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【前編】そうだ、寝台列車、貸切ろう。

今年(2023年)8月、友人たちと「そうだ、京都、行こう」のノリで寝台列車を貸切った。
仲間を飲み明かし、写真を撮りまくり、笑いあった約24時間の中には実に多くのドラマやアクシデントがあった。

これは主催として、そして1人の鉄道ファンとして描く24時間とそれまでの物語である。

※この記事は前編・中編・後編の三つに分けて投稿する予定です


『寝台列車を貸切るには…?』

「寝台列車をひとりじめにして寝たい!」

深夜2時、自宅の寝室で夜中に咄嗟に思いついた。
見るからに現実性のない妄想である。しかし目が冴えていたこともあり私は2つのプランを考案した。以下の通りである。

プランA  自分専用の寝台列車を走らせる場合

2023年現在、日本国内において運行されている定期寝台列車は東京から高松・出雲市を結ぶ「サンライズ瀬戸・出雲」のみである。

他にもカシオペア号の客車を用いた臨時列車やクルーズトレインと呼ばれる豪華客車列車が運行されている。

【2023年】寝台列車とは?現在運行する全国の寝台列車も解説! (msn.com)

【2023年】寝台列車とは?現在運行する全国の寝台列車も解説! 2023年9月30日閲覧

しかしいずれの列車も個人で貸切ることは当然できない。もし出来たとしても運行するには恐らく数百万~数千万円はかかるだろう。ただの大学生には到底できない業である。


以上のことから現時点では不可能だと分かった。
海外で寝台列車を貸切った話は聞いたことがあるが、英語もままならない私にとっては夢のまた夢だなと感じた。

プランB 静態保存されている寝台列車を貸切る場合

では、静態保存の寝台列車ならどうなのか。
ブルートレインと呼ばれるかつて用いられた寝台客車を用いた列車ホテルはいくつか存在する。

ブルートレインについては以下の記事を参照してほしい。

ブルートレイン が消えていった理由 - 草の実堂 (kusanomido.com)

ブルートレイン が消えていった理由 2023年10月1日閲覧

岩手県下閉伊郡にあるブルートレイン日本海の場合、A寝台は1両につき21000円、B寝台の場合だとなんと16000円で貸切ることが出来る。

つまり施設内のブルートレインを全て貸切ったとしても約6万円である。

岩手県岩泉町/ふれあいらんど岩泉/ブルートレイン日本海 (fureailand-iwaizumi.jp)

ふれあいらんど岩泉のホームページ 2023年9月29日閲覧

先ほどの金額と比べると一気に現実味を帯びてきた。
しかも手が出せる金額である、妄想がどんどん膨らんでいく。

『さて、どこでやろう?』

妄想から始まった寝台列車貸切計画、プランBを選んだはいいものの果たしてどこで開催しようか…

宿泊できるブルートレインがある施設は以下の通りである。

①北斗星スクエア【北海道】※貸切についての記載なし
②ブルートレイン日本海【岩手県】
③小坂鉄道レールパーク【秋田県】※現在営業休止中
④オハネフの宿 なは・瀬戸【香川県】
⑤ブルートレインたらぎ【熊本県】※貸切についての記載なし

各ホテルの特徴をはっきりと伝えている記事を見つけたので詳しくはそちらを参照してほしい。

今の時点でブルートレインを貸切ることが出来る施設は
②ブルートレイン日本海
④オハネフの宿 なは・瀬戸
の二か所である。 そんな中で私が選んだのは

④「オハネフの宿 なは・瀬戸」 

である。その訳は次の項目で説明しようと思う。

『オハネフの宿 なは・瀬戸の決め手』

単純に近かったから

単純すぎる理由だがこれが一番の理由である。

「ブルートレイン日本海」は岩手県、関西出身の私にとって飛行機や新幹線とレンタカーの二刀流で行っても半日がかりの大移動となる。
また友人の多くも関西人、下手をすれば宿泊よりも移動のほうが長くなるかもしれない…

対して「オハネフの宿 なは・瀬戸」は香川県、関西からは車で約3時間弱で行けるそのアクセスに私は強く惹かれた。

開業までのドラマが壮大すぎた!


