです。私がこのシリーズを始めたきっかけ、込めた願い等も書いていますのでよかったらどうぞ!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?