【毎日短編台本-3月14日】 さかしまのからす (3人劇)

基本情報

タイトル-さかしまのからす
作-臼井智希
ジャンル-不条理
目安時間-5分
登場人物
男
カラス
娘

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本編

公園のベンチに座る男。携帯で電話している。

男　ごめんごめん。ちょ、飯！？飯ね、わかったわかった。なるべくはやく持ってくから。ね、ちょ待っててって。うん。うん。

電話を切る。足元にカラスがくる。

男　お前はいいよなぁー！！！金があって。仕事があって。家があってさぁ！！！いいよなぁー！！！くっそ羨ましいわ！！！......おれ、盗むことはできるけど、なんも与えられない。なんも奪えない。なんも。え、いいじゃんって？違う違う。盗むは盗賊、奪えば貴族。俺だって、盗みたくないわけ？奪いたいのよ。でもさ、奪えないのよ。奪おうとしても撃退されるが関の山。盗むことしかできんのよ。

カラス　いやこっちも大変よ？与えられる立場だから、所詮。ひとから与えられる生活、与えられる人生、与えられる安心。全然良くないのよね。奪うことも盗むこともできないっていう、惨めよぉー？どう、そういう人生、興味ある？

男　そうきくと嫌になるなぁ。飛べるだけうちらの方がマシか？

カラス　いやそうでしょ。マジ、飛べるの羨ましい。マジ。俺にはないのはそういう自由よ。与えられる場所から動いたが最後、死ぬしかないんだよ。どう思う？

男　かわいそー。ってことは俺のほうがいいか。

カラス　そうそう。

カラス、歩いてハケ。
男、ハケ。
会社。カラスが無人のオフィスに入ってくる。
カラス、PCのキーボードでタイピング。

カラス　あーだる。

木の上。男が登ってくる。娘がいる。

娘　あ、お帰りなさい！
男　おお、ただいま
娘　ごはん、ごはんは？
男　おお、持ってきたぞ、ほら。

男、吐き出す。
終幕。

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