王子さま 11

私は驚いて声が出なかった。

渡辺も気が付いたようで、
「久しぶり、元気そうだね!」

と言って私と子犬ちゃんを見た。

子犬ちゃんを私の彼氏だと思ったみたいで、
「幸せそうで良かった。」

そう言って彼はささっとお店から出て行った。

「今のイケメン誰ですか?」

「えっ?あの人は・・・元カレ。」

「え!!!!めっちゃイケメンじゃないですか?」

その見た目に騙された!なんて言えない・・・・

「あんなイケメンがタイプだったんですね・・・」
独り言のようにブツブツとくんは言っていた。

「さっ早く買って帰ろう!」

私たちは買い物をして、
家に帰った・・・

もう1度会って話したい!と何度も思っていた渡辺に会った。

突然目の前から消えた彼に2年振りに会った、
でも私の心は落ち着いていた。

憎しみも怒りも、もちろん恋愛感情も無かった。

拍子抜けとはこのことかもしれない。

「お金返して!」って言えば良かった?

子犬ちゃんがいたからそんな話しも出来なかった。

そろそろ現実を受け入れて、
前に進む時なのかもしれない。

「私は男に騙されてお金を盗まれました。」

っていう現実。

心のどこかで私は騙されていない、
彼に何か理由があったんだ、
いつか私のところに戻って来る。

こんな期待をして、現実に背を向けていた。

もう過去に生きるのは辞めよう。

私は前に進む。

そして私はこの家から引っ越すことを決めた。

つづく




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