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俺に挑む人生、挑戦するオレ 前編

当時、私と妻は、待望の第一子を授かり、2人で育児に奔走していました。
妻はもちろん、育休を取得して、育児に専念できたのですが、私の会社ではまだまだ男性の育休に理解がなかったため、私は仕事をフルで抱えながらの育児でした。そのため、できることは限られていましたが、それでもやはり、初めての我が子は可愛いもので、空いている時間はほぼすべて育児に費やす気持ちで、おむつ替えから入浴、散歩、ミルクやり、離乳食調理、寝かしつけまでなんでもやりました。

ただ、うちの子は、夜泣きが激しく、毎晩夜中に大声で泣き出し、そのたびおむつを確認したり、ミルクを与えてみたり、外に連れ出してみたり、とにかく泣き止ませるため、その原因を突き止める最大限の努力をしていました。しかも、それが毎晩2時間おきに繰り返されるのです。
ただでさえ、日々の育児でくたくたなところに夜中に何度も叩き起こされる、この壮絶な苦行は自ずと私の精神を蝕んでいきます。

ある時、私はネットで調べ、夜泣きのことを専門に研究されている方の書籍を見つけたので購入し、実践しました。しかし、うちの子の夜泣きは、そんなことではビクともせず、まったく効果はありませんでした。すると、私はなんと、その著者の方へ効果がない旨伝え、詐欺だとクレームのメールを送ってしまっていたのです。

この頃から私の行動は段々とあやしくなり、激しく自分を叩きつけたり、自傷行為などもするようになりました。妻は心配してくれて、途中から夜中は私を別の部屋で寝るよう気遣ってくれました。とはいえ、狭い我が家では別の部屋で寝ていても息子の大声はしっかりと聞こえてきます。
わたしの精神疾患は、あまり改善の兆候を見せることはなく、私自身も頭では自分がおかしくなっていることに気がついてはいるのですが、心が狂ってしまっているため冷静な判断をすることができませんでした。それを世に聞くノイローゼという言葉で片付けてしまってよいのか、もっと別な重い疾患なのではないか、色々と考えました。

その後、私は精神病に通い始めます。しかし、ここでも病は医師をも打ち砕きます。毎回の診察で、医師は話を聞いてくれてはいたのですが、私が見ていたのは、それで「どうやって治してくれるのだろう」という一点でした。
医師は毎回最後に薬をくれて、様子を見てくれと言います。用法用量を守り、私はわらにもすがる思いで薬を飲み続けました。しばらく様子を見て、改善がなければ、別の薬、それでもだめならまた違う薬、という感じで薬を与えられます。そこで自分が正直に感じたこと「俺は実験動物か?」ということは今でもはっきりと覚えています。
最後は、妻もついてきてくれて、そこで何を自分が言ったのか覚えていませんが、医師は最後に「私にはもう何もできません」と言い放ち、自分は「見捨てられた」という感覚に陥りました。

その後も何件か精神科や心療内科を訪ね、診てもらいましたが、いずれも完治には結びつかず、妻にも心労が重なっていることに私は「なんとかしないと」という思いで苦悩していました。ただ、幸いなことに、というか不思議なことに仕事においては、仕事モードのスイッチが入るのか、まだ自分を確保できていたので、正直治る見込みはあるとも感じていました。

私は頑張って、冷静に状況を見直してみることにしました。
そして、視点を変えることで改善への糸口が見えた気がしたのです。

後編に続く

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