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新しい食材?『ワインパミス』で香り操る【フランス料理】に応用する技法

今回の発案者はcoppoli_channelです

ワインパミスとは?

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まずワインパミスとは何なのかを説明します

パミスとは、ワインの製造過程でぶどうを圧搾した後にできる搾り粕のことです。日本国内で年間数千t発生し、その大部分が堆肥や肥料として利用されていますが、主成分であるオレアノール酸には、虫歯・歯周病予防・口腔ケアに効果があるといわれており、機能性食品として注目を集めています。http://www.wakasanohimitsu.jp/seibun/pomace/ 参照

とされており、製造過程で生まれたワインの副産物です。健康的な効能を期待できると同時にフランス料理への応用も見いだせる『食材』と呼べるでしょう。食材を地域ごとに考えるメソットがあるように、発案者は『地元山梨を離れた自分にも何か協力できることはないかと思い、ワインパミスを使った料理やデザートなどを試行錯誤しています』という味だけでは表せない部分を料理として表現しています

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参考資料:RE-WINE

『ワインパミス』と『ブドウ』の違い

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ここで一つ疑問になった点として『ブドウの皮』と比較した場合に、どのような違いがあるのかを知る必要があると感じました。

■ワインを作る場合の主な工程

1. ぶどうを収穫する
2. ぶどうの除梗をして細かく砕く
3. 酵母による発酵をする
4. プレスする

このような工程を踏むわけですが、プレス(圧縮)した段階のブドウですから、普通のブドウと比較して、発酵されたブドウであるという大きな違いがあります。

■ワインとワインパミスを比較した場合

5. 乳酸菌によるマロラクティック発酵をする
6. 熟成する

このような工程を踏んでいないのであれば『香り』が生まれる工程を省いていることになりますから、厳密には『ワインの香り』ではないと言えるでしょう。

■ワインパミスに関してのQ&A

発案者に質問を投げかけました

Q:ワインの工程上、プレスの段階でワインパミスとして乾燥させて食品にしていると思います。つまり『乳酸菌発酵』や『熟成』による香りは付加されていないという解釈をしました。

実際のワインと比較して、香りに違いがあると感じましたか?

A:アルコールのかおりはもちろん、熟成香や、樽の香りなどはありません。どちらかというと、種の青っぽい香りや皮の渋さの香りを感じます、が、ワインに近い黒いぶどうの芳潤な香りや酸の香りを強く感じます。

・ワインパミスの解釈

つまりワインでは無いが、ブドウでも無いという分類に属します。ブドウに含まれる渋みや、発酵臭などが付加されているので、工程の部分だけを注目してみれば、使い道は自ずと見えてきますね。(後述)

ワインパミスの特徴(発案者談)

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※発案者coppoli_channel様からの情報をもとにしております。
※写真提供coppoli_channel『ワインパミスを使った前菜』

■ワインを作る工程での、ぶどうの実、皮、種、などをすべて乾燥させ粉砕してある

■油分へ成分を移した場合は酸味が抑えられ香りがしっかり出る。
水分へ成分を移した場合、60度以上の液体に成分が溶けやすく、酸味とえぐみが出やすい。

■ソース等の応用に用いた場合、粒子が粗く少しだけ舌触りが気になる。完全に粒子を細かくするにはまだ技術的に難しいとのこと(ワインパミスを製造している会社へ問い合わせした際に伺った内容)

■9月頃からワインパミスの原料となる搾りカスを確保できるようになり、乾燥させて粉にするまで1〜2ヶ月ほどかかる。

料理に応用した場合に感じた点を、いくつか挙げてもらいその上で考察していきます。一番苦労した点として、加熱工程を含む場合は『香り』が飛びやすいと発案者は述べています。

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※発案者coppoli_channel様からの情報をもとにしております。
※写真提供coppoli_channel『ワインパミスを使ったデゼール』

ワインパミスの適した調理法

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ここで注目するべきところは『ワインパミス』の何を生かしたいか?という点ですから、そのものの良さに着目しましょう。

■特徴的な『香り』がある

■渋み・えぐみがある

■ペースト・粉末・乾燥と3種類の形状

■製造工程上、安価である

■ワインパミスは果実以上の可能性をもつ(栄養価等の成分が高い)

