100歳まで小賢く生きてやろう

 100歳まで生きてやろうではないか。楽しんで。何か持っていたら、それを継承して。早く死にたいとは思わない。時々、そんな気持ちもあるが、早く死んだところで、俗物の鑑賞と感傷の対象にされるだけだからだ。それよりも、できるだけ長く生きて、同年代の人がだいたい逝ったら俺は死んじまう。これでいいではないか。健康的に寿命で、死のうではないか。
 老いて人はおろかになったりするというかもしれぬ。俺は、老いて、いい方向に愚かになるのを楽しもうではないか。静かな場所で死のうではないか。母死にて、既婚者であれば、妻が死んで逝く。弟や妹より長く生きてやるのだ。耄碌の爺なら、働いてなくても生きていける水準だとよさそうだ。なくても、生活保護でもいいかもしれぬ。俺は、誰よりも長くしぶとく生きて死んでやろうと思う。誰よりも楽しみ、熱中し、労働(labor)ではなく、熱の出る生き方を。立派な人間を目指して。立派な白髭を生やして。
 楽しく生きることは、自分を苦しめてきた人間へのせめてもの報復だ。復讐にこれ以上のことは不要である。どうでもいい他人に気を取られてる暇があるならば、好きなことに夢中になるほうがきっといい。自分に時間を作ることのできるのは、いつの時代でも重要なことなのである。

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