オハネフの宿管理人 岸井正樹様(写真中)

実はこのオハネフの宿、開業する前までは別の場所にあったのだ。

この車両は元々は鹿児島県阿久根市でライダーハウスとして営業していた。
しかし経営難によって廃業、車両は放置状態にあった。

そんな中、立ち上がったのはうどん店店主の岸井正樹さん
彼は幾度のクラウドファンディングにおいて資金調達に成功し、2021年に阿久根から無事香川県に移送することが出来た。

その後宿泊できるように改装を行い、2023年4月にオープンしたのがこの「オハネフの宿 なは・瀬戸」である。

しかし、待ち受けていたのは厳しい現実だった。
開業から5日間の宿泊客はわずか四人、経営は決して良いとは言えなかった。

「貸切営業ができるかどうかは問い合わせてみないと分からない、ただこの貸切で少しでもこの宿の魅力を伝えたい!」

深夜の思い付きから目標となった瞬間である。
大げさかもしれないが、いいじゃないか。

『友人たちの反応は…』

ここまで固まったところで早速友人達に提案してみた。
もちろんただの友人ではない、閉館後の京都鉄道博物館を丸ごと貸切った時に一緒に企画を行った戦友でもある。
※この話は後々記事にしようかと...

その結果は
・友人の多くがブルトレ引退後に存在を知り現役時を知らない
・懐古趣味がきっかけにつながったこと
・思考回路が筆者とほぼ同じであること

となどあってか反応はかなり良かった。

そして、さっそく下見がてら現地訪問をすることになるのであった。。

『訪問、開催への第一歩』

はじめてのブルートレイン


車内は懐かしい空気に包まれていた ※副主宰撮影

5月某日 関西から車で3時間走らせてオハネフの宿に到着した。
メンバーは私と副主催の二名、免許がない私に代わって運転をしてくださった彼には本当に感謝しかない。

料金はB寝台が一人5000円、デュエットは1部屋につき12000円である。我々の本拠地はデュエットとなった。

チェックインを早々に済ませ車内を見学することに…
【今回はデュエット、B寝台は中編にて紹介します】

デュエットに残る電子キー※故障している 副主催撮影
懐かしいパネル、ラジオは現在流れない 副主催撮影
車内に夢中の副主催 実は彼も初ブルトレだそうで
DUETのロゴも健在!

まさかの幕回し⁉

初めてのブルートレインに興奮が収まらない二人に対し

「せっかくだし幕も回そうか?」 と岸井さん

厚意に甘えていろいろな種別を見せていただくことに…
2匹のオタクだけの特別な撮影会、至高の1時間となった

主催イチオシの日本海幕
副主催イチオシの北陸幕
出雲・瀬戸のコラボもここだけの特権!
間近まで寄って撮影 戻りバチの存在は後ほど知ることに…
大満足の撮影会であった

夜を明かしてみて… 

副主催撮影

撮影会を終え、打ち上げがてら晩酌タイムへ
ブルトレでやる晩酌、最高に決まっている。

晩酌の勢いで後半戦へ…

※副主催撮影

両者酔いしれたまま爆睡、あっという間に朝を迎えてしまった。

こうして二人で出した結論は

『今年の夏にここで貸切をやる』

即答だった、そして私の手にはいつかに作った企画書があった。
さっそく貸切をやりたい旨を岸井さんへ、結果は快諾だった。

こうして決まったオハネフ貸切イベント計画
しかし、開催まではあと二ヶ月

この二ヶ月、後にこの二人は開催に向けて追われることになるのだった…

続く…

【開催に向けて奮闘するお話は中編でお話しします】

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