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【毎日短編台本-4月11日】 妬み、怨み、羨み (1人劇)


基本情報

タイトル-妬み、怨み、羨み
作-臼井智希
ジャンル-現代劇、モノローグ
目安時間-5分
登場人物 私


本編

舞台の上には舞台がある。その舞台の上にもさらに舞台がある。ピラミッドのように、大きな舞台の上に一回り小さい舞台がある構造が続いていて、最上段には人1人立つのがやっと広さの舞台がある。各段には、ギチギチにマネキンや人形、ひとがたが立てられている。
人はその舞台の隅っこに立っている。以下のセリフを言いながら、周りの人型を倒し、落とし、徐々に最上段に向かって進んでいく。

人「秘密って、だいたい誰にでも、多かれ少なかれあるものだと思うんですよね。あ、無い人いたらごめんなさい。ちょっとズルいことした。犯罪とまでは全然いかないけど、周りからヤな目で見られそうなこととか。知られたら自分のキャラが崩れそうなこととか。ことじゃないけど、想いとか。あ、想いって原則見えないからか、秘密にしたいがちじゃないですか?なに想ってるか知られるのって、それが悪意ならもちろんのこと、好意であっても、嫌じゃないですか?秘密にしておきたくないですか。自分だけのものにしておきたくないですか。秘密って要するに独占ってことですよね。自分から生まれた感情だから、独占しておきたいんです、きっと。
でも、秘密って不思議じゃないですか?
なんか、知って欲しいとき、ありません?特に感情の秘密って、知って欲しい時、ありません?
ほら、好きバレとか、言うじゃないですか。バレちゃったほうが楽かなって思うこととか、秘密にしてるけど知って欲しい、気づいて欲しい、そんな時、ありますよね。きっと。
私、舞台役者なんです。いっつも端役、脇役で、ついてる時でも主人公の脇の脇、ぐらい。」

人、積み重なった舞台ピラミッドの最上段にいる人型を落としてそこに登る。そこに、単サスの光がさす。

人「いまついた光、私を照らしてる光。サスペンションライトっていうライトの光です。今、いっこだけがポンとついてて、単独なので単独のサスペンションライト、略して単サスなんて言われます。この、単サスを私が舞台の上でこんなふうに浴びることはありません。見てもらえればわかると思うんですけど、この光が当たる範囲ってあんまり広くないんですよね。だから、この光に入れるのはだいたい1人だけ。この光は主役の光。これを浴びたければ今浴びてる人を追い出すしかないんです。誰かが入る時はつまり、誰かが追い出される時です。私は、今光を浴びてる人を追い出すほどの力は、魅力はなくて、光の照り返しで見えるくらいの位置が限界で。だからよく、私なんか舞台にいらないんじゃないかって思うんです。けどその度に、ほんとに少ない、でもありがたい、何人かの仲間やファンが、必要だよ、いてよって。だから逃げることもできなくて。でも、夢見たスポットライトの中にはいなくて。スポットライトの中を、いいなぁって、いいよねって、妬んで、怨んで、羨むだけ。もう役者やって、10年とかになります。でもまだ、なにもできてない。何も残してない。私だけがそうなんじゃないかって、私だけが空回って、なにもしてないんじゃないかって。ここじゃない、舞台じゃないところが、もっと、私がいるべき場所なんじゃないかって。あ、
だから、光は嫌いです。」

溶暗。終幕。


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