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【毎日短編台本-2月17日】 あの頃の青春にラブレターを (1人劇)


基本情報

タイトル-あの頃の青春にラブレターを
作-臼井智希
ジャンル-1人劇、モノローグ
目安時間-5分
登場人物
悠-性別不問、年齢は20〜25歳ほど


本編

「青春らしい青春とは無縁の青春でした」

悠が出てくる。舞台上には机があり、便箋とペン、封筒が置かれている。悠は机に向かい、手紙を書きながらその内容を声に出す。

「青春らしい青春とは無縁の青春でした。青春青春うるさい手紙だけど、出来れば最後まで読んでください。そもそも青春ってなんでしょうか?あおい、春。春って、桜とか、なんか、ピンクとかのイメージじゃないですか。なにが青いんでしょう。青いのって夏じゃありません?青空とか、海とか、まあ空も海も一年中青いんですけど。でも青っぽいのって夏な気がするんですよね。春のなにがどうなるとアオハルなんでしょう。どうでも良いですか?私もそう思います。でも、青春って、中学生とか高校生くらいじゃないですか。大人が青春しても良いと思うんですけど、あんま青春に大人びたイメージってないですよね。
思い出って、色が霞むらしいんです。写真が色褪せるように。記憶の中の色って全体的にぼんやりするとか、褪せるとか、セピアっぽくなるとか。もし、中高生だけの春が青春なら、まだ色褪せてない空の青が青春なのかなって思います。鮮烈な、友達とだけの空の青。とりあえず証拠として、この鮮やかな青空を入れておきます。」

悠、青空の写真をポケットなどから一枚取り出すとしばらく見て封筒に入れる。

「この色が青春の青、ってことにしておいてください。きっと今のあなたには、空を見る暇なんてないでしょうから、だから残しておきます。この青が似合う中高生活を送ってはいませんでしたね。あなたは今でも中高をそう過ごしたことを後悔してはいません。今でもあの時の延長線上で生きていて、そして、今も昔も忙しかったけど楽しかったから。だから、自分の青春がらしくなかったことは良いんです。」

徐々に立ち上がり、手紙と机から離れ好き放題話し始める。

「でも、憧れがないわけじゃあないんですよね。あなたがそうしたことを後悔は全くしなくても、そうだったらどうだったかって、想像することもあるし、想像だから理想化されていて。そんな、無いキラキラの青を求める気持ち。きっと今にもそれはいろんなところに反映されているなって、自覚します。記憶は褪せると書いたけど、想像は褪せない。毎日毎日、生まれて生まれて生まれて。消えてほしく無いからなにかで残したくなることもあって。ね。嫌なもんです。
ただ、面白いんですよ。それだけ、無かったものを想像して、焦がれてなお、そうだったらとは思ってもそうあって欲しいとは思わない。私は、あなたがあなたなりに送ってきた、青春らしくない青春が好きなんだと思います。だから、そのまま生きてください。そのまま思うまま生きてください。どうせ小難しいこと考えるより楽しそうな方に生きてるんです。答え合わせは死んでからで結構。
どこかの時間時点でイフの私が生まれてたら、天国で会いましょうね。で、楽しい一生分の青春の話しましょ。
愛していますよ、あなたのわたし、わたしのあなた。」

悠、机に戻りペンを置く。そしてもう一度座り、ペンを取る

「追伸、行動力と図太さは十分、勇気と根性はもう少しあるといいですね。もう少し面白くなるかもしれません」

悠、手紙を封筒に入れ、青空の写真を取り出す。少し見てもう一度封筒に写真を戻して封筒を閉じる。
終幕。


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