テロリストや通り魔は誰を殺したか?

 山上は、日本の太閤を殺した。その弾丸は太閤にヒットし、太閤は死んだ。安倍晋三は、それによって、政治生命と、命を失った。メディアでは、様々な批判と、哀悼が為された。私は、そのとき、歴史の一ページに遭遇したと思った。
 太陽を盗んだ男という映画がある。簡単にいうと、原爆を作ったテロリスト、そして、それを追う警官の話である。その警官は、テロリストに言った。「お前が殺したいのはお前自身だ」と。
 そう、山上は、死んだ町、死んだ政治、何もかも、骸骨とかした内容のないさらに膨張増大する社会で、テロリストになり、日本の権力者を殺し、社会的に自殺を遂げたのである。
 日本国は、敗戦により植民地支配されて歴史的断絶した国の一つであり、日本は、どこかの植民地だった国のような歴史的発展をしていて、そこに文化的内容はない。文化といえば、すべて、アメリカの模倣である。
 生きていても、自分の国は、第二次世界大戦の敗戦したヒトラードイツと同格の悪い国々の一角である。
 日本をアノミーへと追い込んだのは、天皇の人間宣言と高度経済成長と喝破したのは、小室直樹であった。
 天皇の人間宣言は、日本史そして、日本の建国神話そのものを否定し、高度経済成長は、極端なインフレに相当する。
 そんなわけで、日本人の道徳観念は完全に崩壊したのである。死んだ社会で死んだ私たちはいったいどう生きるべきなのか、とても暗い洞穴のなかに我々はいるのである。そして、太陽を盗んだ男の苦痛は今も我々に刺さっている茨である。


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