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帰宅するまでの出来事

眠れない一夜を過ごし、早朝、娘がまだ
ベッドの下で眠り込んでいる間に、そっと
ホテルの部屋を抜け出し、夫に電話。
「いーちゃんの様子がちょっと変なんです。
ここから、無事に連れて帰れるかどうかも
不安だけど、とにかく必死で連れて帰るから。
また連絡します」
とだけ伝えてまた、部屋に戻る。

 しばらくして起き出してきた娘。
ベッドに座ったタイミングで、娘の手を取り
「あのね、いーちゃん、大事な話だから
聴いてほしいんだけど。」
うんうんとうなづく娘。
「あのね。今日は、ガラスを割ってしまった、マンションの管理人さんのところに謝りに行こう。
そして、大学の先生からは、病院を受診するようにと言われてるから、病院にはかかろうね。」
真剣に話す私の気迫に押されたのか、承諾してくれた娘に、心の中で手を合わせながら
チェックアウト。

木漏れ日の中を二人でゆっくりゆっくり
マンションまで歩く。

途中で、小さな洋菓子屋さんを見つけて
箱入りのお菓子と、二人分のアップルパイを
購入。

近くの公園のベンチに座って、お喋りしながら
アップルパイを頬張る。

公園の木々の中には、桜の花が咲き、
そこかしこ、小さな小鳥が
さえずって、遠くからその様子を見たら
和やかな光景そのものだったと思う。

でも、私の心中は、穏やかならず。
笑顔で話しながらも、(ちゃんと家まで連れて帰れるだろうか)(娘が途中で、逃亡したりしないだろうか)と落ち着かない中、マンションまで歩き
受付の管理人さんに謝罪。

そのまま、マンションの自分の部屋に入ってしまいそうな娘を騙すようにして、「一緒に新幹線に乗ってとりあえずは帰ろうよ」 と促した。
娘は、「母さんを新幹線まで送る」
と、駅まで送るつもりだったようだけど、私は
真剣勝負。
「いずれにしても、病院にかかる必要があるから、とりあえず、一緒に新幹線に乗ろう」
と、二人で電車に乗り込み、そのまま
新幹線に乗ることに成功した。

二人で談笑しながら、移動していたけれど、
いよいよ目的地に到着する直前に、
「ほら、出口で見張ってる人がいる。
全ての出口で見張られてる」と娘。

「大丈夫だよ」
となだめるも、

また、娘は
「母さん、仕事が入ったから、東京に帰る」
と言い出す。

「ちょっと待って!
せっかくここまで来たのだから、一旦はうちに帰って一緒にご飯を食べようよ。」

必死だった。

途中何回か、逃亡しようとする娘を必死で捕まえて、在来線に飛び乗るも、心臓の鼓動は高鳴り
冷や汗が出てくる。

自宅近くの駅に近づいた頃に、夫にLINE。
「○時○分に、○○駅に到着するから、
北口に車で迎えに来てください」と。

無事に駅に到着。
娘を車で自宅に送ってもらうことが出来、
食卓を、息子と一緒に4人で囲むことが出来た。

「あぁ。なんか自宅は落ち着く〜」
と、ちょっと嬉しそうな娘。

でも、その夜は、ホテル以上に眠ることはできなかった。
外に飛び出していきかねないから。

娘が寝室に行ってから、
寝巻きには着替えず、普段着のまま、そして
照明を明るくつけたまま、布団に潜り込み
息を潜めた。

いつ、なんどきでも、飛び起きることが出来る様に。

#精神疾患
#大学生
#帰宅

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