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電車にて その2

電車でのエピソード、2つ目は、痴漢です。
私は、男ですが、実は痴漢にあったことがあります。
まだ20代の頃でしたが、その1でお話した阪急電車に乗っていた時のこと、
その電車は特急で座席が新幹線のように2列ずつ縦に並んだ形式の席で、進行方向に向かって座れるタイプの座席でした。ベンチ型の座席と違って、この種の座席は少し個室空間的な状況が作られます。もしかすると、痴漢にとっては好都合なのかもしれません。
私は窓側に座っていたのですが、横に60代後半ぐらいの男性が座ってきました。私は疲れていたので窓側にもたれて寝ていると、おっさんは新聞を広げて読み始めたのです。電車は特急なので駅につくまでしばらく時間があります。犯行に及ぶには絶好の条件なのでしょう。しばらくすると、私の股間、陰部の先あたりがどうももぞもぞします。私ははじめ、おっさんの新聞が当たっているのだろうと思って少し姿勢をずらしたりしました。すると、その時は収まるのですが、またしばらくすると、もぞもぞします。そして、もう一度姿勢直し。そんな事が2,3度続いた後、4度目ぐらいでもぞもぞ感がやってきた時にハッと気づきました。
「このおっさん触っとる」
すぐにその場で、おっさんに文句を言おうとしたのですが、この時、生まれて初めて痴漢にあわれる(主に女性の)方の心理が分かりました。
声をあげられないのです。その心境は、どう説明していいのか、難しいのですが、簡単に言うと「声を上げるのが恥ずかしい」という感じです。実際はもっと複雑なんですが、屈辱と恥ずかしさと、悲しさと苛立ちと怒りとかそういう感情がいっぺんに混ざったような感じです。
しかし、私はアンパンマンのように愛と勇気が友達だと思っていたので、勇気を出すことに決心しました。その間ずっと寝たふりをしていたのですが、もう一度姿勢を直し、次に触れた瞬間と、まずタイミングを決めました。
そして待ち構えること、数秒でおっさんが触ってきたので、私はすかさず新聞をバサッとめくりました。するとおっさんの指先がもろに私の股間に触れていたのです。犯行現認。
「おっさん何しとんねん?」と私の満面の強面で睨みをきかせておっさんの胸ぐらを掴みました。思った通り、周囲が「何や、何や」と少しざわめいています。気恥ずかしさみたいなのがまだ少しありましたが、私はもう気にすることなく、おっさんに「ちょっとこい」と車掌のところへ連れて行こうと引っ張ります。しかし、おっさんが「ああ」とか「うう」とか言いながら抵抗します。私は苛立ちを覚え、次におっさんの顎のあたりをつかみました。
すると、何かねっとりした油のような気持ち悪い感触があり、ぱっと手を離してしまいました。そして同時に、「このおっさん浮浪者やな」と実感しました。おっさんも、その瞬間にそそくさと逃げていったのですが、もう後は追いませんでした。それよりも早くこの手のベトベトを何とかしたいという気持ちの方が強かったです。もしかすると、スカンクのおならのように、おっさんが窮地を脱するための顔の油だったのかもしれません。
若かったこともあり、その1の話とは違って対応の仕方が真逆ですが、今では、これはこれでいい勉強になったと思っています。男性ではなかなか経験することのない、痴漢の被害者になったことで、実際に痴漢にあわれている方の心境、辛さなどが多少理解できるようになったかと、もちろん男なので、女性ならではの心苦しさなんかとは、また受け取り方が違うとは思いますが、犯罪として重く受け止めるべき行為だと認識することはできました。
(そもそも痴漢やろうと思ったことなどありませんが、その時まで犯罪としては認識していなかったように思います。)
そして、もし痴漢を実行する犯人が、この被害者側の心境を知った上でやっているとしたら、尚更許せません。人の弱みに付け込むというのは、人間の悪徳所業の中でも最低の類だと思っています。
ちなみに、意識の持ち方もかなり変わった今、この歳で同じ目にあったらどうするか考えてみましたが、おそらく、というか、やっぱり今痴漢にあったとしても怒りの感情は湧いてくるかと思います。それぐらいの悪行なんだと再認識できます。
痴漢は犯罪です。絶対にアカン!撲滅運動があれば参加したいぐらいです。

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