『香り』を生かしながら、渋みやえぐみもある程度加えてあげることによって、料理として完成されたときに良さを感じることが出来ます。

香りを食材へ生かしたい時の注意点として『香り』は脂溶性と水溶性の2つの性質に分かれており水溶性の性質を多く含むのか、脂溶性の性質を多く含むのかによって移すべきものが分かれる、水溶性の香り成分を含む食材は多くない。ほとんどが脂溶性の香り化合物を多く持っている

しかし香りを水分に香りを移す場面は少なくはない

例えば1番だしなどがそれに値する。昆布の旨味を水分に移した後に鰹節をたっぷり加えて香りを移す。この瞬間に香りが立つわけだがその要因の殆どは加熱による香り成分の揮発によって得られるものである。つまりその瞬間しか香りが立たないので、使える時間はかなり限られている。

現代のフランス料理教室:香りを生かす調理法〜全てに共通する原理について〜から引用/月額200円

香りを移すことだけでは得られない『栄養素』

ワインパミス特有の栄養素であるアントシアニンやレスベラトロールといったポリフェノールが多く含有されていることが知られています。ワインの中には移行しないオレアノール酸という成分も含まれています。

この成分を生かしてこそ『ワインパミスを生かした』と言えるのではないだろうか?

ワインは香りを重要視するため、工程上『加熱する』ことをしません。つまりワインの製造工程上オレアノール酸という成分が移行しないだけであり、加熱すればブドウの皮から栄養素を別の液体に移すことは可能であると考えます。

ここで注意したいのが、同時に『渋み・えぐみ』も移行することと、香りが揮発してしまうということです。

『既製品』か『レストラン仕様』生かし方の違い

一般的にこのような食品は『練りこんで使用する』という使い方が多いでしょう。練りこむ工程上で香りを移して、一緒に食べる仮定を強制的に組み込むことで香りや味を補強する意図があります。

練りこんで使用した場合は、ワインパミス特有の『口あたりが悪い』という事象は避けて通ることは出来ません。これは乾燥食品すべてにおいて同様の性質を持っています。

※粒子を細かくするにはまだ技術的に難しいとのことですから、ここでは粒子を細かくすることは視野に入れないでおきましょう。
一般的に粒子を細かくする工程は、長時間低温乾燥させて粉塵機にかけることでパウダー状にします。まだワインパミスは製品歴史としては新しいものですから、そこまでの展開していないだけの可能性が高いと思われます。

ワインパミスの正解とは

口当たりの悪さは、レストランで提供するには大きな障害になるでしょう。乾燥食品として捉えた場合は主に2通りの使い方に別れます。

■水や油にワインパミスの成分を移して加工しなおす

経験上、乾燥食品の香り成分を油に移すことは困難です。つまり水に移す必要があるということです。しかしワインパミスの成分を水に移すならば、香り高いワインそのものを使用したほうが良いと私は思います(極論)

しかし、ワインパミスを水だしで長期にかけて香りを抽出することによって、ノンアルコールワインやノンアルコールカクテルの可能性も見えてきます。これは大々的に大きな商品になる可能性を秘めています。

そうすることで渋みえぐみも移行することで良さに代わり、加熱によって香りが揮発してしまうこともありません。

ワインの発酵工程によってのみ作られる『深みのある香り』と、生産工程によって本来破棄する筈の食品を、論理的かつ自然な流れで最大限生かすことができると思います。もちろんノンアルコールの食前酒としての可能性も大いに役立つと思われます。

■食材にワインパミスの香りを移す

次にワインパミスの香りを食材に移す場合を考えます。『鯛の昆布締め』などを想像すれば分かりやすいと思いますが、マリナードによってある程度香りを直接的に移すことは可能でしょう。旬の生魚を白ブドウワインパミスでマリナードしてカルパッチョにすれば、新しい料理として、さらにワインパミスの香りをダイレクトで感じる前菜が生まれるでしょう。

食品の性質を考えればおのずと答えは出てきます。是非皆様もワインパミスの可能性について考え、新しい料理開発に取り組んでみてはいかがですか?


今回の発案者はcoppoli_channelでした。記事のテーマや具体的な料理等を提供してくださりありがとうございました。
またYouTubeもやっているそうですので、ぜひチェックしてみてはいかがでしょう?




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