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「原点回帰の旅 vol.1 太古の地球と生命の姿~石ころから探る46億歳の地球」イベントレポ

複雑化した社会にいる中で、原点に戻って考えよう、となることはしばしばある。今回のイベントでの“原点”とは46億年前。
地球は誕生したばかりで、生物の「せ」の字もない状態。そんな中から、私たちの祖先は生まれ、進化を続けて現在に至る。その過程の中から私たちは何を学び取ればいいのか?を考えた。

ファシリテーターはSoft.Guest Houseを開業し、数々のイベント運営も手掛ける大塚誠也さん。人類の起源を求めて、アフリカのキリマンジャロ山に登った経験を持つという。
ゲストは東北大学大学院資源環境地球科学研究室に所属する笹木晃平さん。笹木さんは生物の進化や太古の地球環境などを研究していて、過去には地質調査や試料採取のためにカナダやオーストラリアにも行ったそう。

堅いテーマではあるものの一方的な授業のような感じではなく、参加者側も随時質問をしたり、チャットを投げかけたりすると、大塚さんがそれに反応したり、笹木さんが補足説明をしたり、時には余談に脱線したりと終始フランクな雰囲気。

なぜ“石ころ”なのか?

現在、私たちの身の回りにあるものは最近できたもの(ここでいう最近とは数年とかいう単位ではない)。それに対して石ころは昔からその状態を維持している。そしてその石の中には何億年も前に生きていた微生物の化石が真空パックされていることがある。
笹木さんはそう言って、オーストラリアに地質調査に赴いた時の写真をスライドにあげた。広大な荒野のほんの一部分に34億年前の地層が表出している。それを削り取って研究室に持っていき、専用の機器で分析する。スライドに写るその機器は、教室くらいの大きさの研究室の半分を占めていた。一日動かしていると50万円くらいのコストがかかるとのこと。
”石ころ”というタイムカプセルを観察すると、中にはミリメートルよりさらに小さい単位、数マイクロメートルの微生物がいるという。これが初期生命とのことだった。

地球の46億年の歴史を学ぶ。

地球は46億年前にできたとされている。そのときはまだ、マグマの塊のような混沌とした状態だった。それから重いものは中心に向かって落ち、軽いものは表面に浮いてきて、42億年前に海ができた。生命がいつから発生したかは定かではないが、現状最古の生物の化石として、39億年前のものがあるという。むろん小さな微生物だ。

そこから段階を踏んでどんどん進化していったかと思いきや、そうはいかない。なんと5億年前くらいまでは微生物しかいない状態が続いていたようだ。その後、その微生物たちが結集して大きくなり、環境に合わせて様々な機関が形成され、機能を持つようになり、そして私たちに至る。
地球の歴史を1メートルで表すと、そのほとんどが微生物時代。残りの20センチで急激な進化を遂げてきた。地球規模で考えたら人間の時代なんてほんの数センチだろう。

生命進化の過程

海にいたものが陸に上がり、足が生え、木に登ったり、羽を生やして空を翔んだり、生物は長い時間をかけて変化してきた。それによって様々な活動ができるようになった。ただ、変化は必ずしもいい方向だけではない。後世の私たちから見れば、文字通り良い方向にだけ“進化”してきたように見えるが、その陰には数多くの失敗事例、子孫を遺せなかった個体があった。長大な年月のトライアンドエラーを繰り返した末に形成されたのが私たちなのだ。加えて、私たちは競争の中を生き残ってきたエリートだということだ。
そんなことを考えると、ちょっとの失敗などどうでもよくなる、などといった自己肯定感を少し上げてくれるような場面もあった。

また、魚類であるサメと哺乳類であるイルカは、全く違う進化の過程を歩んできたにもかかわらず似たような外観をしている。これも進化の過程で収斂されていった結果だという。

無駄な部分がそぎ落とされて、本質となるものだけが残る。生物の造形や機能はそうやって洗練されてできてきて、今もまだその途中だ。


最後に交流会。笹木さんに質問してみたり、おすすめの本を紹介し合ったりした。

イベントを通して

終始、スケールが大きな話だった。冒頭にも書いたが、ここでの“最近”とは数年とかいう話ではない。数万年前も最近だし、何なら1億年前も最近かもしれない。人間が地球にあらわれ、活動しだしたのなんて本当にごく“最近”だ。

私は地形図を眺めるのが好きだ。地の底から湧き上がる力によって隆起した大地や山は、雨や水の流れによって削られていく。地球上の様々な作用によって、長い年月を経て形成された折り重なる山々。地形図に等高線で表された様子を見ると、わくわくしてくる。

不変なものなど無い。生き物だって変化していくし、大陸だって移動する。そんな風に色々なものが移り変わっていく様を、敏感に感じ取る「目」を養っていければと思った。

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