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【毎日短編台本-4月7日】 一冬の恋 (1人劇)


基本情報

タイトル-一冬の恋
作-臼井智希
ジャンル-モノローグ
目安時間-3分
登場人物 千冬


本編

千冬がいる。コートを着ている。

千冬「人を好きになるのは冬。いつも、12月ごろには人を好きになるんです、毎年。毎年12月に人を好きになって、1月には付き合って、4月までに別れます。もう恋人なんていらないって思って夏を迎えて、好きな人ができたらまた恋をするのも悪くないかななんて感じながら秋を過ごして。冬になると人を好きになる。恋人と過ごしたクリスマスは一度もなくて、恋人と行った海もなくて。でもバレンタインは毎年違う人に本命を渡しています。中学からずっとそれを知ってる友達は、冬は寒いから人肌が恋しくなるのかもね、なんて言ってました。でも私、ふと、違うことを思いついてしまったんです。4月。新年度。環境、変わりますよね。新しい出会いがあって、いままでの環境が終わる。私、このことに感傷的なんじゃないかって。つまり、別れと終わりが近いから惹かれるんじゃないかって、思うんです。この人ともう会えないかもしれない。この場、この関係はもう終わるんだって思った時、それに惹かれるんじゃないかって。別れに、惹かれる。だとしたら4月までに別れるのもわかります。だって私は、別れなきゃいけない。別れがあることに魅力を感じているのなら、関係を続けるわけにはいかない。そうして別れれば、私とその人の関係はずっと、別れの中にあります。だから、その人のことを愛していられます。惹かれ続けられます。別れたことを愛しているから。別れがあることを愛していたから。あぁ、そうだったら。とても醜いなと思います。」

終幕


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