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「麻雀の基礎本を売るのは難しい」は本当か?

麻雀戦術書の第一人者である福地誠さん(以下、福地先生)の最新記事がこちら。

有料記事なので具体的な引用はなるべく控えますが、ザックリ言いますと、
「入門・初級(基礎)・中級・上級のうち、売れるのは中と上。初級者向けの基礎本は売れない」
といった内容。

■基礎本を売るのは難しい?

本当にそうでしょうか?
確かに、今までは “初” の部分だけ市場が大きく陥没していましたが、これからもそうだと言いきれるでしょうか?
私は、これからは状況が一変し、“初” と “中・上” が逆転する可能性すらあると思っています。
一番大きな理由は、今まさに麻雀の主戦場がリアマ(雀荘)からネトマに移り変わっている真っ最中だからです。
リアマ(雀荘)が主戦場の時代においては、自分が「勝ち組 / 負け組」の境界線の少しでも上にいるか下にいるか、が最重要でした。
このラインは、(諸説ありますが) 天鳳で言うと五~六段くらいと言われています。
福地先生が言うところの中級者でしょうか。
その天鳳においても、「特上卓(六段)以下には人権がない」などと言われることもあり、(これはもちろん冗談ですが) 中級者(特上民)が上級者(鳳凰民)にステップアップ出来るかどうか、のあたりで学習意欲が最高潮に達する人が多かったわけです。

■状況が変わった

つまり、リアマにしてもネトマにしても、(戦術書を買ってまで) 必死で勉強する層は比較的上位の集団で、しかも層が概ね一致していた、というのが今までだったわけですね。
ですが、状況が随分と変わりつつあります。
大きな要因は、
・Mリーグ人気
・雀魂人気
・麻雀系Vtuberの躍進
といったところ。順番に見ていきます。

■①Mリーグ人気

今まで、麻雀プロの対局を熱心に観戦するのは、「ガチ勢 ≒ 中・上級者」と麻雀プロのコアなファンが主な層でしたが、Mリーグ人気により「ライト勢 ≒ 初級者」も日常的に麻雀プロの対局を見るようになりました。
麻雀中継は、戦況を逐一把握し選手の意図を汲み細かい駆け引きまで堪能する、ということが中・上級者であっても非常に難しいですから初級者にとってはなおさらですね。
プロの対局をより楽しむためには、雀力が少しでも高いに越したことはないでしょう。

■②雀魂人気

段位システムは天鳳と非常によく似ていますが、キャラや演出などの要素があるため初心者から上級者まで幅広く楽しめ、ユーザーの分布も天鳳と比較して初心者・初級者層の割合が多いと思われます。
「天鳳では、特上卓~鳳凰卓 の層が飛び抜けて勉強熱心」というようなことを先述しました。
これは雀魂でも同じようなことが言えるかとは思いますが、天鳳ほどハッキリとしたヒエラルキーが存在しないために、必ずしも最高のレベルに達しなくとも、個々のレベルに応じて設定した目標に達することで一定の満足感を得ることが出来る、というのが天鳳とは一味違った特長かと思います。
具体的には、「雀豪 → 雀聖」だけでなく「雀傑 → 雀豪」などでも十分に達成感を得られるユーザーがたくさんいる、ということですね。
従って、今後はこの辺りの層に対する市場も十分に見込めると思うのです。

■③麻雀系Vtuberの躍進

─ 他のVtuber本がいろいろ出てきて、それが基礎本の大きな潮流になっていく可能性がある ─ (記事より)
これは福地先生の記事そのままですね。
Vtuberさんのファンは本当に熱心です。
スパチャや有料会員、グッズなど、推しのためにお金を使うことを厭わないので、推しVtuberさんのグッズ(戦術書)を購入しつつ麻雀も強くなれるなら安いものでしょう。

■今まで基礎本の市場が小さかったのは当然だが…

こうして見ていくと、
今までは初級者用戦術書(基礎本)の需要が少なく、従ってその層向けに戦術書が制作される機会も少なかったため、当然の結果として基礎本の市場は極めて小さかった。
しかし、今後はそれが一変する可能性が決して少なくない状況になった。
── ということがおわかりいただけるかと思います。
単純に、プレイ人口が 中~上級者 より 初~中級者 の方が多いというのも大きな要素ですね。

■福地先生の本音?

さて、冒頭の記事要約で、
「初級者向けの基礎本は売れない」
と書きましたがこれは正確ではありません。
「売れる基礎本を作るのは難しい」
タイトルにもなっていますが正しくはこうです。
「売れない」と「作るのは難しい」では全然違いますね。
つまり、福地先生はこう言っているのではないでしょうか。
「俺が売れる基礎本を作るのは難しいけど、他の誰かが書いた基礎本が売れる可能性は大いにある」
「つーか、俺みたいな中年にいつまでも頼ってないで、新しい戦術書ライターもっと出てこいよ」
── と。
新しい時代や後進ライターへの福地先生流のエールなのだと私は捉えました。
完全に想像なんですけどね。

■最後に

プレイ環境がリアマからネトマへ、というだけでなく、麻雀に対する認識そのものがギャンブルから高度な頭脳ゲームへと変わりつつある今、ユーザーの需要ひいては戦術書の市場まで大きく変容したとしても何もおかしくはありませんね。

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