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映画「花束~」を観て個人的に思い浮かんだ曲たち

先日、といっても3月上旬くらいだが「花束みたいな恋をした」を観てきた。物凄く刺さって感動したという訳ではないがそれなりに楽しく見るとこができた。

というのも、劇中ではメインからサブカルチャーまで膨大な固有名詞が登場する。私は麦くん、絹ちゃんと大体同じくらいの世代(厳密に言えば3つくらい上)なのだが、SMAP解散や渋谷パルコ閉店といった時事ネタがマイルストーンのように、このとき自分はこんなことしてたな、などと思い返していた。

また私は、彼らが好んでいたものたちをそこまで知っている訳ではない。作品にある程度触れたことがあるのは、きのこ帝国、羊文学、崎山蒼志、堀江敏幸くらいだった。ただ私自身、世間のトレンドは意識しつつも、それとは別に好んでいる音楽、本、映画などがあって、加えて天邪鬼気質があることも自覚している。

なので彼らが、好きな映画の話で盛り上がったり、「クロノスタシスって知ってる?」といった、わかる人同士だからこそ成立する会話をしていることはうらやましさを感じた。また、SEKAI NO WOWARIで盛り上がるカラオケルームのなか、で心もとなく振る舞うところや、自称映画好きに苦笑する姿などには、ついついうなずいてしまった。

ところで映画を観ていたり、旅先や日常生活のふとした瞬間にある曲の歌詞が思い出されたり、脳内再生されたりということはよくある。今回「花束~」を観ていたときも、劇中で取り上げられた曲とは別に、私の頭のなかで流れていた曲だったり、浮かんだ歌詞の一節だったりがあったので、独断と偏見を交えてあげていく。

吉澤嘉代子 残ってる

絹ちゃんが麦くん宅で一夜を過ごして朝方に帰宅する。その余韻を消したくない一心で、家族の声に耳を貸さず自分の部屋に入る。そんなシーンがこの歌の“いかないで いかないで”と歌うところと重なった。

きのこ帝国 金木犀の夜

劇中で取り上げられていた「クロノスタシス」は、あれはあれですごくいいシーンだったけれど、映画を観終えたあとに思い浮かんだのはこの曲だった。音楽、映画、本、ゲームなど、ふたりで共有していたものがたんさんあって、日常的に触れているものだからこそ、ちょっとしたことがトリガーになってあの頃のことを思い出してしまう機会も多そうな気がする。

ACIDMAN シンプルストーリー


彼らにこのバンドのことを話しても微妙な反応をされそう。「昔聴いてました!」とか、「“創”は知聴いたことあります!」といった感じ。

夕食の肉じゃががあたたかな家庭の象徴だとしたら、朝食でパンを焼いてバターを塗る光景は、若くて、全てが満ち足りている訳ではないけれど、そこそこに豊かな暮らしがイメージされる。

ACIDMANの歌詞は抽象的な表現が多くて、全体をきちんと読み取ることは難しい。けれど曲冒頭の具体的な描写が、暖色系の明かりの下で笑いあっていた姿から、“競争の日々”に巻き込まれてだんだんと色を失っていく様子までと重なった。

thee michelle gun elephant 世界の終わり

これも名前くらいは知ってる…といった感じかな。もしかしたら“伝説の夜”(t.A.T.u.Mステドタキャン事件)はネタとして知ってるのかもしれない。

まあそれはともかく、ちょっとずつ感じていた違和感がだんだんと大きくなり、やがて崩れる。取り返しのつかないところまできてしまったと気が付いたとき、終わりがそこで待っているとわかったとき、きっと自嘲とも苦笑ともつかないような笑みを浮かべることしかできないんじゃないか。明け方のベランダでたたずむ二人を見たとき(歌詞は赤みのかかった月がのぼるときだけど)そんな気がした。

B'z LOVE PHANTOM

絹パパの“ワンオク”発言に対して、「聴けます」という絶妙な受け答えをした麦くんだけど、これも同様に、いやそれ以上に「あ~…」って感じになりそう。まあ別に彼らがどう思おうがどうでもいい。

自分と同じものが好き=自分と全く同じ考えを持っている、という幻想を抱き万能の幻を作ってしまった。結果二人の関係は壊れた。
二人は別れた後、互いに新たな恋人をつくっているが、そんなことはもうしないだろう。イヤホンのこととか、映画のうんちくとかを、くどくど相手に話したところで100%理解してくれることはきっと期待していないし、相手も「また言ってるよ」というくらいで受け止めているに違いない。

という訳で映画には出てこないけど、個人的に「花束〜」を観ていて思い浮かんだ曲たちを独断と偏見で列挙してみた。こじつけ感もあるが、部分的に都合よく切り取って解釈することを許されるのが、ポップスのいいところだと思っている。

ところで映画のキーになっていた曲は主に、2010年代後半から現在にかけて流行っているシティポップな曲だった。もし彼らが出会ったのが5年前、4つ打ちのバンドが全盛の時代だったらどうなっていただろう。当時、だんだんと世間に浸透しつつあったフェスにふたりで行って、なんていう全然違う過ごし方をしていたかも、なんてことを考えたりした。

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