雨音①(詩と小説)

あたしに殺されたという おんなが
いつしか まとわりつくようになってきて
もう どれくらい経っただろう

だんだん そのおんなの いうことが
気になって 必要になって
いまでは導かれているなんてことは
まだ認めたくない……
し、そんなことはないでしょう

ある夜
おんなは あたしの上に乗ってきて
ぽろぽろ涙を流してた
あたしの首を やさしく締めてた
いつもは強気なおんななのに

涙が あたしの顔や首すじに
落ちてきたから
あたしは それを何粒も飲み込んだ
眠ってしまった

夢の中で
雨がしとしと降っているのに
おおきな おおきな 満月が
しずかに光ってた

あたしは何故か
雨音が音楽に聴こえてしまい
書けやしないのに
どうにか楽譜にしなくちゃと焦ってた

満月は
半覚醒で
うっすら目をあけて見た
豆電球のせいかもしれない


 やっと こどもが産まれて しあわせだったとき
あなたはしあわせなわたしたちを すこし遠くから
どこか醒めた目でみていたのが 今ならわかる

 それから あなたはときどき あらわれるようになった。
たいてい わたしがひとりでいるとき。
 
 こどもを抱いた夫がしあわせそうに笑う。母や父もこどもを目で追っている。その場にいる全員が笑顔で どう見てもしあわせな風景。
わたしがキッチンに立ったとき。

ーーふ~~ん。あんた、こういう生活がほしかったんだ?へぇ~~。ーー
「そうよ。何がいけないの?嫌な言い方するわね。あっち行ってよ。」
ーーアハハ。ごめんね。でもあたし、あんたから離れるわけにはいかないんだよね、
だってあたし、あんたに殺されたんだから。アハハ。
あんたはまったく気付いていないだろうけどさ。ーー

 あなたはそういって、お腹を抱えて笑い出した。そして消えた。
気持ち悪かったけど、家族のもとへ戻ったら、平気になった。
わたしは誰も殺してなどいない。……もうはや育児ノイローゼだろうか。

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